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研究の最前線

オートファジーとは|16時間断食で起きるのか論文で確認

オートファジーは細胞が自分の中身を分解して使い直す仕組みで、大隅良典さんが2016年にノーベル賞を受けた。動物では寿命との関係が報告されているが、「16時間断食で起きる」は人で直接確かめられていない。人の試験で分かった範囲を整理した。

結論

オートファジーは、細胞が自分の中のたんぱく質や小さな器官を膜の袋で包んで分解し、材料として使い直す仕組みである。酵母でこの仕組みに要る遺伝子を見つけた大隅良典さん(受賞当時は東京工業大学の栄誉教授。同大学は2024年10月に東京医科歯科大学と統合し東京科学大学になり、今は同大学の特任教授)が、2016年にノーベル生理学・医学賞を受けた。動物では、オートファジーを強めたマウスの寿命が長く、神経の細胞で止めたマウスには運動の障害が出ることが報告されている。一方「16時間の断食でオートファジーが起きる」は人で直接確かめられておらず、人でオートファジーの流れを直接測る方法は無かったと、2020年に血液で測る方法を発表した論文自身が書いている。「オートファジー サプリ」で名前が挙がるスペルミジンは、高齢者100人の1年間の試験で記憶の主な評価に差が出なかった。

この記事の基準日: 2026年11月6日。東京工業大学と日本医療研究開発機構(AMED)のノーベル賞の発表、PubMed に載る論文(酵母・線虫・マウスの研究と、人の断食・運動・スペルミジンの試験)の要旨を読んで書いた。論文の要旨は NCBI の公式の窓口で開いて確かめ、全文を開けなかった論文は要旨に書かれた範囲だけを使っている。医師の監修は受けていません。

オートファジーとは何か

オートファジーは、日本語では「自食作用」と訳される。東京工業大学はこれを「細胞内における自己の構成成分の分解機能」「細胞内におけるリサイクリング機能」と説明している。細胞は、栄養が足りない時などに自分の中のたんぱく質を分解し、できたアミノ酸を新しいたんぱく質の材料やエネルギーに回す。日本医療研究開発機構(AMED)は、大隅さんの業績を「飢餓状態に置かれた細胞が飢餓を乗り切るために自らの細胞の一部を分解し、再利用を図る」現象を確認したことと説明している。

動きの順番はこうである。まず細胞の中に膜が現れ、分解する物(古くなったたんぱく質や小器官)を包み込んで、二重の膜の袋(オートファゴソーム)になる。この袋がリソソーム(分解酵素を持つ細胞の中の小さな袋)と合わさり、中身が分解される。2004年のマウスの研究は、LC3(オートファゴソームの膜に付くたんぱく質。酵母の Atg8 にあたる)に光る目印を付け、オートファゴソームを体の臓器ごとに見られるようにした。

「オートファジー」という言葉はクリスチャン・ド・デューブが作ったと、研究誌『Autophagy』に載った本人への聞き取りの記事に書かれている。また、膜の袋で包む型のほかに、決まったたんぱく質だけをリソソームの膜を通して運び込む型(シャペロン介在性オートファジー)もある。2018年の総説は、この型がリソソームによる分解は選んで行われることを示した最初の仕組みで、今では他の型にも選んで分解する働きがあると認められていると書いている。

オートファジーは、細胞に入り込んだ細菌を片付ける働きも持つ。2004年の研究では、細胞の中に逃げ込んだA群レンサ球菌(溶連菌)をオートファゴソームに似た袋が包み、リソソームと合わさって殺していた。オートファジーに要る遺伝子 Atg5 を持たない細胞では、菌が生き延びて増え、細胞の外へ出ていった。

大隅良典さんは何を見つけてノーベル賞を受けたのか

大隅良典さんの受賞は2016年10月3日に発表された。東京工業大学は受賞の理由を「オートファジーの仕組みの解明」、AMED は「オートファジー現象の発見と解明」と書いている。東京工業大学によると、大隅さんは酵母の研究で、世界で初めてオートファジーの分子レベルの仕組みを明らかにした。東京科学大学の研究情報データベース(2026年8月14日更新)では、今の所属は同大学の総合研究院 細胞制御工学研究センター、職名は特任教授となっている。

土台になった論文は2本ある。1992年の論文では、たんぱく質の分解酵素が働かない酵母を栄養の足りない状態に置くと、液胞(酵母の細胞の中で分解を受け持つ袋)の中に、一重の膜に包まれた粒がたまることを示した。電子顕微鏡で見ると粒の中身は細胞質で、この粒は「オートファジック・ボディ」と名付けられた。分解酵素が働かないために、運び込まれた中身が分解されずに残り、見えるようになったのである。

1993年の論文では、この粒をためられない酵母(apg1)を見つけ、さらに75の変異株を集めた。変異株は15のグループに分かれ、少なくとも15の遺伝子がオートファジーに関わることが分かった。論文は「酵母のオートファジーは哺乳類の細胞のものとよく似ている」と書いている。こうして見つかった遺伝子は、今は Atg(オートファジー関連)遺伝子という名前で呼ばれている(先に書いた Atg8 もその一つ)。

2004年には、大隅さんも名を連ねるグループが、先に書いた光るLC3を持つマウスを作った。絶食させると多くの臓器でオートファジーが増えたが、増え方は臓器によって違い、絶食させなくてもオートファジーが見える臓器もあった。オートファジーの調節は臓器ごとに違い、飢えへの対応だけではないことが分かった。東京工業大学は、これらの成果で動物の細胞の研究が大きく進み、神経変性疾患、がん、加齢に伴う病気の医療への応用が期待されていると書いている。

オートファジーと老化の関係で分かっていること

老化との関係は、主に線虫・ハエ・マウスで調べられてきた。オートファジーを弱めると老化に伴う変化が早く出て、強めると寿命が長くなる、という方向の結果が報告されている。代表的なものを表にまとめる。

年生き物何をしたか何が起きたか
2003線虫寿命が長くなる変異(インスリンに似た信号が弱い)を持つ線虫で、オートファジーの遺伝子 bec-1 を働かなくした寿命が長くなる効果に bec-1 が欠かせなかった
2006マウス神経の細胞だけで Atg5 を働かなくした運動の障害が徐々に進み、神経の細胞に異常なたんぱく質の塊がたまった
2013マウス全身で Atg5 を多めに作らせ、オートファジーを強めた寿命の中央値が17.2%長く、やせ型で、インスリン感受性(インスリンへの反応のよさ)と運動の機能がよかった
2018マウスオートファジーを抑える結びつき(beclin 1 と BCL2)を弱める変異を入れた雄も雌も寿命が長く、年齢に伴う腎臓と心臓の変化、自然に出るがんが少なかった
2019線虫・ハエ・マウスオートファジーのブレーキ役の Rubicon を調べ、減らしたRubicon は年齢とともに増えていた。線虫とハエでは減らすと寿命が長くなり、マウスでは腎臓の線維化と脳のαシヌクレインの蓄積が少なかった

出典: Meléndez ら(Science・2003)、Hara ら(Nature・2006)、Pyo ら(Nature Communications・2013)、Fernández ら(Nature・2018)、Nakamura ら(Nature Communications・2019)の要旨(2026年11月5〜6日に確認)。いずれも動物の結果で、人で同じとは限らない。

2019年の Rubicon の研究は、年齢とともにブレーキ役が増えてオートファジーが落ちることを「老化の特徴の一つ」と位置づけている。ただし、これらは遺伝子を操作した動物の結果であり、人が食事や習慣で同じ変化を起こせることを示したものではない。

人については、オートファジーが要る仕組みであることを示す観察がある。2021年の報告では、Atg7 の遺伝子の両方に働きを損なう変異を持つ12人(5家族)に、脳・筋肉・内分泌に及ぶ発達の病気が見られた。細胞では袋で包む働きが大きく落ちていたが、少しは残っていた。AMED は、オートファジーの異常がアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、がんの原因や進み方に関わることが分かってきたと書いている。一方で、オートファジーを外から強めることで人の老化に伴う病気が減るかは、確かめられていない。

「16時間断食でオートファジーが起きる」は人で確かめられているのか

結論から言うと、確かめられていない。理由は大きく三つある。

一つ目は、人で測る方法の限界である。オートファジーの量は、袋(オートファゴソーム)の数だけでは分からない。袋が多いのは、作られる量が増えたからかもしれないし、分解が滞ってたまっているからかもしれない。作られてから分解されるまでの流れ(フラックス)を見るには、分解を止める薬を使って比べる必要があり、人の体の中では難しい。2020年に発表された論文は、人の血液に分解を止める薬(クロロキン)を加え、血液の単核球(白血球の一部)の LC3B-II(LC3 が膜に付いた形)を測る方法を作った。この論文自身が、それまで「人でオートファジーの流れを直接測る方法は無かった」と書いている。

二つ目は、マウスと人の時間の違いである。断食でオートファジーが増えるという研究の多くはマウスで行われ、短時間の絶食で脳の神経の細胞のオートファジーが大きく増えたという報告もある。しかし、マウスの絶食についての総説は、マウスは夜に活動して一日の食事の3分の2を夜にとり、人より代謝が速いため、マウスの一晩の絶食は人の一晩の絶食と比べられないと書いている。マウスで起きた変化が、人で同じ時間で起きるとは言えない。2004年のマウスの研究でも、絶食への反応は臓器ごとに違っていた。

三つ目は、人の試験が少なく、16時間そのものを測った試験が見当たらないことである。PubMed で、題名に「断続的断食」「時間制限食」とオートファジーを含む人の研究を探すと13件あり(2026年11月6日)、人で測った研究は次の表の上の3本だった。どれも16時間の絶食でオートファジーの流れを測ったものではない。参考に、もっと長い絶食と、何年も続けたカロリー制限の研究も並べる。

研究対象食べ方・期間測った所結果
Jamshed ら 2019太りぎみの成人11人朝8時〜午後2時に食べる(絶食は約18時間)を4日、朝8時〜夜8時と入れ替えて比べた血液の細胞の遺伝子の量朝食前の LC3A の遺伝子の量が増えた。夕方は mTOR の遺伝子の量も増えた。著者は小さな予備的な結果としている
Bou Malhab ら 2025太りぎみ・肥満の成人51人ラマダンの日の出から日没までの断食を4週間血液の遺伝子の量断食前と比べ LAMP2 が約4.2倍、LC3B が約1.9倍、ATG5 が約1.4倍。断食しない比較群は無い
Chaudhary ら 2022女性50人(平均51歳・肥満)24時間の絶食を週3回、8週間(食べる日は必要量の70%か100%)太ももの筋肉24時間の絶食で p62 が増えたが、オートファジーの目印は上がらなかった。8週の後、必要量の70%を食べた群では、12時間の絶食の後の BECLIN1・p62・LAMP2 の遺伝子の量がかえって減っていた(著者は体重が減ったためとみている)。マウスでは肝臓の目印は上がったが、筋肉は上がらなかった
Vendelbo ら 2014健康な男性8人72時間の絶食筋肉mTOR の働きが約50%落ち、LC3B-II が約30%増えた。ただ p62 も約10%増え、著者は流れの解釈は難しいとした
Yang ら 2016カロリー制限を3〜15年続けた人長年のカロリー制限(観察)筋肉同じ年齢の運動しない人より beclin-1 と LC3 が多かった

出典: Jamshed ら(Nutrients・2019)、Bou Malhab ら(Clinical Nutrition ESPEN・2025)、Chaudhary ら(Nutrition・2022)、Vendelbo ら(PLoS One・2014)、Yang ら(Cell Reports・2016)の要旨(2026年11月5〜6日に確認)。

p62 はオートファジーで分解されるたんぱく質で、オートファジーが進めば減るはずである。72時間の絶食で LC3B-II と p62 がどちらも増えたことは、袋が増えたのか、たまっただけなのかを血液や筋肉の一度の採取では見分けにくいことを示している。2018年の総説は、絶食やカロリー制限で多くの組織・臓器でオートファジーが起きるという証拠は圧倒的だとまとめたが、要旨の中では人と動物を分けて書いていない。

つまり「16時間でオートファジーが始まる」という時間は、人の試験から出た数字ではない。人で分かっているのは、18時間ほどの絶食や1か月の日中の断食で血液の遺伝子の量が変わったこと、24時間の絶食を繰り返しても筋肉の目印は上がらなかったことまでである。

運動・睡眠・食事とオートファジーの研究はどこまで進んでいるか

運動は、人の筋肉で調べた試験がある。2015年の試験では、よく鍛えた運動選手23人を、運動しない群(8人)・低い強さの群(8人)・高い強さの群(7人)に分け、食べた日と絶食の日に、2時間の自転車こぎの前後で太ももの筋肉を採った。オートファジーの開始に関わる ULK1 の信号は運動の後に強まり、p62 が減ったのは高い強さの1時間後だけだった。オートファジーに関わる遺伝子の量も、高い強さの後だけ増えた。著者は、人の筋肉のオートファジーは食事より運動の強さに左右されると結論している。マウスでは2012年に、運動でオートファジーが起きないように遺伝子を変えると、持久力が落ち、運動の時の血糖の扱いが変わり、運動を続けても、高脂肪の食事による血糖の悪化を防ぐ働きが弱かったと報告された。

睡眠は、人での証拠がほとんど無い。マウスの肝臓では、オートファジーが一日のリズムで強弱し、その切り替えに C/EBPβ という因子が関わることが2011年に報告された。ハエでは2024年に、アルツハイマー病に似せたハエで、眠りを奪うと異常なタウたんぱく質の害が強まり、薬で眠りを増やすとオートファジーの流れが変わってタウが片付いたと報告された。人では、閉塞性睡眠時無呼吸の患者64人といびきだけの人24人を比べ、患者の血液の細胞で LC3B や ATG5 が少なかったという報告がある。ただしこれは一時点の比べであり、どちらが原因かは分からない。PubMed で睡眠・体内時計とオートファジーを題名に含む人の研究を探した範囲(26件・2026年11月6日)では、睡眠を長くするとオートファジーが増えることを人で試した研究は見つからなかった。

食事では、栄養が足りているかを感じ取って細胞の成長を進める mTOR(エムトール)という酵素が、オートファジーのブレーキとして働く。72時間の絶食の試験では、筋肉の mTOR の働きが約50%落ち、mTOR が信号を送る先の ULK1 などの信号も弱まった。長年のカロリー制限を続けた人の筋肉では目印が多かった。ただし、これらは「食べない時間が長いと細胞の中の信号が変わる」ことを示すもので、日々の食べ方の違いで人の健康がどう変わるかまでは示していない。

「オートファジー サプリ」のスペルミジンは人で何が分かっているか

「オートファジー サプリ」で名前が挙がるのが、スペルミジン(小麦胚芽などに含まれる、ポリアミンと呼ばれる天然の物質)である。2009年の論文では、スペルミジンが酵母・ハエ・線虫の寿命を長くし、培養した人の免疫の細胞の寿命も長くした。その効果にはオートファジーが欠かせなかった。2016年の論文では、年をとったマウスに飲ませると寿命が長く、心臓の肥大が減った。心臓の細胞で Atg5 を働かなくしたマウスでは、この心臓を守る働きが見られなかった。

人のデータは、食事の調査と小さな試験に限られる。結果をまとめる。

研究種類対象量・期間結果
Kiechl ら 2018食事の調査を20年追った観察45〜84歳の829人食事からとる量(4回の聞き取りで推定)とる量が多い人ほど死亡が少なかった(1標準偏差あたりの危険度0.74)。多い3分の1と少ない3分の1の死亡の差は、年齢が5.7歳若いことに相当した
Eisenberg ら 2016(人の部分)食事の調査の観察記載なし(要旨)食事からとる量とる量が多い人ほど血圧が低く、心臓や血管の病気が少なかった
Schwarz ら 2018無作為・偽薬対照の試験物忘れを自覚する60〜80歳の30人1日1.2mg・3か月血圧などのバイタルサイン、体重、血液の検査値に偽薬との差は無かった。残ったカプセルの数で数えた服用率は85%を超えた
Schwarz ら 2022無作為・偽薬対照の試験物忘れを自覚する60〜90歳の100人(平均69歳)1日0.9mg(小麦胚芽の抽出物)・12か月主な評価(似た物を見分ける記憶の課題)に差は無かった(差 -0.03、P=0.47)。ほかの評価にも差は無く、有害事象は両群で同じくらいだった

出典: Kiechl ら(American Journal of Clinical Nutrition・2018)、Eisenberg ら(Nature Medicine・2016)、Schwarz ら(Aging・2018/JAMA Network Open・2022)の要旨(2026年11月5日に確認)。観察の研究は「関連がある」ことを示し、スペルミジンが原因であることは示さない。Schwarz らの2本の試験では、著者の一部が The Longevity Labs(TLL)という会社に出資などの利害関係を持つ。2018年の試験はカプセル(偽薬も含む)を同社が提供し、2022年の試験は資金がドイツ連邦教育研究省などで、同社は小麦胚芽の抽出物の開発の費用を出したと論文に書かれている。Eisenberg ら(2016)も、論文の利益相反の節に、著者のうち5人が TLL(2016年に設立された、天然の食品の抽出物を開発する会社)の持ち分を持つと書かれている(資金はオーストリア科学基金など多くの研究助成)。Kiechl ら(2018)は全文を開けず、利害関係を確かめていない。

大事なのは、どの人の試験もオートファジーが体の中で増えたことを直接測っていない点である。観察の研究で長生きと関連したのは食事からとる量で、サプリの粒ではない。2022年の試験の著者は、探索的な解析で炎症と言葉の記憶に良い方向の可能性が見られたが、より多い量での確認が要ると書いている。サプリの表示が国の届出に基づくものかどうかは、消費者庁の機能性表示食品の届出情報で、届け出た文のとおりに確かめるのがよい。

オートファジーの解説では、スペルミジンのほかに、ウロリチンA(ザクロ・ベリー類・クルミのエラグ酸などから腸内細菌が作る物質)やレスベラトロール(ブドウの皮などに含まれるポリフェノール)も「オートファジーに関わる成分」として並べられることが多い。ウロリチンAは、傷んだミトコンドリアを分解するマイトファジー(オートファジーの一種)を動物のモデルで促したと報告されているが、人の試験で主に測られたのは筋肉の働きで、結果は項目によって分かれた(ウロリチンAの記事)。レスベラトロールの人の試験で主に測られたのは血糖・血圧・炎症などで、どこまで分かっているかはレスベラトロールの記事にまとめた。

注意

持病がある人、薬を飲んでいる人(特に血糖を下げる薬・インスリンを使っている人)、妊娠中・授乳中の人、成長期の人、食事の悩みを抱えたことがある人は、断食やサプリを始める前に医師に相談してほしい。この記事は研究の紹介であり、診断や治療の代わりにはならない。

オートファジーは増やせば増やすほどよいのか

増やせばよいとは限らないことを示す研究もある。2020年のマウスの研究では、年をとったマウスの脂肪の細胞で Rubicon が減り、オートファジーがかえって強まっていた。脂肪の細胞で Rubicon を無くしたマウスでは、脂肪が痩せ、肝臓に脂肪がたまった。脂肪の細胞の働きを支えるたんぱく質(SRC-1 と TIF2)までオートファジーで分解されすぎたためと著者は考えている。2019年の研究では Rubicon を無くしたマウスの腎臓や脳の変化が少なかったのに対し、脂肪では Rubicon が減ると困るという、臓器で逆向きの結果である。

がんでも、オートファジーは両方向に働く。2019年の総説は、オートファジーを起こすとがんができるのを抑えうる一方、すでにできたがんではオートファジーを止めると育ちを抑えうると書き、分解を止める薬(ヒドロキシクロロキン)をがんの治療に使う試みを紹介している。体全体で「強いほどよい」と言える仕組みではなく、どの臓器で・どの時に・どのくらいかが問題になる。

まだ分かっていないこと

人の体の中のオートファジーの流れを、日常の検査として測る方法はまだ無い。血液の方法は2020年に発表されたばかりで、血液の細胞の値が脳・肝臓・筋肉の値と同じ動きをするかも分かっていない。そのため、「何時間の断食で人のオートファジーがどれだけ増えるか」という数字は、まだどこにも無い。

動物でオートファジーを強めて寿命が長くなったのは、遺伝子を操作した場合である。食事や運動やサプリで人のオートファジーを強めたとき、老化に伴う病気が減るか、寿命が変わるかを確かめた試験は、当記事が調べた範囲では無かった。スペルミジンの人の試験は最大で100人・1年で、主な評価に差は出ていない。

睡眠とオートファジーの関係は、マウスとハエで手がかりがあるだけで、人で睡眠を変えて測った試験は見つからなかった。運動は人の筋肉で強さとの関係が示されたが、鍛えた選手(運動した群は15人)の一度の運動であり、運動の習慣が年齢とともにオートファジーをどう変えるかは分かっていない。脂肪の細胞やがんのように、オートファジーが強すぎて困る場面がどこまであるかも、人ではほとんど分かっていない。

出典

よくある質問

オートファジーとは何ですか?

細胞が自分の中のたんぱく質や小さな器官を膜の袋で包み、リソソームという分解の袋で分解して、材料として使い直す仕組みです。日本語では自食作用と呼ばれます。酵母でこの仕組みに要る遺伝子を見つけた大隅良典さんが、2016年にノーベル生理学・医学賞を受けました。

16時間断食でオートファジーは起きますか?

人では確かめられていません。人の体の中でオートファジーの流れを直接測る方法がまだ限られ、16時間の絶食で測った試験は見つかりませんでした。約18時間の絶食を4日続けた11人の試験では血液の遺伝子の量が変わりましたが、24時間の絶食を週3回、8週間続けた女性50人の試験では筋肉の目印は上がりませんでした。マウスは人より代謝が速く、同じ時間で比べられない点にも注意が要ります。

オートファジーを強めると老化は遅くなりますか?

線虫やマウスでは、遺伝子の操作でオートファジーを強めると寿命が長くなったという報告があります。ただし、人で食事や運動やサプリによってオートファジーを強め、老化に伴う病気が減るかを確かめた試験は見つかっていません。年をとったマウスの脂肪の細胞のように、オートファジーが強すぎて困る例も報告されています。

スペルミジンのサプリで人のオートファジーは増えますか?

人の体の中で増えたことを直接測った試験は見つかっていません。物忘れを自覚する高齢者100人に1日0.9mgを12か月飲んでもらった試験では、記憶の主な評価に偽薬との差はありませんでした。食事からとる量が多い人ほど死亡が少なかったという観察の研究はありますが、スペルミジンが原因とは言えません。持病がある人や薬を飲んでいる人は医師に相談してください。

運動でオートファジーは増えますか?

よく鍛えた運動選手23人(運動しない群8人を含む)の試験では、2時間の自転車こぎのうち高い強さの群(7人)だけで、筋肉のオートファジーに関わる遺伝子の量が増え、分解されるたんぱく質のp62が減りました。著者は食事より運動の強さに左右されると結論しています。ただし一度の運動の結果で、運動の習慣が年齢とともにどう影響するかはまだ分かっていません。

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