レスベラトロールの研究|人で分かっていること・いないこと
レスベラトロールはぶどうの皮などに含まれるポリフェノールです。酵母と高カロリーの餌のマウスで注目されましたが、人で寿命の延長を示した試験はありません。人の試験とメタ解析で分かったこと、吸収されにくさ、薬との飲み合わせ、国内の商品の量を一次資料で整理しました。
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結論
レスベラトロールは、ぶどうの皮や赤ワイン、ピーナッツなどに含まれるポリフェノールです。2003年の酵母と2006年の高カロリーの餌のマウスの研究で「長寿の成分」として注目されましたが、普通の餌のマウスでは寿命の延長は見られず、人で寿命の延長を示した試験はありません。人のランダム化比較試験をまとめた分析では、糖尿病の人の血糖の指標や炎症の指標(CRP)が下がったという報告がある一方、健康な人や肥満の人では差が出ない試験も多く、どれも小さく短い試験が中心です。飲んだレスベラトロールは体の中ですぐに形が変わり、元の形のまま血液に残るのはごくわずかで、1日1gで薬を分解する酵素への影響、2.5g以上でお腹の症状が報告されています。EU は合成のトランス型を使う成人のサプリの上限を1日150mgとしており、日本には上限の決まりがありません(2013年時点の学会の解説による)。
この記事の基準日: 2026年11月6日。PubMed に載った原論文とメタ解析の要旨、オレゴン州立大学ライナス・ポーリング研究所の解説、日本薬学会 環境・衛生部会の解説、EU とカナダ保健省の決定、各メーカーの公式ページを開いて確かめ、その中身だけで書きました。医師の監修は受けていません。
レスベラトロールとは何で、どの食べ物にどれだけ入っているのか
レスベラトロールは、スチルベン類(2つのベンゼン環を二重結合でつないだ形の化合物の仲間)に分類されるポリフェノール(植物が作る、フェノールの形を複数持つ化合物の総称)の一種です。オレゴン州立大学ライナス・ポーリング研究所の解説によると、植物がストレスや傷、カビの感染、紫外線を受けたときに作る物質で、形の向きが違うトランス型とシス型があります。植物の中では、ぶどう糖が結びついた形でも存在し、その代表はピセイドと呼ばれます。健康の面で関心が集まったきっかけは、1992年に赤ワインから報告されたことでした。
物質としての発見は日本です。日本生化学会の学会誌『生化学』の総説(奈良女子大学の中田理恵子・井上裕康、2018年)によると、北海道帝国大学の高岡道夫が1940年にバイケイソウの根から取り出し、構造を決めて名付けました。1963年には、生薬の虎杖根(コジョウコン。イタドリの根)からも取り出されています。
食べ物に入っている量は、ぶどうの品種や産地、ワインの作り方で大きく変わります。下の表はオレゴン州立大学の解説に載っている値で、同研究所も「近い値として扱うべき」と注意しています。
| 食べ物・飲み物 | 分量 | レスベラトロールの量(mg) |
|---|---|---|
| 赤ワイン(全体) | グラス1杯(約140mL) | 0.30〜1.07 |
| 赤ワイン(スペイン産) | グラス1杯(約140mL) | 0.29〜1.89 |
| ロゼワイン(スペイン産) | グラス1杯(約140mL) | 0.06〜0.53 |
| 赤ぶどうジュース(スペイン産) | グラス1杯(約140mL) | 0.17〜1.30 |
| 赤ぶどう | 160g | 0.24〜1.25 |
| ピーナッツ(ゆで) | 180g | 0.32〜1.28 |
| ピーナッツ(生) | 146g | 0.01〜0.26 |
| ピーナッツバター | 258g | 0.04〜0.13 |
出典: オレゴン州立大学ライナス・ポーリング研究所「レスベラトロール」日本語版の表1・表2(2026年11月5日に確かめた)。
日本薬学会 環境・衛生部会の解説(徳島文理大学の門田佳人)は、赤ワイン1杯に入っているのは多くて約1mg、ヨーロッパの人が食事から摂る量は1日約2mgとしています。一方、市販のサプリの量は製品によって1日1mg以下から500mg以上まで幅があります。後で見るように、この記事で取り上げた人の試験で使われた量は1日10mgから5gまでで、多くは食事から摂れる量とはけたが違います。
なぜ「長寿の成分」と呼ばれるようになったのか
注目のきっかけは、サーチュインという酵素の仲間です。サーチュインは、NAD+(細胞の中でエネルギーの受け渡しに使われる補酵素)を使って、たんぱく質に付いた印(アセチル基)を外す酵素で、酵母では Sir2、人では SIRT1 などがあります。オレゴン州立大学の解説によると、食べる量を減らすカロリー制限は多くの生き物で寿命を長くすることが知られており、その仕組みにサーチュインが関わると考えられていました。
2003年、Howitz と Sinclair らは科学誌 Nature に、レスベラトロールが酵母の Sir2 を活性化し、カロリー制限に似た働きで、酵母の寿命(1つの細胞が分裂できる回数)を約70%長くしたと報告しました。オレゴン州立大学の解説によると、その後、線虫、ショウジョウバエ、魚でも寿命の延長が報告されています。
2006年には、Baur と Sinclair らが同じく Nature に、高カロリーの餌で飼った中年のマウスにレスベラトロールを与えると生存が改善したと報告しました。インスリン感受性(インスリンへの反応のよさ)が良くなり、IGF-1(成長に関わるホルモン)が下がり、エネルギー代謝に関わる AMPK と PGC-1α の働きが高まったとしています。オレゴン州立大学の解説は、生存が標準の餌のマウスと同じくらいまで改善したと説明しています。
この流れの中で、2008年4月22日、英国の製薬会社 GSK は、サーチュインを活性化する飲み薬を開発していた米国の Sirtris Pharmaceuticals を約7億2,000万ドル(1株22.50ドルの現金)で買収すると発表しました(GSK が米国証券取引委員会に出した届出による)。届出では、Sirtris の開発の中心は2型糖尿病向けの SIRT1 活性化物質と説明されています。
ただし、ここまでの結果は酵母やマウスのものです。動物や細胞で起きたことが、人で同じとは限りません。
その後の研究で何が揺らいだのか
最初に揺らいだのは仕組みです。2005年、Kaeberlein らは学術誌 Journal of Biological Chemistry に、レスベラトロールが Sir2 や SIRT1 の働きを高めて見えたのは、試験管の測定で使う蛍光の目印(Fluor de Lys)を付けた人工の材料を使ったときだけで、目印の無い材料では変わらなかったと報告しました。酵母の体の中では、Sir2 の働きにも寿命にも、検出できる影響はなかったとしています。2010年には Pacholec らが同じ学術誌に、自然の材料(p53 というたんぱく質など)では、レスベラトロールと関連の化合物による SIRT1 の活性化は見られず、化合物が蛍光の目印そのものとくっついていたと報告しました。
これに対して2013年、Hubbard と Sinclair らは Science に、PGC-1α や FOXO3a のような材料に含まれる、水になじみにくい部分があれば SIRT1 は活性化され、それには SIRT1 の230番目のアミノ酸(グルタミン酸)が必要だと報告し、直接の活性化を支持しました。前に挙げた『生化学』の総説(2018年)も、レスベラトロールが SIRT1 を直接活性化するかは議論が続いており、PPAR(脂質の代謝に関わる受容体)や PDE(細胞の中の信号物質 cAMP を分解する酵素)など、SIRT1 以外の標的も関わる可能性があるとしています。
次に揺らいだのは寿命の結果です。2008年に Pearson らが学術誌 Cell Metabolism に出した研究では、標準の餌で12か月齢から与えたマウスで、年齢に伴う衰え(尿にたんぱくが出る、体の動きの協調が落ちる、など)は遅れたものの、寿命の延長は見られませんでした。遺伝的に多様なマウスで、3か所の施設が同じ手順で物質を試した2011年の報告(Miller ら、Journals of Gerontology)でも、餌の300ppmと1,200ppmのレスベラトロールを与えて、オスでもメスでも生存に有意な差は出ませんでした。同じ報告で、別の物質のラパマイシンは、生存期間の中央値をオスで約10%、メスで約18%長くしています。
体に届く量の問題もあります。オレゴン州立大学の解説は、人の SIRT1 を試験管の中で活性化するのに必要な濃度は、口から飲んだ後に人の血液で測られる濃度よりかなり高いとしています。
人については、食事からの量と死亡の関係を見た研究があります。2014年に Semba らが JAMA Internal Medicine に出した研究は、イタリアのキアンティ地方に住む65歳以上の783人を約9年追跡しました。24時間ためた尿の中のレスベラトロールの代謝物(体の中で形が変わった物)の量で4つの群に分けると、死亡した人の割合は量の少ない群から順に34.4%、31.6%、33.5%、37.4%で、差はありませんでした(P=0.67)。炎症の指標、心臓と血管の病気、がんとの関係も見られていません。
まとめると、レスベラトロールで人の寿命が延長したことを示した試験はなく、マウスでも高カロリーの餌という条件を外すと寿命の延長は再現されていません。
人のランダム化比較試験では何を測り、何が変わったのか
ランダム化比較試験は、参加者をくじ引きでレスベラトロールを飲む群と偽薬(見た目が同じで中身の無い物)を飲む群に分け、結果を比べる試験です。人の試験で測られてきたのは、寿命や病気の発症ではなく、血糖、血圧、血中の脂質、炎症の指標、体の代謝などの数値です。結果がはっきり分かれた代表的な試験を並べます。
| 試験(雑誌・年) | 対象 | 量と期間 | 変わったこと | 変わらなかったこと |
|---|---|---|---|---|
| Timmers ら(Cell Metabolism・2011) | 健康な肥満の男性11人。同じ人が順に両方を飲む方式。著者の1人は原料メーカー DSM 社の所属 | 1日150mg・30日 | 安静時と睡眠中の代謝量が下がる。肝臓の脂肪、血糖、中性脂肪、炎症の指標、収縮期血圧が下がる。筋肉の SIRT1 と PGC-1α のたんぱく質が増える | 筋肉のミトコンドリアの量 |
| Poulsen ら(Diabetes・2013) | BMI30を超える肥満の男性24人(18〜70歳) | 1日1,500mg(500mgを1日3回)・4週 | 主な指標のインスリン感受性は、両方の群で有意ではない程度に悪くなった | 糖の作られ方と使われ方、脂肪の燃焼、血圧、安静時のエネルギー消費、内臓脂肪、炎症と代謝の指標 |
| Yoshino ら(Cell Metabolism・2012) | 肥満ではなく、血糖の調節が正常な閉経後の女性 | 1日75mg・12週 | 血液中のレスベラトロールの濃度は上がった | 体の組成、安静時の代謝、血中の脂質、炎症の指標、肝臓・筋肉・脂肪のインスリン感受性 |
| Gliemann ら(Journal of Physiology・2013) | 運動習慣の無い高齢の男性27人(平均65歳)。全員が8週間の強い運動をする | 1日250mg・8週 | 運動による最大酸素摂取量の伸びは偽薬の群のほうが45%大きかった。平均血圧は偽薬の群だけ下がった。運動で良くなる LDL コレステロールや中性脂肪の変化が打ち消された | 筋肉の SIRT1 のたんぱく質の量 |
| Brown ら(Cancer Research・2010) | 健康な成人40人 | 1日0.5g・1g・2.5g・5g・29日 | 飲む前と29日目を比べると、全員を合わせて血中の IGF-1 と IGFBP-3 がわずかに下がった(IGF-1 は2.5gで最も大きい)。2.5gと5gでは軽い〜中くらいのお腹の症状 | 偽薬の群を置かない設計。IGF-1 は0.5gと1gで有意な変化なし、5gでは IGF-1 と IGFBP-3 とも有意な変化なし |
| Turner ら(Neurology・2015) | 軽い〜中くらいのアルツハイマー病の119人 | 1日500mgから始め、最後は1回1,000mgを1日2回・52週 | 血液と髄液(脳と脊髄のまわりの液)の Aβ40(アルツハイマー病で変わるたんぱく質の断片)は、偽薬の群のほうが大きく下がった。脳の体積の減りは、レスベラトロールの群のほうが大きかった | 安全で、飲み続けられたと報告。主な目的は安全性と指標で、症状の改善を確かめる設計ではない |
出典: 各論文の PubMed の要旨(Poulsen らの量と年齢、Brown らの量ごとの結果は本文)。2026年11月5〜6日に確かめた。
資金と原料の出どころ(各論文の全文の資金・利益相反の節。2026年11月6日に確かめた): Timmers らは原料を DSM 社が提供し、著者の1人が同社の所属。Yoshino ら(2012)は原料を DSM 社が提供し、資金の一部も同社で、著者の1人が同社の社員。Brown らは錠剤を作った Pharmascience 社の社員が著者に2人いる。Poulsen らと Gliemann らは原料を Fluxome 社が提供し、資金はデンマークの公的機関や財団で、著者の利益相反は無いと書かれている。Turner らは米国立衛生研究所(NIH)の資金で、原料は受託の製造会社が作った。会社の関わった試験でも、結果が良い方向に出たもの(Timmers ら)と差が出なかったもの(Yoshino ら)がある。
同じ「肥満の男性」でも、1日150mgを30日飲んだ Timmers らの試験では代謝の数値が良くなり、1日1,500mgを4週飲んだ Poulsen らの試験では差が出ませんでした。量を増やせば結果が良くなるとは限らないことが分かります。Gliemann らの試験は、運動の効果をかえって弱めた可能性を示した点で注目されました。Turner らの試験では、レスベラトロールとその代謝物が血液脳関門(血液から脳へ物質が入るのを制限する仕組み)を越えて髄液で測れましたが、脳の体積の減りが大きかった理由と意味は、この試験だけでは決められません。
試験をまとめた分析では、血糖・血圧・炎症はどう変わったのか
1つ1つの試験は小さいため、複数の試験をまとめて計算し直すメタ解析(系統的レビュー)がたくさん出ています。数字は、レスベラトロールの群と偽薬の群の差で、かっこ内は95%信頼区間(本当の差がだいたいこの範囲にあると考えられる幅)です。幅が0をまたぐ場合は、差があるとは言えません。
| 測ったもの | 分析(雑誌・年) | まとめた試験 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 血糖 | Liu ら(American Journal of Clinical Nutrition・2014) | 11試験・388人 | 糖尿病の人では空腹時血糖、インスリン、HbA1c(1〜2か月の血糖の平均を表す数値)、HOMA-IR(インスリンの効きにくさ)が下がった。糖尿病ではない人では差なし |
| 血糖 | Delpino ら(Critical Reviews in Food Science and Nutrition・2022) | 30試験 | インスリン抵抗性と HbA1c が下がった(標準化平均差 −0.34 と −0.64)。空腹時血糖は糖尿病の人だけ下がった。試験ごとのばらつきが大きい(I² 70〜90%) |
| 2型糖尿病 | Jeyaraman ら(コクラン・2020) | 3試験・50人(4〜5週・1日10〜1,000mg) | HbA1c の差は0.1%(−0.02〜0.2)で差なし。根拠の確かさは「非常に低い」。合併症や生活の質を調べた試験は無い |
| 血圧 | Liu ら(Clinical Nutrition・2015) | 6試験・247人 | 全体では差なし。1日150mg以上の試験だけで見ると収縮期血圧が11.90mmHg 低い(−20.99〜−2.81)。拡張期血圧は差なし |
| 血圧 | Fogacci ら(Critical Reviews in Food Science and Nutrition・2019) | 17試験 | 全体では収縮期 −2.5mmHg(−5.5〜0.6)、拡張期 −0.5mmHg(−2.2〜1.3)で差なし。1日300mg以上の試験と糖尿病の人の試験に分けると差があった |
| CRP と心臓の危険因子 | Sahebkar ら(International Journal of Cardiology・2015) | 10試験 | CRP(体の炎症で増えるたんぱく質)は −0.144mg/L(−0.968〜0.680)で差なし。総コレステロール、LDL、中性脂肪、血糖、血圧も差なし。HDL コレステロールは 4.18mg/dL とわずかに下がった |
| 炎症 | Haghighatdoost ら(European Journal of Clinical Nutrition・2019) | 15試験・18〜75歳の658人 | CRP は −0.54(−0.78〜−0.30)で下がった。IL-6 と TNF-α(どちらも炎症で増える物質)は全体では差なし |
| 体格と炎症 | Molani-Gol ら(European Journal of Nutrition・2024) | 19のメタ解析・81試験・4,088人 | BMI、腹囲、CRP、TNF-α が下がった。体重(全体)と IL-6 は差なし |
| 血管の働き | Mohammadipoor ら(Phytotherapy Research・2022) | 17試験 | FMD(血流が増えたときの血管の広がりやすさ)が1.43%上がった(0.98〜1.88)。血管の炎症に関わる ICAM-1 は下がった。VCAM-1、フィブリノゲン、PAI-1 は差なし |
| 骨の指標 | Asis ら(Annals of the New York Academy of Sciences・2019) | 6試験・264人 | 骨を作る働きの指標 ALP と BAP が上がった。血中カルシウム、オステオカルシン、CTX-I、PINP は差なし |
| 記憶と気分 | Farzaei ら(Pharmacological Research・2018) | 4試験・約225人 | 記憶と認知の検査では、どの項目も差なし。気分の質問票では「活気」と「疲労」の2項目の点数が下がり、ほかの項目は差なし |
出典: 各メタ解析の PubMed の要旨(2026年11月5〜6日に確かめた)。
表から読めることは3つあります。1つ目は、分析によって結論が違うことです。同じ CRP でも、10試験をまとめた2015年の分析では差がなく、15試験をまとめた2019年の分析では下がっています。どの試験を入れたかで結果が動くほど、元の試験が小さく、ばらつきが大きいということです。2つ目は、差が出やすいのは糖尿病の人と量の多い試験に偏っていることです。ただし、あとから群を分けて見た結果は、最初から確かめる目的で作った試験に比べて偶然の影響を受けやすく、仮説の段階にとどまります。3つ目は、どの分析も血糖や血圧などの「指標」を見ていて、心筋梗塞、脳卒中、死亡などの出来事が減るかは調べられていないことです。コクランのレビューも、長く追跡した十分な大きさの試験が必要だとしています。
飲んだレスベラトロールは体に届くのか
レスベラトロールの研究でいちばん大きな壁は、生体利用率(飲んだ量のうち、元の形のまま全身の血液に届く割合)の低さです。
2004年に Walle らが学術誌 Drug Metabolism and Disposition に出した研究では、健康な6人に、目印の付いたレスベラトロール25mgを口と静脈から与えて追いかけました。口から飲んだ分は少なくとも70%が吸収されましたが、血液の中で元の形のまま見つかったのは 5ng/mL 未満でした。代謝物を含めた全体の濃度の山は約 491ng/mL(約2μmol/L)で、多くは尿に出ていました。体の中で、硫酸やグルクロン酸がすばやく結びついた形(抱合体と呼びます)に変わるためです。腸内細菌が関わる可能性のある変化も見られています。
2007年の Boocock らの研究(Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention)では、健康な人に1回0.5g、1g、2.5g、5gを飲んでもらい(各10人)、量を増やしたときの血中濃度を測りました。いちばん多い5gでも、元の形の濃度の山は 539ng/mL(2.4μmol/L)で、飲んで1.5時間後でした。代謝物の濃度の山はその3〜8倍、血中の濃度を時間で足し合わせた量(AUC)は最大で23倍でした。
オレゴン州立大学の解説は、培養した細胞の実験の多くが、人の血液で測られる濃度より10〜100倍高い濃度で行われていると注意しています。細胞の実験で見えた働きが、飲んだ量で同じように起きるとは限らない理由です。一方で、Turner らの試験のように、1日2gという多い量では脳の髄液まで届いたという結果もあります。代謝物そのものが体の中で働くのかは、まだはっきりしていません。
なお、同研究所の解説によると、赤ワインに入っているトランス型のレスベラトロールは、脂肪の少ない食事・多い食事と一緒に飲んでも、空腹時と吸収が変わらなかったと報告されています。
どのくらいの量で、どんな副作用が報告されているのか
短い期間なら、多い量でも重い問題は少ないという報告が中心です。Boocock らの試験では、1回5gまで飲んでも重い有害事象は出ませんでした。一方、量を続けて飲むと症状が出ています。Brown らの試験では、1日2.5gと5gを29日飲んだ群で、軽い〜中くらいのお腹の症状が出ました。Turner らの試験(最大1日2g・52週)では、多かった有害事象は吐き気、下痢、体重の減少でした。
病気の人での重い例もあります。Sirtris が開発したレスベラトロールの製剤 SRT501 は、再発・難治性の多発性骨髄腫(血液のがんの一種)の患者で、治療薬ボルテゾミブと組み合わせる第2相の試験に使われました(Popat ら、British Journal of Haematology、2013年)。日本薬学会 環境・衛生部会の解説には、骨髄腫の患者に1日5gを与えた試験で24人中5人に腎臓の障害が出て、試験が中止されたと書かれています。腎臓の障害は骨髄腫によく見られる合併症ですが、レスベラトロールがそれを悪くした可能性が考えられたためとしています。同じ解説は、動物(ラット、イヌ、ウサギ)で多い量を長く与えると、腎臓とぼうこうに障害が出たとしています。
各国の決まりと、示されている量は次のとおりです。
| 国・機関 | 対象 | 示している量 | 中身 |
|---|---|---|---|
| EU(新規食品の一覧=欧州委員会実施規則 2017/2470。最初の認可は実施決定 2016/1190) | 合成のトランス型レスベラトロールを使った成人向けのサプリ(2016年の認可ではカプセル・錠剤に限っていたが、2021年の改正で形の限定は外れた) | 1日150mgまで | 欧州食品安全機関(EFSA)が2015年12月11日に、合成のトランス型を成人向けのサプリに使う条件で安全と結論。薬を使っている人は医師の管理の下でだけ摂るよう、表示を義務づけた |
| EU(同じ一覧の別の項) | 遺伝子組換えの酵母で作ったトランス型レスベラトロールを使ったサプリ | mg の上限の数字なし | 「イタドリ(Fallopia japonica)から抽出したレスベラトロールのサプリでの普通の使い方に合わせる」とされている。薬を使っている人向けの表示は合成の物と同じ |
| カナダ保健省(2024年の決定) | 栄養成分などを足した一般の食品(飲み物など) | 1日4mgを超えないこと | 食事から安全に摂ってきた量は1日4mg以下。それを超える使い方はデータが足りないとして認めていない。見直しには、生殖と発生への影響、糖尿病の人での安全性、薬を分解する酵素への作用などのデータが要るとしている |
| DSM 社(EU で認められた原料の申請者) | 許容1日摂取量(毎日一生摂っても問題が出ないと考えられる量) | 体重60kgで1日450mg | 日本薬学会 環境・衛生部会の解説による。もっと低い1日120mg(体重60kg)を提案する研究者もいる |
| 日本 | 健康食品として売られているもの | 決まりなし | 一般の食品の扱いで、摂取の基準も上限も決められていない(2013年時点の同じ解説による。今の扱いは公的な資料で確かめていない) |
出典: 欧州委員会実施規則(EU)2017/2470 の統合版(2026年8月10日版・EU 官報局の掲載。2026年11月6日に確かめた)、欧州委員会実施決定(EU)2016/1190(英国 legislation.gov.uk の掲載)、カナダ保健省「Decision on resveratrol as a supplemental ingredient in foods」、日本薬学会 環境・衛生部会「健康食品として流通しているレスベラトロールについて」(いずれも2026年11月5日に確かめた)。
日本で売られているサプリの1日量(後の表で mg が分かる4商品は8.5〜50mg)は、EU が合成のトランス型に決めた上限(1日150mg)より少なく、人の試験で薬を分解する酵素への影響(1日1g)やお腹の症状(1日2.5g以上)が報告された量とも開きがあります。ただし、少ない量で何年も飲み続けたときの安全性を確かめた試験は、今回調べた資料にはありませんでした。
薬を飲んでいる人は何に気をつけるのか
注意がいちばんはっきりしているのは、薬を分解する酵素への影響です。肝臓などでは、CYP(シトクロム P450)という酵素の仲間が多くの薬を分解しています。2010年に Chow らが学術誌 Cancer Prevention Research に出した試験では、健康な42人が1日1gを4週間飲んだところ、CYP3A4、CYP2D6、CYP2C9 の働きが抑えられ、CYP1A2 の働きは高まりました。これらの酵素で分解される薬は、血中の濃度が変わる可能性があります。日本薬学会 環境・衛生部会の解説も、同じ試験を挙げて、薬で治療中の人は医師や薬剤師に相談するよう勧めています。
オレゴン州立大学の解説は、主に試験管の中の結果と理論から、次の組み合わせに注意を促しています。
- 血を固まりにくくする薬(ワルファリン、クロピドグレル、アスピリンなど)や、イブプロフェンなどの痛み止めと一緒に摂ると、出血しやすくなる可能性
- CYP3A4 で分解される薬(アトルバスタチンなどのコレステロールの薬、ニフェジピンなどの血圧の薬、シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫を抑える薬、シルデナフィルなど)の作用が強まる可能性
女性ホルモンとの関係も指摘されています。レスベラトロールの骨格は、女性ホルモンに似た働きや逆の働きをする可能性があります。オレゴン州立大学の解説は、乳がん、卵巣がん、子宮がんにかかったことのある女性はサプリを避けるべきとし、妊娠中と授乳中のサプリの安全性は確かめられていないとしています。日本薬学会の解説も、乳がんや女性の生殖器のがん、子宮内膜症の人、妊娠中・授乳中の人は多く摂るのを控えるよう注意しています。
原料にも違いがあります。オレゴン州立大学の解説によると、米国で売られているサプリの多くはイタドリの根の抽出物を原料にしています。日本薬学会の解説によると、イタドリの根茎は生薬(虎杖根)として医薬品の原料にあたり、日本では食品の原料に使えません。純度によっては、おなかがゆるくなるなど生薬としての作用が出る可能性もあるとしています。この記事で比べた日本の5商品は、赤ぶどう、ぶどうの茎、赤ワインエキス、リンゴンベリーなどを原料と表示しています。
注意
持病がある人、薬を飲んでいる人(特に血を固まりにくくする薬、CYP3A4 で分解される薬)、妊娠中・授乳中の人、乳がんや子宮・卵巣のがんにかかったことのある人は、レスベラトロールのサプリを飲む前に医師か薬剤師に相談してください。この記事は研究の結果をまとめたもので、診断や治療の代わりにはなりません。
日本で買える主な商品には、何がどれだけ入っているのか
メーカーの公式ページを開いて、1日の目安、1日あたりのトランス型レスベラトロールの量、内容量、価格を写しました。価格はすべて税込で、通常購入の値段です(定期購入の値段はかっこ内)。1日あたりの値段と、トランス型1mgあたりの値段は、この記事で計算しました。
| 商品名(販売元) | 1日の目安 | 1日あたりのトランス型 | 内容量 | 価格(税込) | 1日あたり | トランス型1mgあたり | 原料の表示・その他 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| レスベラトロール+長命草 30日分(DHC) | 2粒 | 30mg | 60粒・30日分 | 2,862円(定期2,145円) | 約95円 | 約3.2円 | リンゴンベリーエキス末から。長命草、日本山人参、ビタミンC・E も入る。名称は「レスベラトロール含有食品」 |
| レスベラトロール(ファンケル) | 2粒 | 10mg | 30日分 | 2,241円(定期2,016円) | 約75円 | 約7.5円 | 赤ぶどうとぶどうの茎から。ε-ビニフェリン 1mg も入る |
| ワカサプリ レスベラトロール(分子生理化学研究所) | 2〜4粒 | 25〜50mg | 60粒 | 5,940円(定期の2回目から5,346円) | 約198〜396円 | 約7.9円 | 赤ブドウエキス(フランス・ローヌ渓谷)。イタドリは使っていないと表示 |
| ナチュレ・レスベラトロール(ナチュレ・ホールディングス) | 1粒 | 8.5mg | 30粒・30日分 | 6,993円 | 約233円 | 約27.4円 | レスベラトロールを含む赤ワインエキス |
| レスベラトロールE(新日本製薬) | 1粒 | mg の公表なし(「1粒で赤ワイン3本分相当」と表示) | 31粒・31日分 | 1,944円(定期1,749円) | 約63円 | 計算できない | 赤ワインエキス末、ブドウ茎エキス(南フランス産のブドウ)。ビタミンE の栄養機能食品 |
出典: 各商品の公式ページ(2026年11月6日に取得)。ワカサプリの1日の目安は分子生理化学研究所の商品ページ、ほかは各販売ページの表示による。5商品とも、公式ページに機能性表示食品の表示はありません。
選ぶときに見るとよい点は4つです。1つ目は、1日あたりのトランス型の mg が書いてあるかです。「赤ワイン何本分」という表示だけでは、ほかの商品や試験と比べられません。2つ目は、1日量と試験の量の差です。上の5商品の1日量は8.5〜50mgで、血糖や血圧で差が出たと報告された試験の多くは1日150mg以上でした。どの量なら何が変わるのかは、まだ分かっていません。3つ目は原料で、日本では食品に使えないイタドリを使っていないかを表示で確かめられます。4つ目は1mgあたりの値段で、同じトランス型の量でも8倍以上の差があります。
新日本製薬の「レスベラトロールE」は栄養機能食品ですが、表示されている働きはビタミンE のもの(抗酸化の働きで体の中の脂質を酸化から守り、細胞の健康維持を助ける、という内容)で、レスベラトロールの働きではありません。
国立健康・栄養研究所のデータベースには何が載っているのか
国立健康・栄養研究所(医薬基盤・健康・栄養研究所)の「健康食品」の安全性・有効性情報には、素材情報データベースのレスベラトロールの項があります。旧データベースは2023年3月30日から一時止まっており、新しい素材情報データベースが2025年6月2日に公開されました。項の中は、分野ごと(循環器、糖尿病・内分泌、脳・神経、免疫・がん・炎症、骨・筋肉、肥満など)にメタ解析とランダム化比較試験を要約した「有効性」、国内外の「健康被害」、薬などとの「相互作用」、食品と医薬品の区分などの「法規・制度」に分かれています。同サイトはデータの無断の転用と引用を禁じているため、この記事では中身を写さず、場所だけを示します。購入の前に、気になる分野の項を直接読むことを勧めます。
参考までに、2011年に食品安全委員会の調査会に出された資料は、当時の同研究所の情報を引いて、人での有効性については調べた文献に十分なデータが無いこと、サプリなど濃縮した形で摂ったときの安全性の情報も十分ではないこと、女性ホルモンに似た働きがあるためホルモンが関わる病気の人は使用を避けることをまとめています。
「レスベラトロールは効果がない」と言われるのはなぜか
検索では「効果がないのか」という問いがよく出ます。ここまでの資料から、そう言われる理由は次の3つに整理できます。
- 長寿の話の土台になった研究が、マウスでも人でも再現されていない。標準の餌のマウスでも、3か所の施設で同じ手順で試したマウスでも寿命の延長はなく、人で食事からの量と死亡に関係は見られなかった
- 人の試験の結果がそろっていない。肥満の男性の試験でも、良くなった試験と差が出なかった試験がある。メタ解析でも、差が出るのは糖尿病の人や量の多い試験に偏っている
- 体に届きにくい。元の形で血液に残る量はごくわずかで、市販のサプリの量は、差が出た試験の量より少ないことが多い
一方で、「何も変わらない」と言い切れるほどの大きな試験も無いのが今の状況です。CRP や血管の広がりやすさなど、まとめた分析で動いた指標もあります。言えるのは、「人で寿命や病気が減ることは確かめられておらず、指標の変化も条件によって出たり出なかったりする」ということです。
まだ分かっていないこと
- 人で寿命が延長するか、心臓や血管の病気、がん、認知症になる人が減るか。どれも長く追跡した試験がありません
- 人の体の中で SIRT1 を直接活性化しているのか。試験管での測定の方法をめぐる議論は、2013年以降も決着していません
- 何 mg を、どの形(元の形か代謝物か、ほかの成分と組み合わせるか)で摂れば、どの指標が変わるのか。試験ごとに量が1日10mgから5gまで違います
- だれに向くのか。糖尿病の人や量の多い試験で差が出やすいという結果は、群を後から分けた分析によるもので、確かめる目的の試験はまだ足りません
- 市販の量(1日8.5〜50mg程度)を何年も続けたときの安全性と、実際の薬との飲み合わせの影響
- 運動と一緒に摂ったとき、高齢の男性で運動の効果を弱めた結果が、ほかの年齢や女性でも起きるのか
- 日本で売られている商品の表示どおりの量が実際に入っているか。今回、商品を分析した公的な調査は確かめられませんでした
出典
- Howitz KT, et al. Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan(Nature・2003)
- Baur JA, et al. Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet(Nature・2006)
- Kaeberlein M, et al. Substrate-specific activation of sirtuins by resveratrol(Journal of Biological Chemistry・2005)
- Pacholec M, et al. SRT1720, SRT2183, SRT1460, and resveratrol are not direct activators of SIRT1(Journal of Biological Chemistry・2010)
- Hubbard BP, et al. Evidence for a common mechanism of SIRT1 regulation by allosteric activators(Science・2013)
- Pearson KJ, et al. Resveratrol delays age-related deterioration and mimics transcriptional aspects of dietary restriction without extending life span(Cell Metabolism・2008)
- Miller RA, et al. Rapamycin, but not resveratrol or simvastatin, extends life span of genetically heterogeneous mice(Journals of Gerontology Series A・2011)
- Semba RD, et al. Resveratrol levels and all-cause mortality in older community-dwelling adults(JAMA Internal Medicine・2014)
- Timmers S, et al. Calorie restriction-like effects of 30 days of resveratrol supplementation on energy metabolism and metabolic profile in obese humans(Cell Metabolism・2011)
- Poulsen MM, et al. High-dose resveratrol supplementation in obese men(Diabetes・2013)
- Yoshino J, et al. Resveratrol supplementation does not improve metabolic function in nonobese women with normal glucose tolerance(Cell Metabolism・2012)
- Gliemann L, et al. Resveratrol blunts the positive effects of exercise training on cardiovascular health in aged men(Journal of Physiology・2013)
- Brown VA, et al. Repeat dose study of the cancer chemopreventive agent resveratrol in healthy volunteers(Cancer Research・2010)
- Turner RS, et al. A randomized, double-blind, placebo-controlled trial of resveratrol for Alzheimer disease(Neurology・2015)
- Liu K, et al. Effect of resveratrol on glucose control and insulin sensitivity: a meta-analysis of 11 randomized controlled trials(American Journal of Clinical Nutrition・2014)
- Delpino FM, et al. Resveratrol supplementation and type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis(Critical Reviews in Food Science and Nutrition・2022)
- Jeyaraman MM, et al. Resveratrol for adults with type 2 diabetes mellitus(Cochrane Database of Systematic Reviews・2020)
- Liu Y, et al. Effect of resveratrol on blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials(Clinical Nutrition・2015)
- Fogacci F, et al. Effect of resveratrol on blood pressure: a systematic review and meta-analysis of randomized, controlled, clinical trials(Critical Reviews in Food Science and Nutrition・2019)
- Sahebkar A, et al. Lack of efficacy of resveratrol on C-reactive protein and selected cardiovascular risk factors(International Journal of Cardiology・2015)
- Haghighatdoost F, et al. Can resveratrol supplement change inflammatory mediators? A systematic review and meta-analysis(European Journal of Clinical Nutrition・2019)
- Molani-Gol R, et al. Effects of resveratrol on the anthropometric indices and inflammatory markers: an umbrella meta-analysis(European Journal of Nutrition・2024)
- Mohammadipoor N, et al. Resveratrol supplementation efficiently improves endothelial health(Phytotherapy Research・2022)
- Asis M, et al. Effects of resveratrol supplementation on bone biomarkers: a systematic review and meta-analysis(Annals of the New York Academy of Sciences・2019)
- Farzaei MH, et al. Effect of resveratrol on cognitive and memory performance and mood: a meta-analysis of 225 patients(Pharmacological Research・2018)
- Walle T, et al. High absorption but very low bioavailability of oral resveratrol in humans(Drug Metabolism and Disposition・2004)
- Boocock DJ, et al. Phase I dose escalation pharmacokinetic study in healthy volunteers of resveratrol(Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention・2007)
- Chow HH, et al. Resveratrol modulates drug- and carcinogen-metabolizing enzymes in a healthy volunteer study(Cancer Prevention Research・2010)
- Popat R, et al. A phase 2 study of SRT501 (resveratrol) with bortezomib for patients with relapsed and or refractory multiple myeloma(British Journal of Haematology・2013)
- レスベラトロール(オレゴン州立大学ライナス・ポーリング研究所 微量栄養素情報センター・日本語版)
- 健康食品として流通しているレスベラトロールについて(日本薬学会 環境・衛生部会 環境・衛生薬学トピックス・2013)
- 中田理恵子・井上裕康「レスベラトロール研究の進展」(日本生化学会『生化学』90巻4号・2018)
- GlaxoSmithKline plc Form 6-K(Sirtris Pharmaceuticals の買収の発表を含む・米国証券取引委員会・2008)
- Commission Implementing Decision (EU) 2016/1190(trans-resveratrol を新しい食品成分として認める決定・2016)
- Commission Implementing Regulation (EU) 2017/2470 統合版(新規食品の一覧。Trans-resveratrol と Trans-resveratrol (microbial source) の項・2026年8月10日版・EU 官報局)
- Decision on resveratrol as a supplemental ingredient in foods(カナダ保健省・2024)
- 素材情報データベース「レスベラトロール」(「健康食品」の安全性・有効性情報・医薬基盤・健康・栄養研究所)
- 「素材情報データベース」公開に関するお知らせ(医薬基盤・健康・栄養研究所・2025)
- 第1回企画等専門調査会 資料「食品安全委員会が自ら行う食品健康影響評価の案件候補について(案)」抜粋(食品安全委員会・2011)
よくある質問
レスベラトロールは何に効果がありますか?
人のランダム化比較試験をまとめた分析では、糖尿病の人の空腹時血糖やHbA1cなどの血糖の指標、炎症の指標であるCRPが下がったという報告があります。一方、健康な人や肥満の人の試験では差が出ないものも多く、2型糖尿病の人の試験を集めたコクランのレビュー(2020年、3試験・50人)は、効果とも害とも言える根拠が足りないと結論しています。病気になる人が減るか、長生きするかを確かめた人の試験はありません。
レスベラトロールを摂り過ぎるとどうなりますか?
健康な人が1日2.5gか5gを29日飲んだ試験では、軽い〜中くらいのお腹の症状が出ました。1日1gを4週間飲んだ試験では、薬を分解する肝臓などの酵素(CYP3A4、CYP2D6、CYP2C9、CYP1A2)の働きが変わりました。日本薬学会 環境・衛生部会の解説には、骨髄腫の患者に1日5gを与えた試験で腎臓の障害が出て中止された例が載っています。EUは合成のトランス型を使う成人向けのサプリを1日150mgまでとし、薬を使っている人は医師の管理の下でだけ摂るよう表示を義務づけています。
レスベラトロールは効果がないって本当ですか?
長生きにつながるという点は、人では確かめられていません。普通の餌のマウスや、3か所の施設で同じ手順で試したマウスでも寿命の延長は見られず、高齢者783人を約9年追った研究では、食事からの量と死亡に関係はありませんでした。血糖やCRPなど一部の指標は、まとめた分析で下がったという報告がありますが、試験によって結果が分かれます。飲んでも元の形で血液に残る量はごくわずかで、市販のサプリの量は差が出た試験の量より少ないことが多いのも理由です。
レスベラトロールは白髪に効果がありますか?
2026年11月6日に論文のデータベースPubMedで調べた範囲では、レスベラトロールを飲んで白髪の変化を測った人の試験は見つかりませんでした。2025年の研究で、計算の上での候補の1つとして名前が挙がっただけです。白髪への効果は確かめられていません。
赤ワインを飲めばレスベラトロールを摂れますか?
オレゴン州立大学ライナス・ポーリング研究所の資料では、赤ワイン1杯(約140mL)に入っているのはおよそ0.3〜1.1mgで、この記事で取り上げた人の試験で使われた量(1日10mg〜5g)よりけたが少ない量です。同じ資料は、妊娠中の人はレスベラトロールを摂る目的でワインを飲むことを避けるべきとしています。