ブライアン・ジョンソンとは|取り組みを論文で検証
ブライアン・ジョンソンは決済会社 Braintree を創業した米国の起業家で、老化対策の手順「Blueprint」を公開しています。食べる量を少し抑える・睡眠・運動には人の研究の裏づけがある一方、ラパマイシンと若い人の血漿は本人も中止を公表しました。
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結論
ブライアン・ジョンソンは決済会社 Braintree を創業した米国の起業家で、自分の体を使って老化の速さを遅くしようとする計画「Blueprint(ブループリント)」を続け、その手順を公式サイトで公開しています。手順のうち、食べる量を少し抑えること・睡眠・運動は、人の試験や大規模な研究の裏づけが多い分野です。一方でラパマイシン(細胞の成長の仕組みを抑える薬)は動物での結果が中心で、若い人の血漿は人で効果が確かめられておらず、本人もこの2つを中止したと公表しています。本人が示す「老化の速さ0.50」は血液の DNA の印から計算した推定値で、測り直すと値がぶれることが知られており、長生きにつながるかはまだ確かめられていません。日本でまねしやすいのは生活習慣の部分で、処方薬や血漿の処置は医師の判断の領域です。
この記事の基準日: 2026年11月6日。本人の公式サイト(bryanjohnson.com と Blueprint の手順のページ)と本人の X の投稿、eBay と Netflix の公式発表、論文(CALERIE 試験、ラパマイシン・血漿交換・NAD+ の材料の試験、エピジェネティッククロックの研究)、WHO・米国 FDA・厚生労働省・PMDA の公開資料を読んで書きました。医師の監修は受けていません。
ブライアン・ジョンソンとはどんな人なのか
ブライアン・ジョンソン(Bryan Johnson)は米国の起業家です。本人の公式サイトの紹介ページは、自分が創業した会社として、オンライン決済の Braintree、脳と心を測ることを掲げる Kernel(本人が創業者で CEO)、原子・分子・生物を工学的に扱う科学者の起業家に投資する OS Fund を挙げています。
Braintree については、2013年9月26日に eBay が約8億ドルの現金で買収すると発表しました。この買収には、個人どうしでお金を送るアプリ Venmo も含まれていました。
その後、本人は自分の体を対象にした老化対策の計画を始め、「Blueprint」と名づけました。手順のページには「Project Blueprint を始めた時、自分は42歳で、ぼろぼろだった」という趣旨の一文があります。今の Blueprint は、手順を無料で公開するほか、粉末のサプリやたんぱく質の食品、オリーブオイルなどを売る会社のブランドにもなっています。さらに本人は「Don't Die(死ぬな)」という名前で、死とその原因に抗うことを掲げる共同体の活動もしています。
2025年1月1日には、本人を追ったドキュメンタリー映画『DON'T DIE: "永遠に生きる"を極めし男』(原題 Don't Die: The Man Who Wants to Live Forever、監督クリス・スミス)が Netflix で配信されました。
年間いくらかけていると本人は言っているのか
「年間200万ドル」という数字がよく紹介されますが、本人の公式サイトの中に、本人が年間の総額や内訳を書いた箇所は見つかりませんでした(2026年11月6日に確認)。公式サイトのトップページにあるのは「2年間と数百万ドルをかけて、自分よりもうまく自分の世話をするアルゴリズムを作った」という趣旨の文です。紹介ページには、掲載記事の一つとして Bloomberg の「年200万ドルで18歳に戻る方法」という題の記事が並んでいます。
Netflix の公式記事でも、監督が「18歳に戻るために年200万ドルを使う男」という見出しを見たことが制作のきっかけだと話しています。つまり「年200万ドル」は報道の見出しの数字で、本人が明細つきで示した額ではありません。この記事では、本人の公表で確かめられない総額や円に直した額は書きません。
本人はどんな手順を公開しているのか
手順は Blueprint の公式サイトの「Blueprint Protocol」というページにまとまっています。ページの日付は2026年1月23日で、「過去の個人の手順の情報であり、医療の助言ではない」「個人の医療の助言が欲しい人は医師に相談を」という断り書きが付いています。今の本人がこのとおりに続けているとは限らない点に注意が要ります。主な中身は次のとおりです。
| 分野 | 本人のページに書かれている主な内容 |
|---|---|
| 食事 | 1日2,250kcal(推奨量より10%少ない)。たんぱく質130g・炭水化物206g・脂質101g。食事は昼ごろに終え、水分は午後4時でやめる |
| 睡眠 | 午後8時30分に寝床に入り、午前5時ごろ自然に起きる。寝る60分前に画面を消し、30〜60分の寝る前の決まった過ごし方をする。寝室は18〜20℃ |
| 運動 | 週6時間。筋力トレーニング3回と有酸素運動3回。中くらいの強さ(ゾーン2)の運動150分と強い運動75分 |
| サプリ | オメガ3(EPA/DHA/DPA 800mg)、クレアチン5g(同じ飲み物に入れる Blueprint の粉末 Longevity Mix の2.5gと合わせて7.5g)、コラーゲンペプチド11g、NR 450mg または NMN 500mg など |
| 処方薬(ページに Rx と表示) | 甲状腺ホルモン2種、メトホルミン500mg(6週ごとに飲む期間と休む期間)、アカルボース(ページ内で量の書き方が2通りある)、タダラフィル5mg、ミノキシジル3.75mg、エンパグリフロジン(商品名 Jardiance)10mg、エボロクマブ(商品名 Repatha)140mg を2週に1回、カンデサルタン8mg |
| 検査 | 3〜6か月ごとの採血。40歳以上か、家族に危険の高い病歴がある場合は年1回の全身 MRI |
出典: Bryan Johnson「Blueprint Protocol」(2026年1月23日付のページ。2026年11月6日に確認)
本人はこのページで、肌の年齢が始めた時の64歳相当から36歳相当になった、などの結果も書いています。ただし、測った方法の詳しい説明や、比べる相手(何もしなかった場合)は示されておらず、第三者が確かめた値ではありません。
本人の公表している数字を、公的な目安と並べると次のようになります。
| 項目 | 本人の公表 | 比べる目安 |
|---|---|---|
| 1日のエネルギー | 2,250kcal | 本人の説明では推奨量より10%少ない量 |
| 1週間の運動 | 360分 | WHO は中くらいの強さで週150〜300分、または強い運動で週75〜150分 |
| 寝床にいる時間 | 約8時間30分 | 厚生労働省は成人の睡眠時間を6時間以上を目安としている |
| 老化の速さ(DunedinPACE) | 0.50 | 1.0 が「暦の1年で体も1年分」の平均の速さ |
出典: Blueprint Protocol、WHO 2020年の身体活動の指針(Br J Sports Med)、厚生労働省「良い睡眠のために」、Rejuvenation Olympics の順位表、DunedinPACE の論文(eLife 2022)。寝床にいる時間は、本人の書いた就寝と起床の時刻からこの記事で計算した値(いずれも2026年11月6日に確認)
どの取り組みに、人での裏づけがあるのか
本人の取り組みを、裏づけの段階で分けると次のようになります。「人の試験あり」は効果が大きいという意味ではなく、人で調べた記録があるという意味です。
| 取り組み | 本人の状況 | 裏づけの段階 | 主な根拠 |
|---|---|---|---|
| 食べる量を少し抑える | 続けている(推奨量の10%減を公表) | 人の無作為化試験あり | CALERIE 試験。健康な21〜50歳の218人が2年間。目標25%減に対し実際は11.9%減で、LDL コレステロールや血圧などが改善 |
| 睡眠 | 就寝と起床の時刻を固定 | 大規模な観察研究(因果は未確定) | 約138万人をまとめた分析で、短すぎる睡眠も長すぎる睡眠も死亡の多さと関連 |
| 運動 | 週6時間 | 大規模な観察研究と国際的な指針 | WHO は運動が足りない人は足りている人より死亡の危険が20〜30%高いとしている |
| NR・NMN(NAD+ の材料) | 朝に NR 450mg または NMN 500mg | 人の小さな短期の試験 | 血液の NAD+ は増えたが、血圧や血糖などの多くは変わらなかった |
| ラパマイシン | 2024年9月28日に中止(11月14日に公表) | 動物の段階が中心 | マウスで寿命が長くなった報告。人の48週の試験では主な評価項目に差なし |
| 若い人の血漿 | 2023年7月5日に中止を公表 | 人で効果が確かめられていない | 本人の6回の結果で利益なし。米国 FDA は臨床的な利益は証明されていないと注意 |
出典: Kraus ら(Lancet Diabetes Endocrinol 2019)、Cappuccio ら(Sleep 2010)、WHO「Physical activity」、Martens ら(Nat Commun 2018)、ワシントン大学の発表(2021)、Harrison ら(Nature 2009)、Moel ら(Aging 2025)、本人の X の投稿(2023年7月5日・2024年11月14日)、FDA(2019)。いずれも2026年11月6日に確認
食べる量を抑えることは、人で何が確かめられているのか
人で一番よく調べられているのが、カロリー制限(栄養の質を保ったまま食べる量を減らすこと)です。米国の CALERIE 試験では、肥満でない健康な21〜50歳(BMI 22〜27.9)を、25%のカロリー制限を目指す群と、ふだんどおり食べる群に2対1で分け、2年間追いました。始めたのは218人です。
制限の群は目標の25%に届かず、実際の減りは平均11.9%でした。それでも体重は2年で平均7.5kg(約10%)減り、減った分の71%は脂肪でした。LDL コレステロール、総コレステロールと HDL の比、血圧、CRP(体の中の炎症の目印)、インスリンの効きやすさ、メタボリックシンドロームの点数が、ふだんどおりの群より良くなっています。一方で、脂肪以外の体重(筋肉などを含む)も約2.2kg 減りました。
同じ試験の血液を後から調べた研究(197人を分析)では、DunedinPACE(老化の速さを推定する計算式)が、制限の群で2〜3%遅くなっていました。ところが、別の計算式である PhenoAge と GrimAge では差が出ていません。著者らは、効果が小さいこと、参加者が健康で比較的若く7割が女性だったこと、試験の終わりで追跡も終わったため病気や死亡への影響は分からないことを限界として挙げています。DunedinPACE の開発者2人が著者に入っており、この計算式は企業に使用が許諾されていることも明記されています。
本人の「推奨量の10%減」は、CALERIE で実際に達した減り方(11.9%)に近い量です。ただし、昼ごろに食事を終えるといった本人の食べ方の組み合わせそのものを調べた試験ではありません。
睡眠と運動は、どこまで分かっているのか
睡眠時間と死亡の関係は、16の研究(27の集団)、約138万人、死亡11万2,566人を4〜25年追った記録をまとめた分析があります。多くの研究で7時間を基準にした時、短い睡眠(多くは7時間未満、5時間以下の研究も多い)では死亡の危険が1.12倍、長い睡眠(多くは8〜9時間超)では1.30倍でした。これは観察研究なので、睡眠時間が原因なのか、病気などの別の理由で睡眠が変わっているのかは分けられていません。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、成人は6時間以上の睡眠時間を確保することを目安にしています。
運動では、WHO の2020年の指針が、18〜64歳に週150〜300分の中くらいの強さの有酸素運動、または週75〜150分の強い運動と、週2日以上の筋力トレーニング、座っている時間を減らすことを勧めています。WHO は、運動が足りない人は足りている人に比べて死亡の危険が20〜30%高いとしています。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の成人向けの目安は、歩くこと以上の活動を1日60分以上(約8,000歩)、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日です。
本人の週6時間(中くらいの強さ150分+強い運動75分+筋力トレーニング3回)は、こうした目安を大きく上回る量です。目安の量でも健康との関連は報告されているため、本人と同じ量でなければ意味がない、というわけではありません。
NR・NMN は、人で何が分かっているのか
NR(ニコチンアミドリボシド)と NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、どちらも NAD+(細胞の中でエネルギーの受け渡しに使われる補酵素)の材料になる物質で、本人は朝にどちらかを飲むと書いています。
NR では、健康な55〜79歳の30人(最後まで続けたのは24人)が、1日1,000mg と偽の薬を6週間ずつ入れ替えて飲んだ試験があります。血液の細胞の NAD+ は偽の薬より約60%多くなりました。血圧と動脈の硬さは下がる傾向でしたが、統計的にははっきりせず、体の組成や運動の能力などは変わっていません。この試験は NR を作る会社が一部の費用と試験品を出しています。
NMN では、ワシントン大学が、閉経後で血糖がやや高い(糖尿病の手前)25人の女性に、1日250mg(13人)か偽の薬(12人)を10週間飲んでもらった試験を発表しています。NMN の群では筋肉でのインスリンの効きやすさが良くなりましたが、血糖・血圧・血液の脂質・肝臓のインスリンの効きやすさ・肝臓の脂肪・炎症の目印は変わりませんでした。研究の責任者は「この結果から臨床的な勧めをするのは早すぎる」と述べています。
どちらも人数が少なく期間も短い試験で、老化の速さや寿命を調べたものではありません。
ラパマイシンは、なぜ本人がやめたのか
ラパマイシン(一般名シロリムス)は、mTOR(細胞の成長や栄養の感知にかかわるたんぱく質)の働きを抑える薬です。老化の研究で注目されたきっかけの一つが、2009年の Nature の論文です。遺伝的に多様なマウスに、生後600日(著者らは人の60歳ごろに当たるとしています)から餌に混ぜて与えたところ、3つの研究施設で寿命が長くなり、9割が死んだ時点の年齢で比べると、メスで14%、オスで9%長くなりました。これはマウスの結果で、人で同じとは限りません。
人では、健康な50〜85歳を対象にした PEARL 試験の結果が2025年に出ています。125人が参加し、114人を分析しました。週1回5mg、週1回10mg、偽の薬の3群で48週間です(使ったのは調剤した薬で、後から血液中の濃度が市販品の約3分の1だったと分かりました)。主な評価項目だった内臓脂肪は、どの群も変わりませんでした。10mg の女性で脂肪以外の体重と痛みの自己評価が、5mg の群で健康感などの自己評価が良くなった一方、著者らは効果の結果は予備的で、より大きな試験が要るとしています。副作用の起こり方は群の間で同程度でした。資金は主にクラウドファンディングと個人の寄付で、著者7人は全員が、試験の事務を支えた会社 AgelessRx の社員・株主です。
本人は2024年11月14日の X の投稿で、約5年続けたラパマイシンを9月28日にやめたと公表しました。週5mg・6mg・10mg、2週に13mg、6mg と13mg を週ごとに交互、と量や間隔を変えて試したものの、皮膚や皮下の組織の感染、血液の脂質の異常、血糖の上昇、安静時の心拍数の上昇が続き、量を変えても治まらなかったこと、一生飲み続ける利益がこれらに見合わないと判断したことを理由に挙げています。また、10月27日付のプレプリント(専門家の審査を経る前の論文)で、ラパマイシンが16のエピジェネティッククロックで人の老化を速めたと示されたことにも触れています。このプレプリントそのものは、この記事では特定して中身を確かめることができませんでした。
若い人の血漿には、どんな結果が出ているのか
血漿は、血液から赤血球などを除いた液体の部分です。本人は2023年7月5日の X の投稿で、若い人の血漿を1回1リットル、月1回のペースで6回入れ(そのうち1回は息子の血漿)、体液・機器・画像で測った指標で利益が見られなかったため中止すると公表しました。生物学的に年をとった人や特定の状態の人には役立つ可能性がある、とも書いています。
米国 FDA は2019年2月19日、若いドナーの血漿を老化や記憶の衰えのために入れることについて、臨床的な利益は証明されていないと注意を出しています。感染症がうつる危険が残ること、アナフィラキシーを含むアレルギー、輸血の後の急な肺の障害、体に液が入りすぎることによるむくみや息苦しさを危険として挙げ、承認されていない目的での使用は臨床試験の枠組みの中で行うべきだとしています。
これとは別に、自分の血漿を取り除いてアルブミン(血液の中の主なたんぱく質)などで置き換える「治療的血漿交換」を調べた試験もあります。2025年の Aging Cell の論文では、主に50歳以上の44人を、2週ごとの血漿交換(免疫グロブリン=抗体の製剤を加える群と加えない群)、月1回の血漿交換、偽の処置に分けました。途中の時点では、いくつかのエピジェネティッククロックの値が偽の処置より下がりましたが、最後の時点ではどの群も偽の処置と比べて意味のある差がありませんでした。著者らは、探索的な試験で、結果は仮説をつくる段階のものだとしています。体の働きや認知の機能などは主な評価項目に入っておらず、著者には、手技を行った会社 Global Apheresis の関係者や、Circulate という会社の共同創業者らが含まれています。本人がこの方法を受けたかどうかは、この記事で確かめた資料には書かれていませんでした。
「生物学的年齢」や「老化の速さ」はどう測り、本人の数字はどこまで信じてよいのか
本人がよく示す数字は、エピジェネティッククロック(血液などの DNA に付く「メチル化」という印のパターンから、年齢や老化の速さを推定する計算式)によるものです。初期の代表例である2013年の Horvath の計算式は、51種類の組織・細胞の約8,000の試料から作られ、353か所の印を使います。検証用のデータでの誤差は3.6年でした。
本人が使う DunedinPACE は、ニュージーランドのダニーデンで1972〜73年に生まれた1,037人の集団で、26・32・38・45歳の時に測った19の臓器の指標から「老化の速さ」を求め、それを45歳の時の血液の DNA の印で推定できるようにした計算式です(2022年の eLife の論文)。1.0 が「暦の1年で体も1年分」の平均の速さで、この集団では0.40〜2.44の幅がありました。同じ試料を測り直した時の一致度は高い(0.96)と報告されています。一方で著者らは、1つの国の集団で作ったこと、分析した集団の多くがヨーロッパ系の白人だったこと、健康寿命の代わりの指標として使えるかはこれから示す必要があることを限界に挙げています。
本人は、検査会社 TruDiagnostic の検査を使う「Rejuvenation Olympics」の DunedinPACE の順位表で、0.50 として一番上に載っています。計算上は「暦の1年で体が半年分だけ年をとる速さ」に当たる推定値です。ただし、この検査会社の利用規約は、サービスを研究・情報・教育のためのものとしています。
この種の数字を読む時に知っておきたい点が3つあります。1つ目は測り直しのぶれです。主な6つのエピジェネティッククロックでは、同じ人の同じ試料を測り直しても、技術的なぶれで3〜9年の差が出ることがあると報告されています(ぶれを抑える計算の工夫で、多くの場合0〜1.5年に収まったという改良も報告されています)。2つ目は、計算式どうしで答えが合わないことです。CALERIE の分析では、DunedinPACE は変わったのに PhenoAge と GrimAge は変わりませんでした。3つ目は、これらの値が下がった人が実際に病気が少なく長生きするかは、介入の試験ではまだ確かめられていないことです。こうした検査は傾向を見るためのもので、診断ではありません。
日本で同じことをするなら、何ができて何が難しいのか
この記事では医療行為の案内はしません。日本の制度と照らすと、取り組みは次のように分かれます。
| 取り組み | 日本での扱い(2026年11月6日時点) | 根拠 |
|---|---|---|
| 食事・睡眠・運動 | 誰でも取り入れられる。国の目安は、睡眠6時間以上、歩くこと以上の活動を1日60分以上、息が弾む運動を週60分以上、筋力トレーニングを週2〜3日 | 厚生労働省の睡眠ガイド2023・身体活動・運動ガイド2023 |
| サプリ(NR・NMN・クレアチンなど) | いわゆる「健康食品」には法律上の定義がなく、医薬品とは別の扱い。病気などで体に不安がある人は、とる前に医療機関に相談するよう国が呼びかけている | 厚生労働省「いわゆる『健康食品』のホームページ」 |
| 処方薬(メトホルミン・シロリムスなど) | 医師の診察と処方のもとで使う薬(本人のページでも Rx=処方薬と表示)。シロリムスは「ラパリムス」としてリンパ脈管筋腫症などの病気の薬として承認されている | PMDA の医療用医薬品の情報、厚生労働省 |
| 海外の薬を個人輸入すること | 国内の品質・有効性・安全性の確認を経ていない。健康被害が出ても医薬品副作用被害救済制度の対象外。人に売る・渡すと法律違反のおそれ | 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」 |
| 若い人の血漿 | 老化への臨床的な利益は証明されていない(米国 FDA の注意) | FDA(2019) |
| 老化の速さの検査 | 海外の検査会社は、研究・情報・教育のためのサービスと規約に書いている。診断ではない | Rejuvenation Olympics の利用規約の表示 |
出典: 厚生労働省(睡眠対策・身体活動・健康食品・個人輸入の各ページ)、PMDA(シロリムスの医療用医薬品の一覧)、FDA、Rejuvenation Olympics(いずれも2026年11月6日に確認)
厚生労働省は、海外の医薬品を個人で輸入して使うことについて、ふつうは利益より危険のほうが大きい場合が多いとしています。本人のページに並ぶ処方薬は、本人のページでも処方薬(Rx)と表示されている物で、日本でも医師の判断のもとで使う薬です。
2026年に本人が公表した病気は何か
本人は2026年6月30日(米国時間)、X で自己免疫性胃炎(免疫が胃の壁の細胞を攻撃してしまう病気)と診断されたと公表しました。投稿によると、見つかったのは同じ年の5月です。11年間、体に蓄えた鉄の目安であるフェリチンが低いままで、貧血は無く、食事やサプリで鉄を足しても上がらなかったと書いています。上と下の内視鏡を同時に受けて胃の3か所から5つの組織を採り、検査の直前に出た血液検査では、胃の壁の細胞に対する抗体が基準の上限の約5倍(上限20 U/mL に対して103)だったとしています。鉄は点滴(1,000mg)で補ったと書いています。
本人は、子どもの頃の食事や、仕事の重圧で体重が増えうつになった時期のどこかで、自己免疫の過程が始まったのではないかと書いています。これは本人の見立てで、確かめられた原因ではありません。1人の病気は、この記事で見てきた取り組みの効き目を良いとも悪いとも示しません。一方で、たくさんの指標を測り続けていても何年も見過ごされる病気があったことを、本人自身が書いています。
まだ分かっていないこと
- 本人の記録は1人の結果で、比べる相手がなく、多くの取り組みを同時に変えています。どの取り組みがどの数字に関係したのかは分けられません。
- エピジェネティッククロックの値が下がることが、病気の少なさや寿命の長さにつながるかは、介入の試験では確かめられていません。
- カロリー制限の人の試験は2年間で、対象は健康で肥満でない21〜50歳でした。もっと長い期間や高齢の人での病気・死亡への影響は分かっていません。
- ラパマイシンの人での長期の効果と安全性は分かっていません。PEARL 試験は48週・114人で、本人が理由に挙げたプレプリントは審査前の論文です。
- 治療的血漿交換の試験は小さく探索的で、最後の時点では差がありませんでした。体の働きなどの結果は調べられていません。
- NR・NMN の人の試験は短期・少人数で、老化の速さや寿命は調べていません。
- 本人の手順のページは「過去の」手順と断っており、今の手順の全体と費用の内訳は公表されていません。
注意
この記事は本人の公表と研究の紹介で、医療の助言ではありません。持病がある人、薬を飲んでいる人、妊娠中・授乳中の人は、食事の量を大きく変える前、断食やサプリを始める前に医師に相談してください。処方薬を自分の判断で使ったり、個人輸入した薬を使ったりしないでください。老化の速さなどの検査の値は傾向を見るためのもので、診断の代わりにはなりません。
出典
- Bryan Johnson 公式サイト(Bryan Johnson・2026年11月確認)
- About(Bryan Johnson 公式サイト・2026年11月確認)
- Blueprint Protocol(Blueprint・2026)
- Don't Die(Don't Die・2026年11月確認)
- 若い人の血漿の中止についての投稿(Bryan Johnson の X・2023)
- ラパマイシンの中止についての投稿(Bryan Johnson の X・2024)
- 自己免疫性胃炎の公表の投稿(Bryan Johnson の X・2026)
- eBay Inc. to Acquire Global Payments Innovator Braintree(eBay Inc.・2013)
- Who is Bryan Johnson? Don't Die: The Man Who Wants to Live Forever(Netflix Tudum・2025)
- DON'T DIE: "永遠に生きる"を極めし男(Netflix・2025)
- Two years of calorie restriction and cardiometabolic risk factors(Lancet Diabetes Endocrinol・2019)
- Effect of long-term caloric restriction on DNA methylation measures of biological aging in healthy adults from the CALERIE trial(Nature Aging・2023)
- Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis(Sleep・2010)
- World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour(Br J Sports Med・2020)
- Physical activity(WHO・2026)
- 睡眠対策(厚生労働省・2024)
- 良い睡眠のために 成人のための Good Sleep ガイド(厚生労働省・2024)
- 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版(厚生労働省)
- Chronic nicotinamide riboside supplementation is well-tolerated and elevates NAD+ in healthy middle-aged and older adults(Nature Communications・2018)
- NMN の人の試験の発表(Washington University School of Medicine・2021)
- Rapamycin fed late in life extends lifespan in genetically heterogeneous mice(Nature・2009)
- Influence of rapamycin on safety and healthspan metrics after one year: PEARL trial results(Aging・2025)
- Important Information about Young Donor Plasma Infusions for Profit(FDA・2019)
- Multi-omics analysis reveals biomarkers that contribute to biological age rejuvenation in response to therapeutic plasma exchange(Aging Cell・2025)
- DNA methylation age of human tissues and cell types(Genome Biology・2013)
- DunedinPACE, a DNA methylation biomarker of the pace of aging(eLife・2022)
- A computational solution for bolstering reliability of epigenetic clocks(bioRxiv・2021、のちに Nature Aging 2022 に掲載)
- Rejuvenation Olympics 順位表(Rejuvenation Olympics・2026年11月確認)
- シロリムス(ラパリムス)の医療用医薬品の情報(PMDA・2026)
- 医薬品等を海外から購入しようとされる方へ(厚生労働省)
- いわゆる「健康食品」のホームページ(厚生労働省)
よくある質問
ブライアン・ジョンソンは何をした人ですか?
米国の起業家で、本人の公式サイトはオンライン決済の Braintree、Kernel、OS Fund の創業を挙げています。Braintree は2013年に eBay が約8億ドルの現金で買収すると発表しました。その後、自分の体で老化の速さを遅くしようとする計画「Blueprint」を続けて手順を公開し、2025年1月1日には本人を追った Netflix のドキュメンタリー映画が配信されました。
年間いくら使っていると本人は言っていますか?
本人の公式サイトに、本人が年間の総額や内訳を書いた箇所は見つかりませんでした(2026年11月6日に確認)。よく紹介される「年200万ドル」は Bloomberg の記事の見出しの数字で、本人の紹介ページがその記事を掲載記事として載せています。本人のサイトのトップページにあるのは「2年間と数百万ドルをかけて手順を作った」という趣旨の文です。
ブライアン・ジョンソンの方法で老化は遅くなるのですか?
食べる量を少し抑えること、睡眠、運動には人の試験や大規模な研究の裏づけがあります。ただし、手順の全体が老化を遅くするかは本人1人の記録で、比べる相手がなく、確かめられていません。ラパマイシンは動物での結果が中心で、若い人の血漿は人で効果が証明されておらず、本人もこの2つを中止したと公表しています。
「老化の速さ0.50」とはどういう意味ですか?
DunedinPACE という、血液の DNA の印から老化の速さを推定する計算式の値です。1.0 が「暦の1年で体も1年分」の平均で、0.50 はその半分の速さに当たる推定値です。ただし、エピジェネティッククロックは測り直しで値がぶれることが報告されており、値が低い人が実際に長生きするかは確かめられていません。傾向を見る検査で、診断ではありません。
日本で同じサプリや薬を使えますか?
食事・睡眠・運動は誰でも取り入れられ、サプリは日本では医薬品とは別の「健康食品」の扱いです。本人のページに並ぶ処方薬は、医師の診察と処方のもとで使う薬です。厚生労働省は、海外の医薬品の個人輸入はふつう利益より危険のほうが大きい場合が多く、健康被害が出ても救済制度の対象外だとしています。持病がある人や薬を飲んでいる人は、始める前に医師に相談してください。