16時間断食の研究:寿命と健康について分かっていること
16時間断食(8時間の間に食べる時間制限食)は、人の試験で何もしない人より体重が減った報告がある一方、同じだけカロリーを減らした食事との差ははっきりしません。人の寿命への影響は確かめられておらず、心血管死との関連を示した観察研究もあります。
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結論
16時間断食は、1日の食事を8時間の間に収め、残りの16時間は食べない「時間制限食」です。人のランダム化比較試験では、何もしない人と比べて半年から1年で体重が約3.5〜5%減ったという報告がある一方、同じだけカロリーを減らした食事と比べると、体重・血糖・血圧の差ははっきりしませんでした。マウスでは寿命が長くなった報告がありますが、人で寿命や死亡を確かめた試験はまだありません。米国の調査を使った観察研究では、食べる時間が8時間未満の人で心臓や血管の病気による死亡が多いという関連が報告されましたが、原因かどうかは分かっていません。持病がある人・薬を飲んでいる人・妊娠中の人は、始める前に医師に相談してください。
この記事の基準日: 2026年11月6日。16時間断食(16:8の時間制限食)を調べた人のランダム化比較試験5本(JAMA Internal Medicine・NEJM・Annals of Internal Medicine・JAMA Network Open)、99本の試験をまとめた BMJ の解析、米国心臓協会(AHA)の発表とその後の論文、マウスの寿命の研究2本の本文または要旨を開いて読み、書いています。医師の監修は受けていません。
16時間断食とはどんな食べ方か(時間制限食・16:8)
16時間断食は、1日のうち食べてよい時間を8時間に決め、残りの16時間は食べ物を口にしない食べ方です。研究の世界では「時間制限食(time-restricted eating、TRE。食べる量ではなく、食べる時間の長さを決める食事法)」と呼ばれ、食べない16時間と食べる8時間の比から「16:8」とも書かれます。
時間制限食は「間欠的断食(食べない時間を周期的につくる食事法の総称)」の一つです。BMJ に2025年に載った解析では、間欠的断食を、時間制限食・1日おきに食べる量を大きく減らす「隔日断食」・丸1日食べない日をつくる方法の3つに分け、毎日の食事量を一定の割合で減らす「継続的カロリー制限」や、好きなだけ食べる食事と比べています。
人の試験で使われた16:8は、大きく2つの形でした。1つは、昼12時から夜8時までに食べ、夜8時から翌日の昼12時までは水やカロリーのない飲み物だけにする形です(TREAT 試験、Lin らの試験、Pavlou らの試験)。もう1つは、朝8時から夕方4時、朝7時から午後3時のように朝に寄せた形です(Liu らの試験、Jamshed らの試験)。
大事なのは、多くの試験が「何を・どれだけ食べるか」を決めていない点です。TREAT 試験では、食べる時間の中は量も中身も自由で、カロリーや栄養の目標も運動の指示もありませんでした。このため体重が減ったとしても、それが「食べる時間を縮めたこと」によるのか、「結果として食べる量が減ったこと」によるのかを分けて考える必要があります。次の節からは、この点を試験ごとに確かめます。
人のランダム化比較試験で何が分かったのか
ランダム化比較試験(参加者をくじで2つ以上の群に分け、方法の違いだけを比べる試験。原因と結果の関係を確かめやすい)のうち、16:8の形を使った主な5本を表にまとめました。表の BMI は体重(kg)を身長(m)の2乗で割った体格の指数です。「統計的な差なし」は、偶然の範囲を超える差が確かめられなかったという意味で、本文の P 値(差が偶然で生じる確からしさの目安。小さいほど偶然では説明しにくい)が0.05未満かどうかで判断されています。
| 試験(発表年・雑誌) | 対象 | 人数 | 期間 | 食べる時間 | 比べた相手 | 体重の結果 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| TREAT 試験(2020・JAMA Internal Medicine) | 米国の過体重・肥満の成人(BMI 27〜43、平均46.5歳) | 116 | 12週 | 12時〜20時(量は自由) | 1日3食を決まった時間に食べる群 | 16:8群 −0.94kg、相手 −0.68kg。差 −0.26kg は統計的な差なし |
| Liu らの試験(2022・NEJM) | 中国・広州の肥満の成人 | 139 | 12か月 | 8時〜16時+カロリー制限 | カロリー制限だけの群 | −8.0kg と −6.3kg。差 −1.8kg は統計的な差なし |
| Lin らの試験(2023・Annals of Internal Medicine) | 米国シカゴの肥満の成人(平均40歳) | 90 | 12か月 | 12時〜20時(カロリーは数えない) | 25%のカロリー制限の群・何もしない群 | 何もしない群より −4.61kg。カロリー制限の群(−5.42kg)との差は統計的な差なし |
| Pavlou らの試験(2023・JAMA Network Open) | 米国の2型糖尿病と肥満の成人(平均55歳) | 75 | 6か月 | 12時〜20時(カロリーは数えない) | 25%のカロリー制限の群・何もしない群 | 何もしない群より −3.56%。カロリー制限の群は −1.78%で、何もしない群との差は統計的な差なし |
| Jamshed らの試験(2022・JAMA Internal Medicine) | 米国の肥満の成人(25〜75歳、8割が女性) | 90 | 14週 | 7時〜15時+カロリー制限 | 12時間以上の間に食べる群+カロリー制限 | 朝寄り16:8の群が 2.3kg 多く減った |
出典: Lowe ら 2020(JAMA Internal Medicine)、Liu ら 2022(NEJM)、Lin ら 2023(Annals of Internal Medicine)、Pavlou ら 2023(JAMA Network Open)、Jamshed ら 2022(JAMA Internal Medicine)。人数は割り付けた人数(TREAT は解析に入った人数)。2026年11月5日に本文または要旨で確かめた。
TREAT 試験(2020年)は、141人をくじで分け、116人を解析しました。16:8の群は昼12時から夜8時まで好きなだけ食べ、それ以外の時間は水やブラックコーヒーなどカロリーのない飲み物だけ(論文は「カロリーのない飲み物」、試験の登録は「水とブラックコーヒー」と記載)としました。比べた相手は、1日3食を決まった時間帯に食べ、間食もしてよい群です。12週後、16:8の群は平均0.94kg(体重の1.17%)減りましたが、相手の群も0.68kg減り、群の差は0.26kgで統計的な差はありませんでした。著者は「時間制限食だけでは、1日を通して食べるより体重が減るとは言えない」とまとめています。なお、この論文には後から2回の訂正が出ており、数字は2026年11月5日に掲載されていた版で確かめています。
Liu らの試験(2022年・NEJM)は、中国・広州の南方医院(南方医科大学)のチームが、肥満の成人139人を12か月追った試験です。両方の群が同じカロリー制限(男性は1日1,500〜1,800kcal、女性は1日1,200〜1,500kcal)を行い、一方の群だけ食べる時間を朝8時から夕方4時に限りました。12か月を終えたのは118人(84.9%)で、体重の減りは時間制限+カロリー制限の群が8.0kg、カロリー制限だけの群が6.3kgでした。差の1.8kgは統計的な差がなく(P=0.11)、腹囲・体脂肪・除脂肪量(体重から脂肪を除いた量で、筋肉や骨・水分を含む)・血圧・代謝の指標も同じ傾向でした。困った出来事(有害事象)の数にも大きな差はありませんでした。つまり、カロリーを同じだけ減らすなら、食べる時間を8時間に縮めても上乗せの効果は確かめられませんでした。
Lin らの試験(2023年)は、米国イリノイ大学シカゴ校で肥満の成人90人を3つの群に分け、12か月追いました。参加者は平均40歳で、33%が黒人、46%がヒスパニックと、人種の幅が広いのが特徴です。時間制限食の群は昼12時から夜8時に食べ、カロリーは数えません(後半の6か月は10時から20時に広げました)。1日に減ったエネルギーは、時間制限食の群が平均425kcal、25%のカロリー制限の群が平均405kcalで、群の差はありませんでした。12か月後、何もしない群と比べて時間制限食の群は4.61kg、カロリー制限の群は5.42kg体重が減り、2つの方法の差(0.81kg)は統計的な差がありませんでした(P=0.68)。
Pavlou らの試験(2023年)は、同じイリノイ大学シカゴ校で、2型糖尿病と肥満がある成人75人を6か月追いました。参加者は平均55歳、BMI は平均39、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する値)は平均8.1%でした。時間制限食の群は昼12時から夜8時に食べ、守れた日は週に平均6.1日でした。6か月後、何もしない群と比べて時間制限食の群は体重が3.56%減り、カロリー制限の群(−1.78%)は統計的な差に届きませんでした。HbA1c は、時間制限食の群が0.91ポイント、カロリー制限の群が0.94ポイント、何もしない群より下がり、2つの方法の間に差はありませんでした。重い有害事象はなく、低血糖・高血糖の起きた割合も群の間で差はありませんでした。ただし、この試験では血糖を下げる薬を研究の決まりに沿って減らす・止める調整をしています(下の「誰に向かない可能性があるか」で説明します)。
Jamshed らの試験(2022年)は、肥満の成人90人の全員に、安静時の消費エネルギーより1日500kcal少なく食べるよう指導したうえで、朝7時から午後3時の8時間に食べる群と、12時間以上の間に食べる群を比べました。14週後、朝寄りの時間制限の群は体重が2.3kg多く減りました(P=0.002)。一方、体脂肪の減りの差(1.4kg)は統計的な差がありませんでした。5本の中で、同じカロリー制限に「時間」を足して体重の差が出たのはこの試験だけです。
体重が減るのは「食べる時間」のおかげか、「食べる量」のおかげか
5本の試験を並べると、次のように整理できます。カロリーを数えずに食べる時間だけを縮めると、何もしない人と比べて体重は減りました(Lin らの試験、Pavlou らの試験)。ただしその群では、1日に食べるエネルギーも平均313〜425kcal減っていました。そして、同じだけカロリーを減らした食事と比べると、体重の差ははっきりしませんでした(Liu らの試験、Lin らの試験)。
この見方は、多くの試験をまとめた解析とも合っています。2025年に BMJ に載ったネットワークメタ解析(多くの試験の結果を、直接比べていない方法どうしも含めて統計的にまとめる方法)は、99本のランダム化比較試験・成人6,582人を対象にしています。時間制限食を含むどの間欠的断食も、継続的カロリー制限も、好きなだけ食べる食事より体重を減らしました。継続的カロリー制限より体重が減ったのは隔日断食だけ(1.29kg)で、隔日断食と時間制限食の差(1.69kg)も、著者は「ごく小さい」と評価しています。さらに、24週以上続いた試験(17本)に限ると、体重の利点が見られたのは食事法と好きなだけ食べる食事との比較だけで、方法どうしの差は見られませんでした。著者は、間欠的断食は体重と心臓・代謝の危険因子について継続的カロリー制限と同じ程度の利点があるようだとし、より長い試験が必要だと述べています。
まとめると、人の試験の結果からは、16時間断食は「カロリーを数えなくても、食べる量を減らしやすくする一つのやり方」と見るのが近く、時間を縮めること自体に特別な上乗せがあるかは、朝寄りの形を使った1本の試験を除いて確かめられていません。
血糖・血圧・コレステロールはどう変わったか
体重以外の値について、各試験で報告された結果を表にしました。拡張期血圧は、血圧の下の値(心臓が広がって血液をためている時の圧)のことです。
| 試験 | 血糖・HbA1c | 血圧 | コレステロールなどの脂質 |
|---|---|---|---|
| TREAT 試験(12週) | 空腹時の血糖・インスリン・HbA1c とも、群の中でも群の間でも有意な変化なし | 16:8の群の中で拡張期血圧が4.08mmHg下がったが、群の間の差はなし | 有意な変化なし |
| Liu らの試験(12か月) | 代謝の指標は体重と同じく、群の間に差なし | 群の間に差なし | 群の間に差なし |
| Lin らの試験(12か月) | 空腹時の血糖・インスリン・HbA1c は何もしない群と差なし。インスリンの効きやすさの指標は時間制限食の群でやや良かった(記述的な結果) | 収縮期・拡張期とも差なし | LDL コレステロールに差なし |
| Pavlou らの試験(6か月) | HbA1c が何もしない群より0.91ポイント低下(カロリー制限の群と同じ程度) | 群の間に差なし | 群の間に差なし |
| Jamshed らの試験(14週) | 血糖・インスリンは群の間で同じ程度 | 拡張期血圧が4mmHg多く低下。収縮期血圧の差(−4mmHg)は統計的な差なし | 群の間で同じ程度 |
出典: 上の表と同じ5本の論文(2026年11月5日に本文または要旨で確かめた)。
BMJ の解析(99試験)でも、HbA1c と HDL コレステロール(いわゆる善玉コレステロール)については、間欠的断食・継続的カロリー制限・好きなだけ食べる食事の間に差が見られませんでした。脂質では、隔日断食のほうが時間制限食より総コレステロール・中性脂肪などが下がり、時間制限食は丸1日食べない方法と比べて LDL コレステロールなどがわずかに高くなったと報告されています(要旨による)。
全体として、16時間断食で血糖や血圧がはっきり良くなったと言える結果は、体重が減った試験か、2型糖尿病の人を対象にした試験(Pavlou らの試験)に限られ、その場合もカロリー制限と同じ程度でした。
筋肉が減る心配はあるか
体重を減らすと、脂肪だけでなく筋肉など脂肪以外の部分も減ります。TREAT 試験では、体の組成を詳しく測った50人の中で、16:8の群は体重が1.70kg減り、そのうち除脂肪量が1.10kg(減った体重の約65%)を占めていました。著者は、普通は減った体重のうち除脂肪量は20〜30%程度だと述べています。さらに、腕と脚の除脂肪量は、16:8の群のほうが相手の群より0.47kg多く減りました(P=0.009)。
著者は、サルコペニア(年齢などで筋肉の量と力が落ちる状態)になりやすい人では、時間制限食が筋肉の減りを悪くするおそれがあると注意しています。原因の候補として、食べる時間が短くなってたんぱく質を摂る量が減った可能性を挙げていますが、この試験ではたんぱく質の量を測っていません。また、体の組成を測る X 線の方法(DXA)は筋肉の中の水分の変化を区別できない、という限界も書かれています。
一方で、12か月続けた Lin らの試験では、時間制限食の群の除脂肪量の減りは0.41kgで、何もしない群と比べた差(0.81kg)は統計的な差がなく、Liu らの試験でも除脂肪量は群の間で差がありませんでした。筋肉への影響は試験によって結果が分かれており、特に高齢の人では確かめられていません。
「心血管死が91%多い」という2024年の発表は何を示したのか
2024年3月18日、米国心臓協会(AHA)は、シカゴで開いた学会(Epidemiology and Prevention|Lifestyle and Cardiometabolic Health Scientific Sessions 2024、演題 P192)での発表を「8時間の時間制限食が心血管死の91%高いリスクと関連」という見出しで知らせました。研究を率いたのは上海交通大学医学院の Victor Wenze Zhong 氏です。
使われたのは NHANES(米国の国民健康栄養調査)の2003〜2018年の回答で、約2万人(平均49歳、男女ほぼ半々)を、米国の死亡記録と2019年12月までつなぎ合わせました。追った期間は中央値で8年、長い人で17年です。食べる時間の長さは、参加の初年に2回行った「前日24時間に何を食べたか」の聞き取りから分けました。
発表では、1日の食事を8時間未満に収めていた人は、12〜16時間の間に食べていた人と比べて、心臓や血管の病気による死亡のリスクが91%高かったとされました。もともと心臓や血管の病気がある人では、8時間以上10時間未満の人で、心臓病や脳卒中による死亡が66%高かったとも報告されています。一方で、食べる時間を短くすることと、あらゆる原因の死亡が減ることとの関連は見られませんでした。
この発表には、はっきりした限界があります。AHA の発表文自体が、食事の記録は本人の記憶による自己申告であること、食べる時間と死因以外の健康に関わる要因を入れていないことを限界に挙げています。発表の時点では、査読(専門家による論文の審査)を受けていない予備的な結果でした。発表文の中で、スタンフォード大学の Christopher D. Gardner 氏は、食事の中身(栄養の質)の違いが別の説明になりうること、食べる時間の分け方がわずか2日分の食事に基づいていることを指摘しています。発表者の Zhong 氏も、この関連は時間制限食が心血管死の原因だという意味ではないと述べています。
この研究は、2025年に論文として Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviews 誌に載りました。論文では19,831人を対象に、食べる時間を8時間未満・8〜10時間未満・10〜12時間未満・12〜14時間(基準)・14〜16時間・16時間超の6つに分け、追った期間は中央値8.1年でした。8時間未満の人の心血管死のハザード比(ある期間に出来事が起きる割合を基準の群と比べた比。1より大きいと多い)は2.35(95%信頼区間〔本当の値がおよそこの範囲にあると考えられる幅〕は1.39〜3.98)でした。学会発表の「91%」と数字が違う点について、論文では比べる基準の群が「12〜16時間」から「12〜14時間」に変わっており、対象の人数も少し違います。あらゆる原因の死亡とがんによる死亡については、はっきりした関連は見られませんでした。著者は、この危険が食べる時間の短さそのものによるのか、それに伴う別の要因(残った交絡)によるのかを確かめる研究が必要だと書いています。
読み方として大事なのは、これが観察研究(方法を割り付けず、人々の生活とその後の健康を見比べる研究)だという点です。「8時間未満」の人は、聞き取りをした2日に食べる時間が短かった人で、16時間断食を何年も意図して続けていた人とは限りません。逆に、上で見たランダム化比較試験は長くても12か月で、死亡を調べられる長さも人数もありません。つまり今の時点では、「16時間断食で心血管死が増える」とも「長く続けても心臓や血管に問題がない」とも言えません。心臓や血管の病気がある人は、主治医に相談してから考えるのが妥当です。
動物の研究では寿命はどうなったか、人とは何が違うのか
「16時間断食で長生きできるのか」という問いの根拠としてよく挙がるのは動物の研究です。代表的な2本を見ます。
Mitchell らの研究(2019年・Cell Metabolism)は、オスのマウス292匹を、いつでも好きなだけ食べる群、30%のカロリー制限の群、1日1回だけ食事を出す群(カロリーは好きなだけ食べる群とほぼ同じ)に分け、2種類の餌で比べました。1日1回の群は餌を早く食べ終え、毎日長い時間食べない状態になりました。平均寿命は、好きなだけ食べる群と比べて、1日1回の群で約11〜14%、カロリー制限の群で約28%長く、餌の中身による差はありませんでした。つまりマウスでは、カロリーを減らさなくても毎日の長い絶食で寿命が長くなったことになります。ただし著者自身が、オスだけの結果であること、絶食の長さの影響は厳密には調べていないこと、人はもともと夜に8〜12時間ほど食べずに過ごしていること、カロリー制限の群でアミロイドーシス(異常なたんぱく質が臓器にたまる病気)が多かったことを挙げ、人の健康寿命に当てはめるには注意が要るとしています。
Acosta-Rodríguez らの研究(2022年・Science)は、米国テキサス大学サウスウェスタン医療センターのチームが、自動で餌を出す装置を使ってマウスを4年間追った研究です。好きなだけ食べる群の寿命の中央値は約800日でした。カロリー制限をして1日中いつでも食べられる群は875日(約10%長い)、同じカロリー制限で餌を休む時間帯(昼)に出した群は約959日(約20%長い)、活動する時間帯(夜)に出した群は約1,068日(約35%長い)でした。この差は体重とは関係なく見られました。カロリー制限をしたマウスは、自分で2時間で食べ終え22時間食べない、というリズムになっていたとも書かれています。大学の発表で示された時間を合わせた群は、どれもカロリー制限と組み合わせたもので、カロリーを減らさずに時間だけを限った群の結果は示されていません。研究者は「この結果が人でも成り立つなら」と条件を付けて話しており、人で確かめたものではありません。
人との違いをまとめます。動物の結果は人で同じとは限りません。第一に、マウスの結果の多くはカロリー制限や1日1回の食事と組み合わさっており、人の16:8とは中身が違います。第二に、どちらもオスのマウスだけの結果です。第三に、マウスは夜に活動する動物で、食べる時間帯の意味が人と逆になります。第四に、人の試験は長くても12か月で、体重や血液の値を測ったもので、寿命は測っていません。
試験で使われたやり方(例)
ここに挙げるのは、勧める方法ではなく、上の試験で実際に使われた形です。試験の参加者は、次の節にある条件で選ばれた人たちでした。
| 試験 | 食べる時間 | 食べない時間に飲めたもの | 量の決まり | 守れた日(週あたり) |
|---|---|---|---|---|
| TREAT 試験 | 12時〜20時 | カロリーのない飲み物(試験の登録は水とブラックコーヒー) | 決まりなし(自由) | 確かめられなかった |
| Lin らの試験 | 12時〜20時(後半の6か月は10時〜20時) | 紅茶・コーヒー(何も入れない)、ダイエット炭酸飲料は1日2本まで | カロリーは数えない | 6.1日 |
| Pavlou らの試験 | 12時〜20時 | 水(勧められた)・カロリーのない飲み物 | カロリーは数えない | 6.1日 |
| Liu らの試験 | 8時〜16時 | 要旨では確かめられなかった | 男性は1日1,500〜1,800kcal、女性は1日1,200〜1,500kcal | 要旨では確かめられなかった |
| Jamshed らの試験 | 7時〜15時 | 確かめた本文の範囲では記載なし | 安静時の消費エネルギーより1日500kcal少なく | 6.0日 |
出典: 各試験の論文(2026年11月5日に本文または要旨で確かめた)。
TREAT 試験の著者は、昼12時から夜8時という時間を選んだ理由を、人と食事をすることの多い夕食より、朝食を抜くほうが続けやすいと考えたためと説明しています。また、どの試験でも参加者が毎日守れたわけではなく、守れた日は週に6日前後でした。Jamshed らの試験では、朝寄りの時間制限の群から2人が「食べる時間が守りにくい」という理由で途中でやめています。
誰に向かない可能性があるか
試験は、条件に合う人だけを選んで行われています。除かれた人たちについては、試験からは効果も安全性も分かりません。各試験の除外の条件は次のとおりでした。
- 妊娠中・授乳中の人、妊娠を考えている人(TREAT 試験・Lin らの試験・Pavlou らの試験で除外)。
- 糖尿病の人、血糖を下げる薬ややせ薬を使っている人(TREAT 試験・Lin らの試験で除外。Jamshed らの試験も糖尿病の人を除外)。
- 拒食症や過食症などの摂食障害にかかったことがある人(TREAT 試験・Pavlou らの試験で除外)。
- 高齢の人(TREAT 試験は64歳まで、Lin らの試験は65歳まで)。TREAT 試験では上で見たように筋肉の減りが目立ち、著者はサルコペニアになりやすい人への注意を書いています。
- 夜勤など勤務時間が不規則な人(TREAT 試験・Lin らの試験・Pavlou らの試験で除外)。
- がんにかかっている人、かかったことがある人(TREAT 試験で除外)。
- 子どもと10代(5本とも成人だけの試験です)。
2型糖尿病の人を対象にした Pavlou らの試験では、薬を飲んだまま自己判断で始めたのではありません。HbA1c が7.0%未満の人はスルホニル尿素薬(すい臓からインスリンを出させる飲み薬)を止め、短時間型のインスリンを半分に減らすなど、HbA1c の値に応じて研究の決まりで薬を調整し、血糖を連続して測っていました。著者も、こうした薬を使う人は薬の調整と定期的な確認が要ると書いています。また、上で見た観察研究では、もともと心臓や血管の病気がある人で、食べる時間が短いほど死亡が多いという関連が報告されています。
注意
糖尿病などの持病がある人、薬(特に血糖を下げる薬やインスリン)を使っている人、心臓や血管の病気がある人、妊娠中・授乳中の人、摂食障害にかかったことがある人、高齢の人、子どもや10代の人は、食事の時間を大きく変える前に医師に相談してください。めまい・ふらつき・強いだるさなどが出たときは、続けずに医療機関に相談してください。この記事は研究の紹介で、診断や治療の代わりにはなりません。
まだ分かっていないこと
- 人の寿命や死亡への影響。人のランダム化比較試験は長くても12か月で、寿命や死亡を調べたものはありません。死亡との関連を示したのは観察研究だけで、原因かどうかは分かっていません。
- 1年を超えて続けたときの効果と安全性。BMJ の解析の著者も、より長い試験が必要だとしています。24週以上の試験に限ると、方法どうしの体重の差は見られませんでした。
- カロリーと切り離した「時間」だけの効果。同じカロリー制限と比べた試験では、朝寄りの形を使った1本(Jamshed らの試験)を除き、上乗せの差は確かめられていません。
- どの時間帯がよいか。朝寄り(7時〜15時、8時〜16時)と昼から夜(12時〜20時)を、同じ試験の中で直接比べた結果は、今回確かめた試験の中にはありません。マウスでは食べる時間帯で寿命が変わりましたが、人で同じとは限りません。
- 筋肉への影響。TREAT 試験では除脂肪量の減りが目立ちましたが、12か月の試験2本では差がありませんでした。たんぱく質の量を測った試験での確認が必要です。
- 日本人・高齢の人での結果。今回確かめた試験は米国と中国で行われたもので、日本で行われた試験は含まれていません。65歳を超える人を除いた試験も多くあります。
- オートファジーとの関係。16時間断食はオートファジー(細胞が自分の中の古いたんぱく質などを分解して再利用するしくみ)と結び付けて紹介されることがあります。しかし今回確かめた人の試験5本で報告された結果は、体重・体の組成・血糖・血圧・脂質などで、オートファジーは測られていませんでした。
出典
- Effects of Time-Restricted Eating on Weight Loss and Other Metabolic Parameters in Women and Men With Overweight and Obesity: The TREAT Randomized Clinical Trial(JAMA Internal Medicine・2020)
- Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss(New England Journal of Medicine・2022、PubMed の記録)
- Time-Restricted Eating Without Calorie Counting for Weight Loss in a Racially Diverse Population: A Randomized Controlled Trial(Annals of Internal Medicine・2023)
- Effect of Time-Restricted Eating on Weight Loss in Adults With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial(JAMA Network Open・2023)
- Effectiveness of Early Time-Restricted Eating for Weight Loss, Fat Loss, and Cardiometabolic Health in Adults With Obesity: A Randomized Clinical Trial(JAMA Internal Medicine・2022)
- Intermittent fasting strategies and their effects on body weight and other cardiometabolic risk factors: systematic review and network meta-analysis of randomised clinical trials(BMJ・2025、PubMed の記録)
- 8-hour time-restricted eating linked to a 91% higher risk of cardiovascular death(米国心臓協会・2024)
- Association of eating duration less than 8 h with all-cause, cardiovascular, and cancer mortality(Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviews・2025、PubMed の記録)
- Daily Fasting Improves Health and Survival in Male Mice Independent of Diet Composition and Calories(Cell Metabolism・2019)
- Circadian alignment of early onset caloric restriction promotes longevity in male C57BL/6J mice(Science・2022)の大学の発表(テキサス大学サウスウェスタン医療センター・2022)
よくある質問
16時間断食で人の寿命は長くなりますか?
人で寿命や死亡を確かめたランダム化比較試験はありません。人の試験は長くても12か月で、体重や血液の値を測ったものです。マウスでは1日1回の食事やカロリー制限と時間の組み合わせで寿命が長くなった報告がありますが、人で同じとは限りません。
16時間断食とカロリー制限では、どちらが体重が減りますか?
同じだけカロリーを減らした食事と比べた試験では、多くの場合、体重の差ははっきりしませんでした(NEJM 2022年の中国の試験、Annals of Internal Medicine 2023年の米国の試験など)。99本の試験をまとめた2025年の BMJ の解析でも、時間制限食と継続的なカロリー制限の差は見られませんでした。朝7時から午後3時に食べる形を試した1本の試験だけ、2.3kg多く減ったと報告されています。
食べない16時間に飲んでよいものはありますか?
試験では、水・ブラックコーヒー・お茶など、カロリーのない飲み物が認められていました。Lin らの試験ではダイエット炭酸飲料を1日2本まで認めるなど、決まりは試験によって違います。
16時間断食は心血管死を増やすという研究は本当ですか?
米国の約2万人の調査では、食べる時間が8時間未満の人で心臓や血管の病気による死亡が多いという関連が報告されました(2024年の米国心臓協会の学会発表、2025年に論文)。ただし観察研究で、食べる時間は2日分の聞き取りから分けたものです。著者も原因かどうかは分からないとしています。
16時間断食を避けたほうがよい人はいますか?
試験では、妊娠中・授乳中の人、糖尿病の人や血糖を下げる薬を使う人、摂食障害にかかったことがある人、高齢の人、夜勤の人などが除かれていました。こうした人では効果も安全性も確かめられていません。持病がある人や薬を使っている人は、始める前に医師に相談してください。