血管年齢とは|測り方で変わる数字の正体と若返り説の検証
血管年齢は、CAVIやbaPWVなどの検査値を基準の人たちの年齢に当てはめて言い換えた目安で、測り方によって数字が変わります。何を測り、どの基準から年齢に直すのか、将来の病気との関連と「若返り」の試験を一次資料で確かめました。
公開 / 更新
結論
血管年齢は、CAVI(心臓足首血管指数)や baPWV(脈が腕から足首まで伝わる速さ)などの検査値を、基準にした人たちの年齢ごとの値と比べて「何歳に相当するか」に言い換えた目安です。血管そのものの年齢を測った数字ではなく、共通の定義もありません。測り方で結果は変わり、ドイツの心臓の病気の患者501人を調べた研究では、脈波の速さから出すと68%が実年齢より若く、頸動脈の壁の厚さから出すと75%が実年齢より上に出ました。元の検査値が高い人に将来の心臓や血管の病気が多いという報告はありますが、関連の強さは検査で違います。有酸素運動・減塩・禁煙で値が下がったという人の試験はある一方、値を目標に治療して病気が減るかを試した試験では統計的な差が出ていません。診断の代わりにはならないので、気になる数字が出たら医師に相談してください。
この記事の基準日: 2026年11月6日。日本動脈硬化学会・日本循環器学会・日本超音波医学会の指針、日本高血圧学会の解説冊子、厚生労働省の点数表と e-ヘルスネット、機器メーカー(フクダ電子・フクダコーリン)の公式ページ、PubMed に載る論文を読んで書きました。全文まで開けた論文は一部で、残りは要旨に書かれた範囲だけを使っています。数字を年齢に置き換えた所は「当記事の計算」と書きました。医師の監修は受けていません。
血管年齢とは何を表す数字なのか
血管年齢には、研究者の間で合意された一つの定義がありません。2016年の系統的レビュー(関係する論文を決まった手順で集めて調べた研究)は39本の論文を読み、血管年齢が何を表すかの合意はほとんど無く、同じ名前でも別々の方法で定義されていると結論しています。実際の集団で使った31本の内訳は、危険因子から計算したリスクを年齢に言い換えた物が15本、別の検査の基準値から出した物が12本、画像で見た動脈硬化と同じリスクになる年齢を使った物が3本でした。
リスクを言い換える型は、血管を測りません。米国のフラミンガム研究が2008年に発表した計算は、8,491人を12年追った結果から作られ、年齢・コレステロール・上の血圧(収縮期血圧)・血圧の治療の有無・喫煙・糖尿病を入れます。この表に血管年齢という考え方が入っていたと2010年の論文は書き、欧州の SCORE という表からも同じように計算できることを示しました。
健診や医療機関の検査で出る血管年齢は、検査の基準値から出す型です。仕組みが一番はっきり書かれているのは、加速度脈波(指先の脈波を2回微分した波)を調べた1999年の日本の論文です。健診センターの600人(6つの年代の男女50人ずつ)で、波の形から作った指標と年齢の関係を調べると、「指標=0.023×年齢-1.515」という直線になりました(相関係数0.80)。これを年齢について解いたのが「血管年齢=43.5×指標+65.9」です。その人の指標が、この600人の直線の上で何歳の所にあるかを読んでいるわけです。著者はこの年齢を、健診センターの受診者から得た一つの目安と書いています。
CAVI と baPWV の機器も同じ方向の考え方です。フクダ電子は、動脈硬化の危険因子を持たない人たちの平均値と比べて血管年齢を評価すると説明しています。フクダコーリンは「推定血管年齢」を、健常者の年齢・性別・血圧・baPWV から統計的に算出した血管の硬さの目安値と説明しています。今回開いた両社の公式ページに、具体的な計算式は載っていませんでした。
硬さから出した年齢は、血管の全部を表すわけでもありません。日本動脈硬化学会の指針は、PWV(脈波伝播速度)は動脈の硬さの指標で、必ずしも粥状硬化(血管の内側に脂質などがたまって盛り上がる変化)を反映しないと注意しています。硬さの検査で血管年齢が若く出ても、内側の変化が無いとは言えません。体の状態を年齢で表す検査に共通する話は、遺伝子検査キットの記事の「老化そのものを測る検査」の節でも扱っています。
血管年齢はどうやって調べるのか(測り方の比較)
主な測り方を並べます。同じ「血管年齢」と呼ばれても、見ている場所も単位も違います。
| 測り方 | 何を見ているか | どう測るか | 指針などの目安 | 年齢への直し方 |
|---|---|---|---|---|
| CAVI(心臓足首血管指数) | 心臓から足首までの動脈の硬さ。脈の伝わる速さと血圧から計算する指数 | 横になり、心電図の電極・心音のマイク・血圧計の帯(カフ)を付ける。約4分(メーカーの説明) | 8.0未満が正常、8.0以上9.0未満が境界、9.0以上が異常 | 危険因子を持たない人の平均と比べる(フクダ電子) |
| baPWV(上腕-足関節脈波伝播速度) | 腕と足首の間を脈が伝わる速さ | 専用の機器で両腕・両足首の脈波を測る | 1,400 cm/s 未満が正常、1,800 cm/s 以上が異常 | 健常者の年齢・性別・血圧・baPWV から統計的に算出(フクダコーリン) |
| ABI(足関節上腕血圧比) | 足首と腕の上の血圧の比。足の動脈の詰まりを見る | 横になり、両腕・両足首の血圧を測る | 1.00〜1.40が正常、0.91〜0.99が境界、0.90以下が異常低値、1.40より上が異常高値 | 年齢に直す式は確かめられなかった |
| 加速度脈波 | 指先の脈波を2回微分した波の形 | 指先で測る。1999年の論文の機器は30秒以内に印字 | 今回開いた指針に基準値の記載なし | 健診600人の直線の式を解いた物(1999年の論文) |
| 頸動脈エコー | 首の動脈の壁の厚さ(IMT・内中膜厚)と局所の盛り上がり(プラーク) | 首に超音波を当てる | プラークは1.1 mm以上の限局した隆起。IMTは年齢を加味して評価 | 統一の式は確かめられなかった。健常成人の増え方は年0.009 mm程度 |
| 問診のチェック | 生活習慣などへの答え。血管は測っていない | 質問に答える(検索で上位に出る製薬会社のページは25問) | なし | そのページの判定の計算方法は載っていない |
出典: 日本動脈硬化学会 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第1章(CAVI・baPWV・IMT)、日本循環器学会/日本血管外科学会 末梢動脈疾患ガイドライン2022年改訂版(ABI)、日本超音波医学会 頸動脈病変の標準的評価法2017と厚生労働省 e-ヘルスネット(頸動脈)、フクダ電子・フクダコーリンの公式ページ、高沢ら(動脈硬化・1999)、大正製薬の血管年齢チェック(いずれも2026年11月6日に確認)。
海外の研究で基準とされてきたのは、首と太ももの付け根の間を測る cfPWV です。2012年の専門家の合意文書はこれを標準と呼び、基準の値を10 m/s としました。日本の診療で使われているのは baPWV だと日本動脈硬化学会の指針は書いています。日本高血圧学会の2019年版の解説冊子は、臓器の障害の目安を baPWV 18 m/s 以上、cfPWV 10 m/s 超、CAVI 9以上と並べています。同じ「脈の速さ」でも物差しが違い、2,287人を両方で測った研究では baPWV が平均で約20%高く出ました。検査の種類をまたいで数字だけを比べることはできません。
「基準の人」は誰で、どこまで当てになるのか
CAVI の基準を示した代表的な研究が、2011年の日本の健診データです。2004〜2006年に健診を受けた20〜74歳の都市部の住民32,627人(会社員とその家族。心臓病・高血圧・脳卒中・糖尿病などの既往がある人は除く)のうち、健診で心臓や血管に関わる異常が無かった5,969人の値を年代ごとに出しました。フクダ電子の血管年齢のページにあるグラフも男性2,239人・女性3,730人と同じ人数で、この研究の健診を行った日本健康増進財団の名前が書かれています。
| 年代 | 男性の平均(標準偏差) | 男性の人数 | 女性の平均(標準偏差) | 女性の人数 |
|---|---|---|---|---|
| 20〜29歳 | 6.69(0.70) | 455 | 6.57(0.66) | 526 |
| 30〜39歳 | 7.12(0.68) | 877 | 6.79(0.63) | 1,307 |
| 40〜49歳 | 7.59(0.70) | 421 | 7.29(0.66) | 1,077 |
| 50〜59歳 | 8.07(0.76) | 306 | 7.82(0.70) | 690 |
| 60〜69歳 | 8.73(0.81) | 155 | 8.26(0.72) | 119 |
| 70〜74歳 | 9.35(1.00) | 25 | 8.71(0.75) | 11 |
出典: Namekata ら(BMC Cardiovascular Disorders・2011)の本文の Table 1・Table 2(2026年11月6日に確認)。機器が実際にこの表を使っているかは、公式の資料では確かめられませんでした。
この表から読めることが四つあります。
- 基準は「同年代の平均の人」ではありません。異常の無かった人の割合は20代で45.4%、60代で6.9%、70〜74歳で3.7%(979人中36人)でした。年代が上がるほど、ごく一部の人と比べることになります。実年齢より高い血管年齢が出ても、同年代の中で特に悪いとは限りません(当記事の読み方です)。
- ばらつきは10年分の差より大きいことがあります。年代が10歳上がる時の平均の差は0.22〜0.66ですが、標準偏差(ばらつきの大きさ)は0.63〜1.00です。50代男性の平均は8.07、標準偏差は0.76なので、60代男性の平均8.73は標準偏差1つ分の中に入ります。50代の男性に「60代相当」の値が出ても、異常の無い同年代のばらつきの範囲です(当記事の計算です)。
- 同じ人を追った線ではありません。著者自身が断面調査(ある時点で別々の人を比べた調査)だと書いています。年代の差が、一人の人が年を取った時の変化と同じとは限りません。
- 男女と国で線が違います。論文では男性の値が女性より、30〜60歳で約5年、60歳より上で約10年先に進んでいました。チェコの1,347人で作った基準は、日本の基準と比べて男性で−0.29〜0.21、女性で−0.38〜−0.03の差がありました。
同じフクダ電子の別のページの文章は、健常群を6,793人(男性3,259人・女性3,534人)と書いています。機器の表示にどの集団が使われているかは確かめられませんでした。加速度脈波については、1999年の論文の著者が、血管年齢が実年齢より15〜20歳以上高い時を一つの目安と考え、具体的な数値は今後の症例で決まると書いています。25年以上前の論文が一つの測り方について書いた暫定の値で、著者も検討中としています。CAVI や baPWV の血管年齢には当てはまらず、差がこれより小さければ問題がないという意味でもありません。
測り方や測る日で数字はどれくらい変わるのか
ドイツの冠動脈疾患(心臓に血を送る血管の病気)の患者501人を複数の方法で測り、公表された式で血管年齢を出した研究が、違いを一番はっきり示しています。下の表の1行目です。著者は比べられるように標準化する努力が必要だと結んでいます。
| 何が違うか | 報告された内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 脈波の速さと頸動脈の厚さ | 大動脈の PWV から出すと68%が実年齢より下、頸動脈の厚さの合計から出すと75%が実年齢より上 | ドイツの患者501人(2021年) |
| PWV と加速度脈波 | 年齢や血圧という共通の要因はあるが、互いの相関は弱い。著者は中心部と末梢の別の情報を示すと解釈 | 治療中の高血圧の294人(2002年) |
| 血圧 | 上の血圧との相関は baPWV が0.463、CAVI が0.175 | 透析の患者482人(2006年) |
| 測り直し | 変動係数(測り直しの揺れを平均に対する割合で示した値)は CAVI 3.8%、baPWV は測る人が違う時8.4%、同じ人が別の日に測る時10.0% | CAVI 22人・baPWV 32人と55人(2006年・2002年) |
| 直前の精神的な負荷 | 5分の負荷の5分後に CAVI などが上がり、座って休むだけでは45分後まで続いた | 若い健康な男性13人(2021年) |
| 直前の運動 | 30分の自転車こぎの直後に CAVI が下がり、60分後には元に戻った | 若い健康な男性16人(2015年) |
| 足の動脈の狭まり | ABI が0.95未満だと baPWV の精度が落ちる目印になる | 患者1,361人と危険因子の無い7,889人(2005年) |
出典: Yurdadogan ら(Scientific Reports・2021)、Hashimoto ら(Journal of Hypertension・2002)、Shirai ら(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis・2006)、Yamashina ら(Hypertension Research・2002)、Kume ら(European Journal of Applied Physiology・2021)、Zheng ら(同・2015)、Motobe ら(Circulation Journal・2005)の要旨(2026年11月6日に確認)。
揺れを年齢に置き換えると大きさがつかめます。CAVI 8.0の人の変動係数3.8%は約0.3で、男性の50代と60代の差0.66と比べると約4〜5年分です。baPWV 1,400 cm/s の人の8.4〜10.0%は約120〜140 cm/s で、たばこを吸わない日本人の増え方として報告された年5.5 cm/s よりずっと大きい値です。頸動脈の厚さは健常成人で年0.009 mm 程度(21〜105歳の319人の研究の式も同じ傾き)なので、0.1 mm の差は約11年分にあたります。いずれも当記事の計算で、メーカーや学会が示した換算ではありません。
指針もこの点に注意を促しています。日本動脈硬化学会は、血管の機能の検査は統一した方法で信頼性は高いものの、食事との間隔や室温など測る時の条件を整える必要があり、体型・血圧値・不整脈でも数値が変わる可能性があると書いています。頸動脈の厚さは手で測ることが多く、前回と同じ場所か分からない場合があるとも指摘しています。日本超音波医学会の標準的評価法は、IMT の年ごとの変化は大規模研究で使う指標で、個人の治療の効果の判定に使うべきではないとしています。日本循環器学会の指針は、ABI の意味のある変化を0.15以上(他の指標と合わせて判断する時は0.10以上)としています。
CAVI が血圧の影響をどこまで受けるかには議論があります。2017年の論文は計算上、壁の性質が同じままでも血圧を160/111から120/79 mmHg に下げると CAVI が8.1から7.7に下がると示しました(模擬の患者161人)。これに対し、CAVI を開発した研究者らは2019年に、実際の8,631人の値を調べて修正の有無の差は小さく、機器の CAVI で適切だと反論しています。
値が高いと将来の心臓や血管の病気は増えるのか
印字された「血管年齢」ではなく、元の検査値については追跡した研究があります。表の倍率は相対リスクやハザード比(比べた群と比べて病気が起きる速さ・割合が何倍か)で、関連を示すものであり、検査値が原因だと示すものではありません。
| 検査 | 対象と期間 | 報告された関連 |
|---|---|---|
| baPWV(2017年) | 病歴の無い日本人14,673人・平均6.4年 | 一番高い5分の1は一番低い5分の1の3.50倍。標準偏差1つ分で1.19倍 |
| baPWV(2012年のまとめ) | 18本・8,169人・平均3.6年 | 1 m/s 上がるごとに心血管の病気が12%増 |
| CAVI(2019年のまとめ) | 前向きの研究9本・5,214人。多くはアジアのリスクの高い人 | 標準偏差1つ分で1.20倍(倍率をまとめられたのは前向きの4本)。著者は控えめな関連と表現 |
| CAVI(2021年 CAVI-J) | 危険因子のある40〜74歳の日本人2,932人・中央値4.9年 | 1点上がるごとに1.38倍。心血管死と脳卒中に関連し、心筋梗塞とは関連せず |
| 大動脈の PWV(2010年のまとめ) | 17本・15,877人・平均7.7年 | 高い群は低い群の2.26倍。1 m/s 上がるごとに14%増 |
| ABI(2008年のまとめ) | 16の住民研究・48,294人 | 0.90以下の男性の10年の心血管死亡は18.7%、1.11〜1.40の男性は4.4%。女性は12.6%と4.1% |
| 頸動脈の厚さ(2007年のまとめ) | 8本 | 0.1 mm 厚いごとに心筋梗塞1.15倍、脳卒中1.18倍 |
| 加速度脈波の指標 d/a(2017年) | 50〜79歳の日本人女性4,373人・中央値9.0年 | 基準の群と比べて2つの群で心血管死が2.30倍、2.60倍 |
出典: Ohkuma ら(Hypertension・2017)、Vlachopoulos ら(Hypertension・2012)、Matsushita ら(Journal of Clinical Hypertension・2019)、Miyoshi ら(Journal of the American Heart Association・2021)、Vlachopoulos ら(Journal of the American College of Cardiology・2010)、Ankle Brachial Index Collaboration(JAMA・2008)、Lorenz ら(Circulation・2007)、Inoue ら(Hypertension Research・2017)の要旨と本文(2026年11月6日に確認)。CAVI-J の論文には、著者の一部がフクダ電子から奨学寄付金・顧問料を受けたと書かれています。
大事なのは「血圧・喫煙・糖尿病などを調べた上に、この検査を足す価値があるか」です。日本動脈硬化学会の2022年版は、心臓や血管の病気の無い日本人の一次予防について次のように整理しています。baPWV は上乗せの予測能がある可能性は高いが未解決の問題があり、今は勧める根拠として不十分。CAVI は検討した報告が一報しかなく根拠は十分でない。ABI は根拠が乏しい。頸動脈エコーは統計的に有意な改善の報告が一報だけ。そのうえで同じ指針は、これは個々の検査結果を否定するものではなく、危険因子の管理の動機付けには有効と考えられると書いています。
海外でも同じ傾向です。45,828人を約11年追った研究では、従来のリスクの計算に頸動脈の厚さを足しても、予測の当たりやすさを示す C 統計量は0.757から0.759に上がるだけで、著者は臨床的に重要とは考えにくいとしました。米国予防医学専門委員会は2018年、症状の無い成人に ABI で調べることの利益と害を判断する根拠は不十分としています。一方で日本循環器学会の指針は、糖尿病の人には ABI と PWV/CAVI による年1回程度の確認が望ましいと書いており、誰が受けるかで位置づけは変わります。
年齢の形にした数字そのものの研究は多くありません。スウェーデンの2,642人の研究は、PWV と危険因子から作った独自の式で「早く老いている群」を標準の群の2.70倍、「若い群」を0.59倍と報告しました。中国の5,723人の研究では、baPWV から作った血管年齢では早く老いている群が1.84倍でしたが、cfPWV から作った血管年齢では有意な結果が出ませんでした。測り方を変えると、将来との関係まで変わりうることを示しています。
「血管年齢は若返る」は本当か
人の試験で言えるのは「条件によって検査の値が下がることがある」までです。値が下がることと、血管が若い頃の状態に戻ることは同じではなく、その後の病気が減るかも確かめきれていません。報告を並べます。
| 何をしたか | 対象 | 値の変化 |
|---|---|---|
| 有酸素運動 | 4週以上の無作為試験をまとめた42本・1,627人 | PWV が平均0.63 m/s 低下(baPWV は1.01、cfPWV は0.39)。筋力トレーニングでは変わらず、組み合わせでも有意差なし |
| 減塩 | 無作為試験11本・431人・1〜6週 | ナトリウムを1日89.3 mmol 減らす(食塩で約5 g・当記事の換算)と cfPWV が2.84%低下 |
| 禁煙 | 13本のまとめ | 吸い続けた人より PWV が約3.5%低い。分けて見ると有意なのは健康な人だけ |
| 禁煙(日本) | 喫煙者82人のうち禁煙できた22人 | CAVI が9.4から8.6へ。吸わない人の8.8との差が消えた |
| 減量 | 20本のまとめ・1,259人。日本の肥満の外来患者の3か月の試み | 平均8%の減量で PWV 低下、CAVI も低下の報告。まとめの著者は研究の質が低く仮説の段階とする |
| 太極拳を1年 | 高齢者45人と比較の44人(無作為ではない) | CAVI は6か月で8.44から8.20へ低下したが、1年では有意差なし |
| 減量手術 | 72人 | 体重と血圧は下がったのに、CAVI は6か月で0.64上がった |
出典: Ashor ら(PLoS One・2014)、D'Elia ら(Journal of Hypertension・2018)、Saz-Lara ら(European Journal of Cardiovascular Nursing・2022)、Noike ら(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis・2010)、Petersen ら(Pulse・2015)、Satoh ら(Hypertension Research・2008)、Mori ら(Archives of Gerontology and Geriatrics・2020)、Wang ら(Atherosclerosis・2021)の要旨(2026年11月6日に確認)。
読む時の注意が三つあります。一つ目は期間です。減塩の試験は長くて6週、運動の試験も4週以上という条件で、何年も値が保たれるかは別の問題です。二つ目は血圧です。PWV は血圧で変わるので、値が下がった分のどこまでが壁そのものの変化かは分けにくいです(減塩のまとめの著者は、少なくとも一部は血圧と独立した変化とみています)。三つ目は向きです。減量手術の例のように、体によい変化が起きていても値が上がることがあり、値だけで体の状態は決められません。
一番直接的に問いに答えようとしたのが、フランスの SPARTE 試験です。リスクが中等度以上の55〜75歳の高血圧の536人を、cfPWV を10 m/s 未満にすることを目標に薬を調整する群と、通常の指針どおりに治療する群に分け、中央値48.3か月追いました。PWV の上がり方は目標の群で年0.06 m/s、通常の群で年0.20 m/s と差が出ましたが、心臓・血管・腎臓の病気のハザード比は0.74(95%信頼区間0.40〜1.38、P=0.35)で統計的な差はありませんでした。予定の1,500人に対して536人しか集まらず、著者は人数が足りなかったとして、より多い人数での再試験を求めています。効かなかったとも効いたとも言えない結果です。
観察の研究では、値が下がらない人に病気が多いという報告があります。日本の冠動脈疾患の患者211人では、CAVI が6か月後に改善した人より高いままの人に、約2.9年の間の病気が多くありました。末期腎不全の150人では、血圧を下げても PWV が下がらない人の死亡が2.59倍でした。ただしこれは下がりにくい人がもともと重かった可能性を除けず、下げたから病気が減ったとは言えません。頸動脈の厚さについても日本超音波医学会は、治療で進みを抑えたり薄くしたりすることが病気の減少につながるかは、肯定と否定の両方の解析があり、まだ意見が一致していないとしています。
血管年齢が高い人の特徴は何か。見た目も若いのか
一番はっきりしているのは年齢と血圧です。cfPWV の論文77本を調べた2009年のレビューでは、年齢と血圧が独立して関連していた研究が91%と90%でした。糖尿病は52%で関連があるものの強さは低く、性別・コレステロール・喫煙・BMI は多くの研究で独立した関連が見られませんでした。
日本の検査では少し違う報告もあります。日本動脈硬化学会の指針は、baPWV を上げる要因に加齢・高血圧・糖尿病・脈拍数を挙げ、CAVI が高まる場面として高血圧・糖尿病・メタボリックシンドローム・睡眠時無呼吸・喫煙・災害のストレスを挙げています。日本人2,054人を5〜6年追った研究では、baPWV の年あたりの上がり方は、たばこを多く吸い続けた人が11.0 cm/s、吸わない人が5.5 cm/s でした。どの要因が目立つかは、指標と調べ方で変わります。生活習慣と健康の関係は健康寿命の記事でも扱っています。
「見た目も若いのか」は、関連の報告が少しあるだけです。50歳以上の日本人273人の研究では、看護師やソフトに実年齢より若いと判定された人は、年齢を調整しても頸動脈の壁が薄い傾向がありましたが、baPWV とは関連しませんでした。日本人女性169人の研究では、顔のしみと頸動脈の厚さの相関は0.13と弱く、内臓脂肪を介した関連と解析されています。デンマークの10,885人を35年追った研究では、額の生え際の後退・頭頂部の薄毛・耳たぶのしわ・まぶたの黄色い盛り上がりのうち3〜4個ある人は、無い人より虚血性心疾患(心臓の血管が狭まって起きる病気)が1.40倍でしたが、これは血管年齢を測った研究ではありません。見た目で血管の状態を判断する根拠にはなりません。
検査の費用はどのくらいか
全国で共通に確かめられるのは、保険で行う時の点数です。健診や人間ドックの追加項目のような自費の料金は施設ごとに決められており、今回は載せていません。
| 検査 | 点数表の項目 | 点数 | 医療費 | 3割負担の場合 |
|---|---|---|---|---|
| 脈波から伝わる速さを求める検査 | D214 の6 血管伸展性検査 | 100点 | 1,000円 | 300円 |
| 首の超音波の検査 | D215 の2 ロ(3)その他(頭頸部など) | 350点 | 3,500円 | 1,050円 |
出典: 厚生労働省 医科診療報酬点数表(令和8年厚生労働省告示第69号・2026年6月1日適用)、同じ改定の留意事項通知、診療報酬の算定方法(1点10円)(2026年11月6日に確認)。医療費と負担額は当記事の計算で、窓口では初診料・再診料などが加わります。
留意事項通知によると、血管伸展性検査は脈波図から脈波伝達速度を求めて行う物で、閉塞性動脈硬化症もこの項目で算定します。点数表の文字に CAVI や baPWV という名前は出てきません。実際の請求の項目や、保険で受けられるかは、医師の判断と受ける場所によります。
結果の紙を受け取ったらどう読めばよいか
- 年齢より元の値を見ます。CAVI・baPWV・ABI の値を、上の表の目安と比べます。年齢は元の値を基準の線に当てはめて言い換えた物です。フクダ電子も、CAVI が正常範囲でも心臓や血管の病気のリスクが無いわけではないと注記しています。
- どの測り方かを確かめます。CAVI と baPWV、脈波と頸動脈エコーのように別の測り方の数字は、そのまま比べられません。
- 前回と比べるなら同じ機器と似た条件で。食事との間隔・室温・血圧・直前の運動やストレスで値は動きます。1回の上下で判断せず、流れを見ます。
- 血圧・血糖・脂質・喫煙と一緒に見ます。指針が予測の土台に置いているのはこれらの危険因子です。血管年齢が若くても、血圧が高ければ血圧の問題は残ります。
- ABI は別の意味で見ます。0.90以下は足の動脈の狭まりや詰まり、1.40より上は動脈の強い石灰化が疑われる値です。0.95未満では baPWV の精度が落ちるという報告もあり、硬さの数字より先に医師に見てもらう値です。
まだ分かっていないこと
機器が印字する血管年齢そのものを、日本の一般の人で長く追い、将来の病気との関係を確かめた研究は、PubMed の題名の検索(2026年11月6日)の範囲では見つかりませんでした。近いものでは、baPWV から出した血管年齢と実年齢の差が慢性腎臓病の中国人男性94人の透析や死亡と関連したという報告がありますが、対象が限られています。
血管年齢や PWV を下げることで病気が減るかは、SPARTE 試験が人数不足で終わり、決着していません。日本人の一次予防で baPWV を足す時にどの値で区切るかも、指針は未解決としています。
機器の計算式と基準の集団は、今回開いた公式の資料では確かめられず、高い年代の基準の人数は少ないままです。加速度脈波を含む光の脈波については、一般向けの機器でも測られるようになり、血管年齢を見る道具として出てきている段階だと2022年の総説は書き、再現性や臨床での有用性の証拠を整理した上で今後の研究の方向を挙げています。スマートフォンや腕時計の「血管年齢」を医療機関の検査と同じに扱ってよいかは、当記事では確かめられていません。
注意
血管年齢は傾向を見る目安で、診断の代わりにはなりません。気になる数字が出たら、結果の紙を持って医師に相談してください。胸の痛みや息苦しさ、歩くと足が痛む、足のしびれや冷えなどの症状がある時は、数字を待たずに相談してください。持病がある人、薬を飲んでいる人、妊娠中の人は、運動や食事を大きく変える前に医師に相談し、血管年齢の数字だけで薬をやめないでください。
出典
- 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第1章 動脈硬化の臨床診断(日本動脈硬化学会・2022)
- 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版 第2章 包括的リスク評価(日本動脈硬化学会・2022)
- 2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン(日本循環器学会・日本血管外科学会・2022)
- 超音波による頸動脈病変の標準的評価法2017(日本超音波医学会・2017)
- 頸動脈エコー検査(厚生労働省 e-ヘルスネット・2026年更新)
- 『高血圧治療ガイドライン2019』に関する解説冊子(日本高血圧学会監修・2019)
- 医科診療報酬点数表 令和8年厚生労働省告示第69号(厚生労働省・2026)
- 医科診療報酬点数表の留意事項(厚生労働省・2026)
- 診療報酬の算定方法(厚生労働省)
- 血管年齢(フクダ電子)
- 動脈の硬さの指標 CAVI(フクダ電子)
- 臨床的有用性(フクダ電子)
- 検査のご紹介(フクダ電子)
- 推定血管年齢タイプ 検査結果の見方(フクダコーリン)
- 血管年齢チェック(大正製薬)
- Vascular age to determine cardiovascular disease risk: A systematic review(European Journal of Preventive Cardiology・2016)
- General cardiovascular risk profile for use in primary care: the Framingham Heart Study(Circulation・2008)
- How to calculate vascular age with the SCORE project scales(European Heart Journal・2010)
- 加速度脈波による血管年齢の推定(動脈硬化・1999)
- Assessment of vasoactive agents and vascular aging by the second derivative of photoplethysmogram waveform(Hypertension・1998)
- Establishing baseline criteria of cardio-ankle vascular index(BMC Cardiovascular Disorders・2011)
- Reference values of cardio-ankle vascular index in a random sample of a white population(Journal of Hypertension・2017)
- Expert consensus document on the measurement of aortic stiffness in daily practice(Journal of Hypertension・2012)
- Comparison between carotid-femoral and brachial-ankle pulse wave velocity(Journal of Hypertension・2009)
- Functional versus morphological assessment of vascular age in patients with coronary heart disease(Scientific Reports・2021)
- Pulse wave velocity and the second derivative of the finger photoplethysmogram in treated hypertensive patients(Journal of Hypertension・2002)
- A novel blood pressure-independent arterial wall stiffness parameter; cardio-ankle vascular index(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis・2006)
- Validity, reproducibility, and clinical significance of noninvasive brachial-ankle pulse wave velocity measurement(Hypertension Research・2002)
- Acute mental stress-caused arterial stiffening can be counteracted by brief aerobic exercise(European Journal of Applied Physiology・2021)
- Acute effects of moderate-intensity continuous and accumulated exercise on arterial stiffness in healthy young men(European Journal of Applied Physiology・2015)
- Cut-off value of the ankle-brachial pressure index at which the accuracy of brachial-ankle pulse wave velocity measurement is diminished(Circulation Journal・2005)
- Continuous smoking and progression of arterial stiffening: a prospective study(Journal of the American College of Cardiology・2010)
- Carotid plaque and intima-media thickness assessed by b-mode ultrasonography in subjects ranging from young adults to centenarians(Stroke・2001)
- Arterial stiffness index beta and cardio-ankle vascular index inherently depend on blood pressure but can be readily corrected(Journal of Hypertension・2017)
- Comparison of Cardio-Ankle Vascular Index (CAVI) and CAVI0 in Large Healthy and Hypertensive Populations(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis・2019)
- Brachial-Ankle Pulse Wave Velocity and the Risk Prediction of Cardiovascular Disease: An Individual Participant Data Meta-Analysis(Hypertension・2017)
- Prediction of cardiovascular events and all-cause mortality with brachial-ankle elasticity index(Hypertension・2012)
- Cardio-ankle vascular index and cardiovascular disease: Systematic review and meta-analysis(Journal of Clinical Hypertension・2019)
- Predictive Value of the Cardio-Ankle Vascular Index for Cardiovascular Events in Patients at Cardiovascular Risk(Journal of the American Heart Association・2021)
- Prediction of cardiovascular events and all-cause mortality with arterial stiffness(Journal of the American College of Cardiology・2010)
- Ankle brachial index combined with Framingham Risk Score to predict cardiovascular events and mortality(JAMA・2008)
- Prediction of clinical cardiovascular events with carotid intima-media thickness(Circulation・2007)
- Second derivative of the finger photoplethysmogram and cardiovascular mortality in middle-aged and elderly Japanese women(Hypertension Research・2017)
- Common carotid intima-media thickness measurements in cardiovascular risk prediction(JAMA・2012)
- Screening for Peripheral Artery Disease and Cardiovascular Disease Risk Assessment With the Ankle-Brachial Index(JAMA・2018)
- Early and Supernormal Vascular Aging(Hypertension・2020)
- Comparison between vascular age based on brachial-ankle pulse wave velocity or carotid-femoral pulse wave velocity(Hypertension Research・2025)
- Effects of exercise modalities on arterial stiffness and wave reflection(PLoS One・2014)
- Effect of dietary sodium restriction on arterial stiffness(Journal of Hypertension・2018)
- The effect of smoking and smoking cessation on arterial stiffness(European Journal of Cardiovascular Nursing・2022)
- Changes in cardio-ankle vascular index in smoking cessation(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis・2010)
- Weight Loss, Dietary Intake and Pulse Wave Velocity(Pulse・2015)
- Evaluation of the cardio-ankle vascular index in obesity and metabolic syndrome(Hypertension Research・2008)
- Impact of Tai Chi Yuttari-exercise on arteriosclerosis and physical function in older people(Archives of Gerontology and Geriatrics・2020)
- Increase in arterial stiffness measures after bariatric surgery(Atherosclerosis・2021)
- SPARTE Study: Normalization of Arterial Stiffness and Cardiovascular Events(Hypertension・2021)
- Serial assessment of arterial stiffness by cardio-ankle vascular index(Hypertension Research・2014)
- Impact of aortic stiffness attenuation on survival of patients in end-stage renal failure(Circulation・2001)
- Dissociation of aortic pulse wave velocity with risk factors for cardiovascular disease other than hypertension(Hypertension・2009)
- Perceived age of facial features is a significant diagnosis criterion for age-related carotid atherosclerosis in Japanese subjects(Geriatrics & Gerontology International・2012)
- Facial pigmentation as a biomarker of carotid atherosclerosis(Skin Research and Technology・2016)
- Visible age-related signs and risk of ischemic heart disease in the general population(Circulation・2014)
- Vascular age is associated with the risk of dialysis or death in chronic kidney disease(Nephrology・2020)
- Assessing hemodynamics from the photoplethysmogram to gain insights into vascular age: a review from VascAgeNet(American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology・2022)
よくある質問
血管年齢とは何ですか?
CAVIやbaPWVなどの検査値を、基準にした人たちの年齢ごとの値と比べて「何歳に相当するか」に言い換えた目安です。血管そのものの年齢を測った数字ではなく、共通の定義もありません。論文39本を調べた系統的レビューでも、同じ名前で別々の定義が使われていると報告されています。診断ではないので、気になる数字が出たら医師に相談してください。
血管年齢はどうやって調べますか?測り方で数字は変わりますか?
医療機関や健診で、CAVI・baPWV(腕と足首に帯を巻いて脈の伝わる速さを測る)、加速度脈波(指先で測る)、頸動脈エコー(首の超音波)などで調べます。CAVIの機器は約4分とメーカーが説明しています。測り方で数字は変わり、ドイツの患者501人の研究では、脈波の速さから出すと68%が実年齢より若く、頸動脈の壁の厚さから出すと75%が実年齢より上に出ました。
「血管年齢は若返る」と言えますか?
検査の値が下がったという人の試験はありますが、血管が若い頃の状態に戻ったのかは確かめられていません。有酸素運動の無作為試験のまとめではPWVが平均0.63 m/s下がり、減塩や禁煙でも低下が報告されています。一方、PWVを目標に治療した試験(536人)では病気の減り方に統計的な差が出ず、著者は人数が足りなかったとしています。値は血圧や測る時の条件でも動きます。
血管年齢が高い人の特徴は何ですか?
一番はっきりしているのは年齢と血圧です。cfPWVの論文を調べたレビューでは、約9割の研究で年齢と血圧が独立して関連していました。糖尿病は約半数の研究で関連しました。喫煙は研究で結果が分かれますが、日本人2,054人の追跡では、たばこを多く吸い続けた人の値の上がり方が吸わない人の約2倍でした。同じ年代では男性の値が女性より高い傾向があります。
血管年齢が若い人は、見た目も若いですか?
はっきりした関係は示されていません。50歳以上の日本人273人の研究では、若く見えた人は頸動脈の壁が薄い傾向がありましたが、baPWVとは関連しませんでした。日本人女性169人の研究でも、顔のしみと頸動脈の厚さの相関は0.13と弱いものでした。見た目で血管の状態を判断する根拠にはなりません。