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習慣

健康寿命を延ばすには|最新の数字と大規模調査で見る習慣

健康寿命の最新値(2022年)は男性72.57年、女性75.45年で、平均寿命との差は男性8.49年、女性11.63年。喫煙・運動・食事・飲酒・睡眠・社会参加は国内の大規模調査で関連が報告されているが、多くは観察で、因果と分けて読む必要がある。

結論

健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」で、最新の令和4年(2022年)値は男性72.57年、女性75.45年、同じ年の平均寿命との差は男性8.49年、女性11.63年である。次の令和7年値の公表は、基準日の時点で見つからなかった。国内の調査では、たばこを吸わない(やめた人を含む)・1日30分以上歩く・野菜と果物を多くとるの3つがそろう65歳以上の人は、0〜1つの人より要介護にならない期間が17.1か月長かった(9,910人・10年)。ただし国内の大規模調査のほとんどは観察で、関連は示しても因果は示さない。無作為化試験で健康寿命に近い値を測った例は少なく、2型糖尿病で太りぎみの人の試験では、減量の生活指導で障害のない期間が0.9年長くなった(60歳の人に換算)が、差が見られたのは女性と心血管の病気がない人で男性では見られず、全体の寿命は変わらなかった。厚生労働省のサイトの解説も、何をすれば何年延伸するかには明確に答えられないと書いている。

この記事の基準日: 2026年11月6日。厚生労働省の委員会資料・生命表・健康日本21の資料、WHO の統計、PubMed に載る論文の要旨(国内のコホート研究と海外の無作為化試験)を読んで書いた。全文を開けなかった論文は、要旨に書かれた範囲だけを使っている。医師の監修は受けていません。

健康寿命とは何か。平均寿命と何が違うのか

平均寿命は「0歳における平均余命」である。健康寿命は、厚生労働省のサイトの解説(e-ヘルスネット)で「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と説明されている。計算の上では、生きている期間を「健康な期間」と「不健康な期間」に分け、健康な期間の平均を出す。平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」と呼ばれる。

健康寿命が国の目標になった理由を、平成26年版の厚生労働白書はこう説明している。差が広がれば医療費や介護給付を使う期間が増える。差を縮められれば、一人ひとりの生活の質の低下を防ぎ、社会保障の負担も軽くなると期待できる。

「健康寿命」にはいくつかの測り方があり、数字も変わる。日本で使われている3つと WHO の方式を比べる。

指標何を「健康」とするか元のデータ特徴
日常生活に制限のない期間の平均(主指標)「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」に「ない」と答えた国民生活基礎調査(3年ごとの大規模調査)厚生労働省が健康寿命として公表する値。有識者研究会は、体だけでなく心と社会の面も含めて表していると評価した
自分が健康であると自覚している期間の平均(副指標)「あなたの現在の健康状態はいかがですか」に「よい」「まあよい」「ふつう」と答えた同じ調査本人の感じ方で決まる。令和4年値の資料には値が載っていない
日常生活動作が自立している期間の平均(補完的指標)要介護2以上を「不健康」とする介護保険のデータ毎年・地域ごとに出せる。主に65歳以上が対象で、不健康な期間が1〜2年と大幅に短く出る
HALE(WHO の健康寿命)不健康の程度で重みをつけ、完全な健康に相当する年数に換算するWHO の各国の推計二つに分ける日本の方式とは計算が違う

出典: e-ヘルスネット「健康寿命の定義と算出方法」(最終更新 2022年1月11日)、「健康寿命のあり方に関する有識者研究会報告書」の解説(同)を2026年11月6日に確認。

測り方の違いは数字に出る。2022年の WHO の値は男性70.9年、女性73.5年で、日本の主指標より男性で約1.7年、女性で約2.0年短い。e-ヘルスネットによると、WHO が2000年に発表した順位で日本が1位だったことが、関心が高まるきっかけになった。2023年の値では、日本は72.2年(男女計)で、185か国のうちシンガポールの72.9年に次ぐ2番目、韓国が72.0年で続く。WHO の説明ページは、新しいデータと方法に基づく値で、以前の推計とは直接比べられないと注記している。

健康寿命は個人の余命でもない。ある年の死亡率と不健康の割合が続くと仮定したときの、0歳の人の平均である。72.57年だからといって、誰もが72歳で不健康になるという意味ではない。平均寿命も同じで、令和7年の簡易生命表では男性の平均寿命が81.35年である一方、65歳の男性の平均余命は19.68年(女性は87.33年と24.52年)で、65歳まで生きた人の平均はもっと先まで伸びる。

最新の健康寿命はいくつか

最新の値は、2024年12月24日の厚生労働省の委員会(第4回 健康日本21(第三次)推進専門委員会)で公表された令和4年値である。資料の全国の推定値を並べる。

年男性 健康寿命男性 差男性 平均寿命女性 健康寿命女性 差女性 平均寿命
201070.429.2279.6473.6212.7786.39
201371.199.0180.2174.2112.4086.61
201672.148.8480.9874.7912.3487.14
201972.688.7381.4175.3812.0687.45
202272.578.4981.0575.4511.6387.09

単位は年。出典: 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」表1-1(2026年11月6日に確認)。2016年は熊本地震で調査できなかった熊本県を除く。2010年の差は、完全生命表を使う白書では男性9.13年、女性12.68年と書かれている(平均寿命の元の表が違う)。

2019年と比べると、男性は0.11年短く、女性は0.07年長いが、資料は男女とも統計的に有意な差は見られなかったとしている。95%信頼区間(誤差の幅)は、2022年の男性が72.43〜72.71年、女性が75.30〜75.61年で、2019年の男性72.55〜72.81年、女性75.23〜75.53年と重なっている。

差の数字が、ページによって8.48年と8.49年に分かれていることがある。小数2桁に丸めた値どうしを引くと男性は8.48年、女性は11.64年になるが、厚生労働省の資料は8.49年と11.63年である。資料に理由の説明は無いが、丸める前の値で計算した差と考えられる。この記事は資料の数字を使う。

新しい平均寿命は先に出ている。令和7年(2025年)の簡易生命表では男性81.35年、女性87.33年で、前年より男性0.25年、女性0.20年長い。一方、健康寿命の令和7年値は、厚生労働省の委員会の一覧(第5回・2025年12月23日まで)と検索の範囲では見つからなかった。令和4年値は調査から約2年半後に公表された。年の違う値どうしを引くと差の意味が変わるので、令和7年の平均寿命から令和4年の健康寿命を引かないほうがよい。

令和7年の国民生活基礎調査の概況は出ていて、自覚症状のある人の割合(有訴者率)は人口千人あたり276.5(2022年)から255.7(2025年)に下がった。ただし健康寿命に使う問いとは別の項目で、これだけでは次の健康寿命は読めない。

健康寿命はどう計算するのか

使われている方法はサリバン法(国内外で広く使われる計算法)である。手順は次のとおりである。

  • 毎年10万人が生まれると仮定し、年齢ごとの死亡率から、各年齢に生きている人の数(定常人口)を求める。簡易生命表の5歳ごとの値を使う。
  • 国民生活基礎調査で、年齢ごとに「日常生活に影響がある」と答えた人の割合(不健康割合)を出す。
  • 定常人口に「健康な人の割合」を掛けて足し合わせ、10万で割る。これが健康寿命である。

つまり健康寿命は、死亡率と不健康割合の二つで動く。この方法には、知っておくと数字の読み方が変わる限界がある。

一つ目は、自己申告であること。問いは「何か影響がありますか」の一つで、基準は答える人に任されている。

二つ目は、調査の対象である。今の算定は居宅者(家で暮らす人)の答えを使っている。厚生労働科学研究班の報告では、入院・入所の人も含めると指標の値そのものは0.7年程度変わった。ただし2010年から2019年までの年ごとの差はほとんど変わらなかった(0.1年未満)。絶対値より推移を見る指標といえる。

三つ目は、ある一日の答えであること。2022年の調査日は6月2日だった。その時に新型コロナにかかっていた人の答えも入る。

四つ目は、誤差である。全国で±0.15年ほど、都道府県では±0.5〜1年ほどの幅がある。資料も、数値を比べる時は信頼区間も考える必要があると書いている。

2022年に何が起きたのか。差が縮むのはよいことなのか

研究班の報告によると、2010〜2019年は死亡率と不健康割合がどちらも下がり、健康寿命は長くなり、差は縮んだ。2019〜2022年は死亡率が上がり、不健康割合は下がったが、それまでの流れから期待された値よりは高かった。その結果、2022年の健康寿命は男女とも期待値よりかなり短かった。

報告は、新型コロナの影響が主な原因と考えられるとしている。2022年の超過死亡(例年から見込まれる数を上回った死亡)は男性9.5万人、女性7.3万人と試算され、このうち死因が新型コロナだったのは男性2.5万人、女性2.3万人だった。調査日に新型コロナの影響で不健康だった人は男性22万人、女性23万人と試算された。試算には仮定が入っていて、報告は今後の算定を待って見極めることが重要としている。

ここで大事なのは、差は「短ければよい」とは限らないことである。差は平均寿命から健康寿命を引いた値なので、死亡率が上がって平均寿命が縮んでも小さくなる。報告も、2022年の不健康期間の変化では死亡率の上昇と不健康割合の上昇が逆向きに働いたと書いている。都道府県で見ても、2022年に男性の差が最も短いのは青森県の7.14年(信頼区間6.49〜7.80年)だが、青森県の男性の健康寿命は72.03年で全国の72.57年より短い。健康寿命と平均寿命は別々に見たほうがよい。

都道府県の差はどのくらいか

2022年の値の上位と下位を、信頼区間つきで並べる。

順男性(年・信頼区間)女性(年・信頼区間)
上位1静岡 73.75(73.22〜74.27)静岡 76.68(76.08〜77.27)
上位2石川 73.60(72.87〜74.33)山口 76.43(75.53〜77.33)
上位3山梨 73.47(72.68〜74.26)岐阜 76.20(75.45〜76.96)
下位3沖縄 71.62(70.75〜72.49)神奈川 74.71(73.91〜75.52)
下位2高知 71.19(70.25〜72.12)沖縄 74.33(73.31〜75.35)
下位1岩手 70.93(70.11〜71.76)岩手 74.28(73.45〜75.12)

出典: 厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」(2026年11月6日に確認)。上位4分の1の都道府県の平均と下位4分の1の平均の差は、男性1.51年、女性1.35年。

順位は調査のたびに大きく動く。2019年の男性1位だった大分県は73.72年から72.37年になり、2022年は25番目だった。2019年の女性1位の三重県は77.58年から75.97年に下がった。女性の山口県は75.33年から76.43年へ上がった。上の3県どうしの信頼区間は重なっており、1位と3位の差が本当の差かどうかは、この数字だけでは言えない。「長寿県の習慣」を順位から読み取るのは難しい。

国内の大規模調査で、どの習慣が関連していたか

健康寿命そのものを追いかける調査は少ないので、近い結果を測った調査を読む。要介護認定(介護保険のデータ)と死亡が主なものである。使った調査は、JPHC(多目的コホート研究。全国11の保健所管内の住民を追う)、JACC(全国の地域住民の共同研究)、大崎コホート2006(宮城県大崎市の高齢者)、AGES(愛知の高齢者)、久山町研究(町の住民を長く追う)などである。すべて前向きの観察で、最初に習慣を聞いてから何年も追っている。

ハザード比は、追跡中に出来事が起きる速さの比で、1より小さければ起きにくく、大きければ起きやすい。括弧は95%信頼区間である。

習慣調査人数・年齢追跡測ったもの結果
複数の習慣大崎コホート(Zhang ら 2018・2019)65歳以上 9,910人10年要介護認定、要介護か死亡までの期間たばこを吸わない(やめた人を含む)・1日30分以上歩く・野菜と果物が中央値以上の数が1つ多いごとにハザード比0.85(0.81〜0.90)。3つそろう人は0〜1つの人より要介護なしの期間が17.1か月(12.7〜21.5)長い
複数の習慣JACC(Eguchi ら 2012)40〜79歳 43,010人16.5年循環器病の死亡果物・魚・牛乳・運動・BMI・飲酒・たばこ・睡眠の8項目。7〜8点は0〜2点よりハザード比 男性0.35(0.25〜0.49)、女性0.24(0.16〜0.36)
喫煙広島・長崎の寿命調査(Sakata ら 2012)67,973人1963〜92年に喫煙を確認し2008年まで全死亡、平均寿命20歳前に吸い始め吸い続けた人(1920〜45年生まれ)は吸わない人より死亡率比 男性2.21、女性2.61。平均寿命は男性8年、女性10年短い。35歳前にやめた人は超過リスクのほとんどを避けていた
運動(総量)JPHC(Inoue ら 2008)45〜74歳 83,034人1995〜99年から2005年末全死亡仕事・生活・余暇を合わせた活動量が最も多い4分の1は最も少ない4分の1よりハザード比 男性0.73、女性0.61
歩く時間大崎コホート(Chou ら 2014)65歳以上 7,177人5年要介護認定中年から歩かないままの人に比べ、歩くようになった人0.69(0.49〜0.98)、歩き続けた人0.64(0.50〜0.82)
運動(余暇)久山町研究(Kishimoto ら 2016)65歳以上 803人17年認知症週1回以上運動する人でアルツハイマー病のハザード比0.59(0.41〜0.84)。認知症全体の発生率に有意な差は無かった
座る時間J-MICC(Koyama ら 2021)64,456人7.7年全死亡座る時間が1日2時間長いごとに、高血圧・脂質異常症・糖尿病のどれも無い人で1.13(1.07〜1.18)、3つとも有る人で1.42(1.16〜1.73)
食事JPHC(Kurotani ら 2016)45〜75歳 79,594人中央値15年全死亡、死因別食事バランスガイドの得点が最も高い群は最も低い群より全死亡0.85(0.79〜0.91)。がん死亡の関連は有意でなかった
食事JPHC(Matsuyama ら 2021)45〜74歳 92,969人中央値18.9年全死亡、循環器病の死亡日本食の得点6〜8点は0〜2点より全死亡0.86(0.81〜0.90)、循環器病死亡0.89(0.80〜0.99)。得点が高い群は食塩も多かった
食事大崎コホート(Matsuyama ら 2022 のまとめ)要旨に人数の記載なし研究ごとに異なる要介護、認知症、全死亡日本食の得点が最も高い4分の1は最も低い4分の1より要介護0.79(0.68〜0.92)、認知症0.79(0.66〜0.95)、全死亡0.91(0.83〜0.99)
食事の変化大崎コホート(Matsuyama ら 2020)65歳以上 2,923人10年要介護認定1994年から2006年に日本食の得点が2点以上増えた人は2点以上減った人より0.77(0.61〜0.98)
食事久山町研究(Ozawa ら 2013)60〜79歳 1,006人中央値15年認知症大豆・野菜・海藻・乳製品が多く米が少ない型の得点が最も高い4分の1は最も低い4分の1より0.66(0.46〜0.95)
飲酒JPHC(Saito ら 2018)40〜69歳 102,849人平均18.2年全死亡飲まない人を基準にJ字。男性は週1〜149gで0.76、週600g以上で1.19。女性は週1〜149gで0.80、週450g以上で1.59。飲む人の中では量が多いほど死亡の危険が直線的に高い
睡眠JPHC(Svensson ら 2021)40〜69歳 99,860人平均約20〜21年全死亡、死因別7時間と比べ、8時間以上の一部の区分で死亡との関連が見られた
睡眠JACC(Ikehara ら 2009)40〜79歳 98,634人中央値14.3年全死亡、死因別7時間と比べ、4時間以下で男性1.29(1.02〜1.64)、女性1.28(1.03〜1.60)。10時間以上は全死亡などで1.5〜2倍
社会参加AGES(Kanamori ら 2014)65歳以上 12,951人4年要介護認定参加する会の種類が0の人より、1種類0.83(0.73〜0.95)、2種類0.72(0.61〜0.85)、3種類以上0.57(0.46〜0.70)。地域0.85、趣味0.75、スポーツ0.64
人の支えJPHC(Ikeda ら 2008)40〜69歳 44,152人1993〜94年から2004年1月脳卒中と心臓病の発症・死亡支えが少ない男性で脳卒中死亡1.59(1.01〜2.51)。女性は1.25(0.63〜2.46)で有意でない。発症とは関連なし
生活リズムJPHC(2026年発表)45〜74歳 98,349人最長19年全死亡毎日の生活が「不規則」と答えた人は「規則正しい」人よりリスク比1.11(19年時点のリスク差2.12%)

出典: 表の各論文の要旨(PubMed)と、国立がん研究センターの多目的コホート研究の成果報告(2026年11月6日に確認)。結果は基本的に年齢や他の要因を調整した値。観察の研究で、関連を示すが原因は示さない。

心の状態については、健康寿命そのものの単位で示した数字がある。厚生労働科学研究班は、高齢者の心理的苦痛(K6 という質問票の点数)と健康寿命の関係を調べ、個人で見た健康寿命の損失を軽度で約1.3年、中等度で約2.8年、重度で約4.5年と報告した。当てはまる人は重度ほど少ないため、集団全体の損失の約7割は軽度から中等度の人の分だった。

海外の大規模調査とメタ解析は何を示しているか

国内の調査より人数が多く、健康寿命に近い「病気のない年数」を直接計算した研究もある。

研究人数期間測ったもの結果
Li ら 2020(米国の看護師と医療職)111,5621980〜2014年と1986〜2014年50歳時点の、糖尿病・循環器病・がんのない余命吸わない・BMI18.5〜24.9・1日30分以上の運動・適量の飲酒・食事の質の上位40%のうち4〜5つの人と0の人で、女性34.4年と23.7年、男性31.1年と23.5年
Nyberg ら 2020(欧州12の調査)116,043平均12.5年40〜75歳のうち慢性病のない年数たばこ・BMI・運動・飲酒の点数が最もよい人は最も悪い人より、男性9.9年(6.7〜13.1)、女性9.4年(5.4〜13.3)長い
Arem ら 2015(米欧6調査)661,137中央値14.2年全死亡余暇の運動なしに比べ、推奨量の1〜2倍で0.69、3〜5倍で0.61と頭打ち。10倍以上でも害の証拠は無かった
Ding ら 2025(歩数のメタ解析)57研究(解析は31研究)2014〜2025年の論文機器で測った歩数と全死亡・認知症・転倒など1日2,000歩と比べ7,000歩で全死亡0.53(0.46〜0.60)、認知症0.62(0.53〜0.73)、転倒0.72(0.65〜0.81)。全死亡は5,000〜7,000歩あたりで傾きが緩む
Svensson ら 2021(日本・中国・シンガポール・韓国)322,721平均13〜14年全死亡など7時間で最も低いJ字。10時間以上で男性1.34、女性1.48
Holt-Lunstad ら 2010(社会的なつながり)148研究 308,849人研究ごとに異なる死亡つながりの強い人は生存のオッズ比1.50(1.42〜1.59)。同居かどうかだけの指標では1.19で有意でない
Zhao ら 2023(飲酒のメタ解析)107研究 4,838,825人1980〜2021年の論文全死亡生涯飲まない人と比べ、1日1.3〜24gで0.93(有意でない)、45〜64gで1.19、65g以上で1.35

出典: 各論文の要旨(PubMed・2026年11月6日に確認)。いずれも観察の研究。歩数のメタ解析の著者も、研究数の少なさや残った交絡(ほかの要因の影響)を限界に挙げている。

「関連」はそのまま「因果」ではない

ここまでの表は「こういう習慣の人は、こういう結果が少なかった」という記録で、「習慣を変えれば同じだけ変わる」とは言っていない。理由は主に三つある。

一つ目は、逆の向きである。体調の悪い人は歩けないし、外出も減り、会にも入れない。歩く人に要介護が少ないのは、歩くからかもしれないし、元気だから歩けるのかもしれない。二つ目は、調べていない要因である。国立がん研究センターの成果報告も、調査していない健康状態などの影響が残っている可能性を書いている。三つ目は、測り方である。多くの調査は習慣をアンケートで一度聞くだけで、その後の変化は分からない。

飲酒は、この違いがはっきり出た例である。国内の JPHC では、飲まない人より少し飲む人の死亡が少ないJ字が見られた。しかし107研究をまとめた2023年の解析では、やめた人が「飲まない人」に混ざる偏りなどを調整すると、少量の飲酒で死亡が有意に少ないとは言えなかった。中国の51万人の調査では、遺伝子の違い(お酒に弱い体質で飲む量が決まる)を使って比べたところ、自己申告の飲酒で見られたU字は脳卒中で消え、量が多いほど危険が高くなった。著者は、適量の飲酒で脳卒中が少なく見えたのはほぼ因果ではないと結論している。

睡眠も同じ目で読む必要がある。10時間以上の人の死亡が多い理由が、長く眠ることそのものなのか、病気のせいで長く寝ているのかは、これらの調査では分からない。

無作為化試験で確かめられたことは何か

無作為化試験は、くじで介入を割り当てて比べるので、因果に近づける。健康寿命に関わる試験と、くじではないが偏りを減らす工夫をした研究を分けて並べる。

試験対象介入・期間結果
Look AHEAD(米国・無作為化)太りぎみ・肥満の2型糖尿病 45〜76歳 5,145人減量の生活指導を10年、対照は糖尿病の支援と教育主な評価の心血管の出来事は差なし(中央値9.6年、ハザード比0.95、0.83〜1.09)。身体の障害の発生は年6.0%と6.8%(比0.88)。モデルで換算すると60歳の障害のない年数は12.0年と11.1年で0.9年長いが、全体の寿命に差は無い。差は女性と心血管の病気がない人で見られ、男性では見られなかった
LIFE(米国・無作為化)座りがちで身体機能の落ちた70〜89歳 1,635人中強度の運動(施設で週2回、自宅で週3〜4回)と健康教育を比較、平均2.6年400m歩けなくなった人が30.1%と35.5%(ハザード比0.82、0.69〜0.98)。重い有害事象は49.4%と45.7%(比1.08、0.98〜1.20)
PREDIMED(スペイン・再解析)心血管の危険が高い55〜80歳 7,447人地中海食にオリーブ油かナッツを足した群と、脂肪を減らす助言の群、中央値4.8年主な心血管の出来事がハザード比0.69と0.72。2013年の報告は割り付けの不備で取り下げられ、再解析の値である
Lung Health Study(米国・カナダ・無作為化)気道に閉塞がある中年 5,887人10週間の禁煙プログラムと通常のケア、14.5年追跡全死亡が1,000人年あたり8.83と10.38。5年後の禁煙は21.7%と5.4%。結果は気道に閉塞がある人に限られる
Pitkala ら(フィンランド・無作為化)孤独を感じる75歳以上 235人小グループの集まりを3か月に12回2年後の生存が97%と90%(p=0.047)。主観的な健康も改善した。小さな試験である
J-MINT(日本・無作為化)軽度認知障害の65〜85歳 531人血管の危険の管理・運動・栄養の助言・認知の訓練、18か月認知の総合点に有意な差は無かった(差0.047、-0.029〜0.124)
武豊町のサロン(日本・無作為化でない)高齢者 2,421人町のサロンへの参加、約5年参加者の要介護のハザード比0.49(0.33〜0.72)。傾向スコアで0.52、自宅から350m以内のサロンの数を使う解析で0.50。無作為化ではない
特定保健指導(日本・無作為化でない)健診を受けた40〜74歳の男性 74,693人腹囲の基準の前後で比べる方法(回帰不連続)、1〜4年1年後の体重の差は0.29kg。3〜4年で差は無くなった。血圧や HbA1c に差は見られなかった。基準のすぐ前後の人を比べた結果で、健診や保健指導を受けなくてよいという意味ではない

出典: 各論文の要旨(PubMed・2026年11月6日に確認)。

健康寿命に近い値を直接測った無作為化試験は少ない。PubMed で「健康寿命」にあたる3つの英語と無作為化試験を組み合わせて探すと11件で(2026年11月6日)、題名に含むのは上の Look AHEAD と、尿失禁の講座を比べた試験(909人・高齢女性。健康効用の増加に差なし)だった。睡眠時間を変えて死亡や要介護を測った無作為化試験は、探した範囲(2件)では見つからなかった。

上位のページがよく勧める健康診断についても、2019年のコクランレビュー(試験をまとめた解析。15試験251,891人)は、病気や危険因子で選ばない成人に一律に健診をしても、全死亡はほとんど変わらないとまとめている(リスク比1.00、0.97〜1.03)。高齢者向けの試験は含まれておらず、健診の個々の検査の多くは十分に調べられていないとレビューは書いている。持病の治療や個別のがん検診の効果を否定する結果ではなく、健診を受けなくてよいと言うものでもない。持病がある人や健診で受診を勧められた人は、自分の判断でやめず医師に相談してほしい。

日本で数字が大きい要因は何か。国の目標はどこにあるか

個人の話とは別に、国全体でどの要因が大きいかの推計がある。2007年のデータを使った東京大学などの比較リスク評価(観察の数字から計算した推計で、試験ではない)では、要因ごとの死亡数は次のとおりだった。喫煙12.9万人、高血圧10.4万人、運動不足5.2万人、高血糖3.4万人、食塩の多い食事3.4万人、飲酒3.1万人。心血管の複数の要因を理論上の望ましい水準まで下げると、40歳の平均余命は男女とも1.4年長いと推計された。

国は健康日本21(第三次)で「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」を目標にし、令和10年値で中間評価、令和13年値で最終評価をする予定である。別に、健康寿命延伸プランは2040年までに2016年比で3年以上の延伸(男性75.14年以上、女性77.79年以上)を掲げている。3年を24年で割ると年0.125年で、2016年から2022年の6年なら0.75年になる。実際は男性0.43年、女性0.66年だった(この計算は当記事による。2022年は新型コロナの影響で低く出た可能性がある)。

習慣の今の数字と目標は次のとおりである。今の値と8,100歩は、2025年12月の委員会に出された案である。

分野指標今の値(案)目標前の計画の最終評価
食事野菜の量(1日平均)258.7g350gC 変わらない
食事果物の量(1日平均)78.1g200gC 変わらない
食事食塩の量(1日平均)9.6g7gC 変わらない
体格適正体重の人の割合62.2%66%C 変わらない
運動1日の歩数の平均7,231歩8,100歩C 変わらない
運動運動習慣のある人の割合31.3%40%C 変わらない
睡眠睡眠で休養がとれている人の割合78.5%80%D 悪化
飲酒生活習慣病の危険を高める量を飲む人(男性1日40g以上、女性20g以上)11.4%10%D 悪化
喫煙20歳以上の喫煙率14.8%12%B* 改善傾向だが達成が危ぶまれる
社会地域の人々とのつながりが強いと思う人の割合31.6%45%C 変わらない(前の計画の指標は助け合いの割合)

出典: 厚生労働省「健康日本21(第三次)の目標一覧(案)」(第5回委員会・2025年12月23日)、「健康日本21(第二次)最終評価報告書 概要」(2022年)を2026年11月6日に確認。今の値は令和6年度(つながりは令和5年度)。歩数の元の目標は7,100歩で、今の値がすでに超えたため見直し案が出ている。確定の告示は確かめられなかった。

前の計画の最終評価では、健康寿命の延伸は「A 目標値に達した」だった。一方で歩数・運動習慣・食事は「変わらない」、睡眠と多量の飲酒は「悪化」だった。健康寿命が長くなった理由を、これらの習慣だけで説明するのは難しい。e-ヘルスネットも、健康寿命を決める要因の分析はまだ十分とは言えないと書いている。

断食や長寿地域の話はどう読むか

健康寿命を延ばす方法として、断食や長寿地域の話もよく出てくる。16時間断食は、人の試験で測られたのは主に体重や血糖で、健康寿命そのものを測った物ではない。試験の中身は16時間断食の研究にまとめた。長寿地域は、地域の住民の習慣と長生きを結びつける話で、ここまでと同じく観察の話である。年齢の記録を疑う批判もあり、ブルーゾーンの記事で別に扱う。

まだ分かっていないこと

厚生労働省のサイトの解説は、「何をすれば何年健康寿命が延伸するのか」という問いには現時点で明確に答えられないと書いている。当記事が読んだ範囲でも、日本の主指標と同じ定義の健康寿命を、習慣を変えた群と変えない群で比べた無作為化試験は見つからなかった。

2022年の値がどこまで新型コロナの一時的な影響かは、次の値を見ないと分からない。研究班も、もし一時的なら2022年を基準にした国の評価は影響を受けうると書いている。令和7年値の公表時期も、確かめられなかった。

国内の習慣の調査は、多くが中高年の一時点のアンケートを出発点にしている。今の若い世代が同じ習慣を何十年続けたときの結果は分からない。喫煙の調査で吸い始めの年齢と本数によって数字が大きく変わったように、世代が変わると数字も変わりうる。また、海外の無作為化試験の結果が日本の食事や体格の人に同じように当てはまるかも確かめられていない。

注意

持病がある人、薬を飲んでいる人、妊娠中の人は、運動や食事を大きく変える前に医師に相談してほしい。飲酒の表は、飲まない人に飲酒を勧めるものではない。この記事は調査の紹介であり、診断や治療の代わりにはならない。健康寿命は集団の平均で、個人の余命や健康状態を示す数字ではない。

出典

よくある質問

健康寿命とは何ですか?

健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。厚生労働省は、国民生活基礎調査で「健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」に「ない」と答えた人を健康として、死亡率と組み合わせて計算します。平均寿命との差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」と呼ばれます。

日本の健康寿命の最新の値はいくつですか?

最新は2024年12月に公表された令和4年(2022年)値で、男性72.57年、女性75.45年です。同じ年の平均寿命は男性81.05年、女性87.09年で、差は男性8.49年、女性11.63年です。2019年との差は統計的に有意ではありません。令和7年値の公表は2026年11月6日の時点で見つかりませんでした。

健康寿命が72歳なら、72歳で動けなくなるのですか?

そういう意味ではありません。健康寿命は、ある年の死亡率と不健康の割合が続くと仮定したときの0歳の人の平均で、集団の指標です。個人の余命や健康状態を示す数字ではありません。65歳まで生きた人の平均余命は平均寿命の数字より先まで伸びます(令和7年は65歳の男性で19.68年、女性で24.52年)。

健康寿命を延ばすには何をすればよいですか?

「これをすれば何年」とは言えません。国内の大規模調査では、たばこを吸わない、歩く、野菜と果物を多くとる、人との集まりに参加する人で要介護が少ないという関連が報告されていますが、多くは観察で因果は示しません。無作為化試験では、座りがちな70〜89歳の運動で歩けなくなる人が減った(30.1%と35.5%)などの結果があります。持病がある人は変える前に医師に相談してください。

都道府県の健康寿命の順位は信頼できますか?

順位だけで判断しないほうがよい数字です。2022年の男性1位の静岡県は73.75年で、誤差の幅は73.22〜74.27年あります。2019年の男性1位の大分県は2022年には25番目でした。厚生労働省の資料も、数値を比べる時は信頼区間も考える必要があると書いています。

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