NMNの副作用と安全性|人の試験7本と公的資料から
NMNを飲んだ人の試験7本では重い有害事象は報告されていませんが、試験は最長12週間・NMNを飲んだ人は1本60人以下で、妊娠中の人や薬を飲む人は対象外です。報告された不調、肝臓の数値、発がん性、国内外の公的機関の扱いを一次資料で確かめました。
公開 / 更新
結論
NMN を口から飲んだ人の試験7本(主に健康な成人で、1本は前糖尿病の閉経後の女性。1本10〜80人・1日100〜1250mg・1回だけ〜12週間)では、重い有害事象は報告されていません。報告された不調は、お腹の不調・軟便・にきび・肝臓の数値の上昇・眼圧の上昇などで、多くはプラセボ(有効成分を含まない見た目が同じ粒)を飲んだ群や期間でも同じ種類のものが出ていました。ただし試験はどれも小さく短く、妊娠中・授乳中の人、薬を飲んでいる人、持病の治療中の人は対象から外されています。がんとの関係は細胞と動物の段階で結果が分かれており、人では確かめられていません。
この記事の基準日: 2026年11月6日。NMN を飲んだ人の試験7本の論文と大学の発表、厚生労働省の通知、欧州食品安全機関(EFSA)の評価、米国食品医薬品局(FDA)の公開記録、細胞と動物の研究3本を開いて読み、書かれている範囲だけで書いています。医師の監修は受けていません。
NMN の「副作用」は、人の試験でどう調べられてきたのか
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)は、NAD+(細胞の中でエネルギーを作る反応などに使われる補酵素)の材料になる物質です。東京大学医学部附属病院の発表は、NMN をビタミン B3 の仲間とし、ブロッコリー・枝豆・アボカドなどの食品にも含まれると説明しています。サプリとして売られている NMN について、2022年の Fukamizu らの論文は、市販品の含有量は1カプセル50〜150mg が一般的で、一度に何カプセルも飲む人もいると書いています。
副作用を考えるときに大事なのが、「有害事象」と「副作用」の違いです。有害事象は、試験の間に起きた体の不調や検査値の異常のすべてを指し、飲んだ物が原因かどうかは問いません。かぜをひいた、ワクチンを打って熱が出た、といった出来事も数えられます。そのうち、飲んだ物が原因と考えられるものが副作用です。原因を見分けるために、よくできた試験はプラセボを飲む群を作り、両方の群で不調の数を比べます。プラセボの群でも同じくらい起きている不調は、NMN のせいとは言いにくくなります。
この記事では、NMN を口から飲んだ人の試験のうち、論文の本文か大学の発表を開いて中身を確かめられた7本を取り上げます。点滴など口から飲む以外の方法は医療の話になるため、この記事では扱いません。
人の試験で報告された有害事象の一覧
7本の試験の対象・量・期間・報告された有害事象を並べます。右端の列は、試験の費用や使った NMN をどこが出したか、特許の関わりがあるかです。結果の重みを考える材料になります。
| 試験(発表の年) | 対象 | NMN を飲んだ人数 | 1日の量 | 期間 | 報告された有害事象 | 資金・NMN の提供・特許 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 慶應義塾大学など(2020年) | 健康な男性・40〜60歳 | 10 | 100mg・250mg・500mg を1回ずつ | 1回(5時間観察) | 目立った症状なし。心拍・血圧・体温は変わらず | NMN はオリエンタル酵母工業が提供。著者に同社の研究費と NMN の特許の関係者 |
| 慶應義塾大学(2024年) | 健康な男性・40〜60歳 | 9 | 250mg | 8週間 | 重いものなし。肝臓の数値の上昇で1人、眼圧の上昇で1人が中止 | 大学の予算。カプセルはオリエンタル酵母工業が製造。著者に同社の研究費と特許の関係者 |
| 富山大学など(2022年) | 健康な成人・20〜65歳 | 15 | 250mg | 12週間 | 何らかの有害事象: NMN 群53.3%・プラセボ群46.7%。重いものなし。試験の食品によると判断されたのは各群1人(NMN 群は30分で治まった腹痛) | 三菱商事ライフサイエンスが資金と NMN を提供 |
| Fukamizu ら(2022年) | 健康な成人・20〜65歳 | 16 | 1250mg | 4週間 | NMN 群4件(かぜ・軽い血圧上昇・軟便・にきび)、プラセボ群1件(軟便)。すべて「関係なし」と判断 | 三菱商事ライフサイエンスが資金と NMN を提供 |
| 東京大学(2022年) | 65歳以上の健康な男性 | 21 | 250mg | 最長12週間 | 血液検査を含め明らかな有害事象なし | 三菱商事ライフサイエンスの受託研究 |
| ワシントン大学(2021年) | 閉経後で前糖尿病の女性 | 13 | 250mg | 10週間 | 有害事象の報告なし。標準の血液検査にも両群で異常なし(論文) | 米国立衛生研究所(NIH)など。著者に NMN の特許の関係者 |
| Yi ら(2023年) | 健康な成人・40〜65歳(インド) | 60 | 300mg・600mg・900mg | 60日 | 全体で7人に9件(プラセボ群6件・300mg 群3件・600mg と900mg の群0件)。すべて軽度か中等度で NMN と関係なし | NMN を作る会社2社が共同で費用を負担 |
出典: 下の「出典」1〜8 の論文と大学の発表(2026年11月6日に確認)。慶應義塾大学(2024年)の人数は8週間を飲み終えた人で、NMN の期間に入ったのは論文の表では12人。東京大学の試験の人数は6週間の時点の NMN 群で、12週間まで飲んだのはそのうち10人。Yi らの人数は3つの量の群の合計(各20人)。
試験ごとに、何が起きて何が起きなかったのか
1回だけ飲んだ試験(慶應義塾大学など・2020年)
40〜60歳の健康な男性10人が、100mg・250mg・500mg を日を空けて1回ずつ飲み、5時間後まで調べました。目立った症状はなく、心拍・血圧・血液中の酸素・体温は変わりませんでした。肝臓の数値(AST・ALT)に悪い変化はなく、目の検査と睡眠の質の質問票にも変化はありませんでした。血液のビリルビンは51.3%上がり、血糖は11.7%、クレアチニンは5.1%、塩素は2.3%下がりましたが、どれも基準の範囲内で、飲んだ量によらず起きていました。著者は5時間の絶食の影響の可能性を挙げ、プラセボを使っていないため NMN のせいかどうかは区別できない、とも書いています。
8週間飲んだ試験(慶應義塾大学・2024年)
40〜60歳の健康な男性が、まずプラセボを飲み、2週間空けてから NMN を1日250mg、8週間飲みました。14人が参加し、最後まで終えたのは9人です。重い有害事象はありませんでした。何らかの不調が出た割合は、NMN を飲む前の期間(プラセボと休みの期間)が15.3%、NMN の期間が16.7%でした。途中でやめた人は、プラセボの期間と休みの期間に1人ずつ、NMN の期間に2人です。NMN の期間の2人は、肝臓の数値(AST・ALT・γ-GTP)の上昇と、右目の眼圧の上昇が理由でした。肝臓の数値の上昇はどの期間にも1回ずつ起きており、著者は食事やお酒の影響か偶然の可能性を挙げています。眼圧は NMN の4週目に29.0mmHg まで上がり、著者は NMN が原因の可能性は低いとしましたが、やめてから4週間後も32.7mmHg でした。腎臓の指標、心電図、胸のレントゲンに異常はありませんでした。血液の白血球(単核球)の中の NAD+ は、8週間で 25.48 から 41.43(pmol/mg)に増えています。
12週間飲んだ試験(富山大学など・2022年)
20〜65歳の健康な日本人30人を、NMN 1日250mg の群とプラセボの群に15人ずつ分け、12週間飲んでもらいました。重い有害事象はどちらの群にもありませんでした。何らかの有害事象が出た人は NMN 群8人(53.3%)、プラセボ群7人(46.7%)です。お腹の症状は3人(20.0%)と2人(13.3%)でした。試験の食品によると判断された有害事象は各群1人で、NMN 群は飲んですぐに始まり30分で自然に治まった腹痛、プラセボ群は空腹感やお腹の張りなどで、この人は途中でやめています。熱・関節の痛み・だるさは NMN 群6人(40.0%)、プラセボ群2人(13.3%)で、どれも新型コロナワクチンの接種から1日以内に始まっており、論文は接種の副反応が疑われるとしています。参加者の日誌では、試験の間に接種したのは NMN 群7人・プラセボ群6人で、症状が出たのはそのうち6人と2人です。論文は「NMN 群で多い傾向があったかもしれない」としながら、群の差は統計的に意味のある大きさではない(p=0.10)としています。また論文の考察は、NMN が NAD+ を増やして感染や接種の時の自然免疫(生まれつき備わった体の守り)を強めるのかもしれないとも書いていますが、この試験で確かめたことではありません。1群15人の試験なので、NMN が接種の後の熱などを増やすのか、関係がないのかは、この試験からは決められません。肝臓・腎臓・電解質・血球の値は基準の範囲内に収まりました。全血の NAD+ は4・8・12週で増え、やめた後の16週には元に戻りました。
1日1250mg を4週間飲んだ試験(Fukamizu ら・2022年)
20〜65歳の健康な成人31人(平均35歳前後)を、NMN 1日1250mg の群(16人)とプラセボの群(15人)に分け、4週間飲んでもらいました。市販品の1カプセル50〜150mg と比べると、かなり多い量です。有害事象は NMN 群4件(かぜ・軽い血圧の上昇(治まった)・軟便・にきび)、プラセボ群1件(軟便)で、試験の医師は5件すべてを試験の食品とは関係ないと判断しています。著者は、この量と期間では問題になる変化は見られなかったと結論づける一方、試験は比較的小さく、長い期間・多い人数での確認が要ると書いています。
65歳以上の男性の試験(東京大学・2022年)
65歳以上の健康な男性42人を NMN 1日250mg の群とプラセボの群に分け、最長12週間飲んでもらいました。血液検査を含めて、明らかな有害事象は認められませんでした。12週の時点で、NMN 群の血中 NAD+ はプラセボ群の2倍ほどでした。主な評価項目だった骨格筋の量には差がなく、歩く速さと左手の握力に改善が見られています。
閉経後の女性の試験(ワシントン大学・2021年)
閉経後で前糖尿病(血糖が高めだが糖尿病ではない状態)の女性25人を、NMN 1日250mg(13人)とプラセボ(12人)に分け、10週間飲んでもらいました。筋肉でインスリンが糖を取り込む働きは NMN 群で上がりましたが、血糖・血圧・血液の脂質・肝臓の脂肪・炎症の指標は変わりませんでした。大学の発表には有害事象の数は書かれておらず、著者は臨床で勧めるのはまだ早いとしています。
量を3段階で比べた試験(Yi ら・2023年)
インドの2施設で、40〜65歳の健康な成人80人を、プラセボ・300mg・600mg・900mg の4群(各20人)に分け、60日間飲んでもらいました。全員が最後まで終えています。有害事象は7人に9件で、プラセボ群6件、300mg 群3件(胃酸過多・皮膚の不調・口内炎)、600mg と900mg の群は0件でした。どれも軽度か中等度で、著者は NMN との関係はないとしています。肝臓(AST・ALT)や腎臓(クレアチニン・尿素)の値はプラセボ群と差がありませんでした。一方で、60日目の LDL コレステロールは900mg 群がプラセボ群より高く(146.0 対 119mg/dL、p=0.02。900mg 群は開始時も 132.8 対 114mg/dL と高めで、開始時の差は p=0.10)、論文の表では600mg と900mg の群でインスリンの効きにくさの目安(HOMA-IR)が開始時より上がっています(論文の要旨では、プラセボ群との差はないとしています)。血液の NAD+ は600mg と900mg の群で高く、この2群の間に差はありませんでした。
NMN は肝臓や腎臓に悪い影響があるのか
「NMN は肝臓にどんな影響があるか」はよく調べられている質問です。今回の7本のうち、肝臓や腎臓の値を報告した試験の結果は次のとおりです。
- 1日1250mg・4週間の試験: AST は NMN 群で 20.8 から 22.3、ALT は 23.8 から 25.6(開始時から6週目、平均値)。プラセボ群の値も同じくらい動いており、著者はすべて基準の範囲内としています。腎臓の値(クレアチニン 0.78 から 0.74、尿素窒素 12.6 から 12.8)も同じです。
- 量を3段階で比べた試験: 60日目の ALT はプラセボ群 19.4、900mg 群 20.2 で差はなく、クレアチニン・尿素にも差はありませんでした。腎臓のろ過の目安(GFR)は900mg 群 89.0、プラセボ群 100 で、差は統計的に意味のある大きさではありません(p=0.08)。
- 12週間の試験(富山大学など): 肝臓の酵素・クレアチニンは基準の範囲内でした。
- 8週間の試験(慶應義塾大学): 肝臓の数値の上昇で1人がやめていますが、同じような上昇はプラセボや休みの期間にも1回ずつ起きていました。
- 閉経後の女性の試験: 肝臓の脂肪の量と、肝臓でのインスリンの効き方は変わりませんでした。
まとめると、健康な成人が最長12週間飲んだ範囲では、肝臓・腎臓の値に大きな悪化は報告されていません。ただし、1250mg の試験は肝臓や腎臓の病気の治療中の人を対象から外しているため、その人たちに同じことが言えるかは分かりません。
NMN に発がん性はあるのか
人で NMN ががんを増やす、あるいは減らすと確かめた試験はありません。今回の人の試験は長くても12週間で、がんの発生を調べる設計ではありません。2020年の慶應義塾大学の試験は、がんにかかったことのある人を対象から外しています。
心配のもとになっているのは、細胞と動物の研究です。結果は一方向にそろっていません。
- 2019年に Nature Cell Biology に出た研究は、細胞と動物の実験で、NAD+ を作る酵素(NAMPT)と NAD+ の代謝が、老化した細胞から出る炎症を起こす物質の群れ(SASP)を強めると報告しました。この SASP はがんを育てる方向に働くとされ、著者は、老化対策として NAD+ を食事から増やす方法は慎重に使うべきだと書いています。
- 2025年の研究は、紫外線で皮膚がんを起こすマウスに NMN を飲ませました。皮膚と肝臓の NAD+ は増えましたが、がんが出始める時期・数・大きさ・育ち方は変わりませんでした。がんを減らしもせず、増やしもしなかったという結果です。
- 2026年の研究は、中皮腫(胸膜などにできるがん)のマウスで、多い量の NMN ががんの勢いを抑えたと報告しています。免疫の細胞(マクロファージ)の性質が変わったためと説明されています。
このように、動物・細胞の結果は「育てる方向の懸念」「変わらない」「抑える方向」に分かれています。動物や細胞の結果は、人で同じとは限りません。がんの治療中の人や、がんにかかったことのある人は、自分の判断で飲み始めず、主治医に相談してください。
「NMN サプリは危険」と言われるのはなぜか
「危険」と言い切れる人のデータも、「心配ない」と言い切れるデータも、今はまだそろっていません。危険と言われやすい理由は、次の4つに分けられます。
- 試験が小さく短い。7本で NMN を飲んだ人は1本あたり9〜60人、期間は1回だけ〜12週間です。まれな副作用や、何年も飲んだときの影響は、この規模では見つけられません。
- 調べた量と、実際に飲まれる量がずれることがある。1日1250mg は16人・4週間でしか調べられていません。一方で、市販品を一度に何カプセルも飲む人がいることが論文に書かれています。
- 試験の多くに、NMN を作る・売る会社や特許の関係者が関わっている。今回の7本すべてで、会社の資金・NMN の提供・特許の関わりのいずれかが論文や発表に書かれています。関わりがあるから結果が誤りとは言えませんが、関わりのない研究者が同じ結果を出すまでは、確かさは一段下がります。
- 細胞や動物で、がんを育てる方向の結果が報告されたことがある(上の節)。
また、米国で NMN の扱いをめぐる手続きが続いたことを「危険だから禁止された」と受け取らないよう注意が要ります。請願で争われたのは「サプリとして売ってよい成分か」という法律上の区分で、人の試験で新しい害が見つかったという話ではありません(次の節)。
国や公的機関は NMN をどう扱っているのか
| 国・機関 | したこと | 時期 |
|---|---|---|
| 日本・厚生労働省 | β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」に載せた | 2020年3月31日の通知 |
| 日本・医薬基盤・健康・栄養研究所 | 「健康食品」の安全性・有効性情報の素材情報データベースに NMN の項目を置いている | ページの更新は2026年7月28日 |
| 欧州・欧州食品安全機関(EFSA) | 化学合成した β-NMN を、成人(妊娠中・授乳中を除く)が1日300mg までとる条件で安全とする意見を出した | 2026年5月11日 |
| 米国・食品医薬品局(FDA) | 業界団体の請願(NMN をサプリの定義から外さないことなどを求めたもの)に「一部承認・一部却下」の返事を出した | 2025年9月29日 |
出典: 下の「出典」12〜19(2026年11月6日に確認)。
日本: 食品として売れるが、国が効果や安全性を認めたわけではない
厚生労働省は2020年3月31日の通知(薬生監麻発0331第9号)で、NMN を「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない」成分の一覧に加えました。薬のような効き目をうたわなければ、食品として売ってよいという区分です。この一覧は医薬品にあたるかどうかの線引きで、効果や安全性を国が評価した結果ではありません。
国の研究所(医薬基盤・健康・栄養研究所)が論文をまとめて公開している「健康食品」の安全性・有効性情報にも、NMN の項目があります(ページの更新は2026年7月28日)。項目の本文は利用の同意画面の先にあり、サイトがデータの無断の転用・引用を禁じているため、この記事では中身を引用していません。飲む前に一度、本人が目を通しておくと安心です。消費者庁の「機能性表示食品の届出情報検索」でも商品ごとの届出を探せますが、この記事を書いた時点では画面が読み込めず、NMN の届出の中身は確かめられていません。
欧州: 成人・1日300mg までの条件で安全とする意見
EFSA は2026年5月11日、化学合成した β-NMN を新しい食品として評価した意見を公表しました。成人(妊娠中・授乳中を除く)が、ナイアシン(ビタミン B3)の供給源としてサプリで1日300mg までとる条件です。遺伝子を傷つける心配(遺伝毒性)は認められませんでした。ラットに90日与えた試験では生殖器官への影響が見られ、影響が出なかった量(体重1kg あたり1日400mg)と人がとる量の開きは93倍で、EFSA はこれを十分としています。1日300mg の NMN はニコチンアミドにして約109.7mg にあたり、成人のナイアシンの摂取の目安の約5倍ですが、ニコチンアミドの上限量(1日900mg)より下です。この意見は提案された条件についての評価で、それより多い量や、妊娠中・授乳中の人は対象に入っていません。
米国: サプリとして売れるかをめぐる手続き
米国の業界団体は2023年3月、FDA に対し「NMN はサプリの定義から外れない」と判断するか、販売を取り締まらないと約束するよう求める請願を出しました。FDA は2025年9月29日、この請願に「一部承認・一部却下」の返事を出しています。その後、2025年12月と2026年2月には、NMN を届け出た会社あての返事の手紙が「復活(Reinstatement)」と題して公開されました。2022年11月に FDA が出した NMN の届出への追加の返事の手紙は、今の公開記録では取り下げの印が付いています。FDA の新しい食品成分の届出の一覧にも、2025年11月に出された NMN の届出と、2026年1月28日の返事の日付が載っています。手紙の本文はこの記事の作成時に開けなかったため、FDA が示した理由の細部や、届出への返事の中身(FDA が異議を述べたかどうか)は書いていません。請願で争われたのは、NMN がサプリの定義から外れるかどうかという法律上の区分です。
試験で確かめられている量と期間はどこまでか
| 1日の量 | 期間 | NMN を飲んだ人数 | 試験 |
|---|---|---|---|
| 100mg・250mg・500mg(1回ずつ) | 1回 | 10 | 慶應義塾大学など(2020年) |
| 250mg | 8週間 | 9 | 慶應義塾大学(2024年) |
| 250mg | 10週間 | 13 | ワシントン大学(2021年) |
| 250mg | 12週間 | 15 | 富山大学など(2022年) |
| 250mg | 最長12週間 | 21 | 東京大学(2022年) |
| 300mg・600mg・900mg | 60日 | 60 | Yi ら(2023年) |
| 1250mg | 4週間 | 16 | Fukamizu ら(2022年) |
出典: 下の「出典」1〜8(2026年11月6日に確認)。人数は NMN を飲んだ人だけで、プラセボの群は含まない。
最も多く調べられているのは1日250mg で、12週間を超えて飲み続けた人の試験は、今回確かめた中にはありません。量を3段階で比べた試験では、600mg と900mg で血液の NAD+ に差がなく、量を増やしても NAD+ がそのぶん増えるとは限らないことが示されています。EFSA が評価したのは成人で1日300mg までの条件です。この記事は、ここに挙げた量を飲むことを勧めるものではありません。製品に書かれた量を守り、迷ったら医師や薬剤師に相談してください。
持病がある人・薬を飲んでいる人・妊娠中の人はどう考えればよいか
人の試験は、健康な成人だけを集めて行われています。たとえば1日1250mg の試験は、妊娠中・授乳中・妊娠の予定がある人、薬(漢方などを含む)を飲んでいる人、薬や試験の食品にアレルギーがある人、心臓のリズム・肝臓・腎臓・脳の血管・関節・血糖・コレステロール・血圧などの慢性の病気で治療中の人を、最初から対象から外しています。2020年の慶應義塾大学の試験も、病気にかかったことのある人やアレルギーのある人を外しています。つまり、これらの人が飲んだときの安全性は、今の試験からは分かりません。
EFSA の意見も、妊娠中・授乳中の人を対象から外しています。NMN と薬の飲み合わせを調べた結果は、今回確かめた資料の中にはありませんでした。血糖にかかわる結果(筋肉のインスリンの効き方の変化、HOMA-IR の上昇)も報告されているため、糖尿病の薬を使っている人は特に、飲む前に主治医に伝えてください。
注意
持病がある人、薬を飲んでいる人、妊娠中・授乳中の人、がんの治療中や治療したことのある人は、NMN を飲む前に医師か薬剤師に相談してください。飲んでいる間に体調の変化があれば、飲むのをやめて受診してください。この記事は一般的な情報で、診断や治療の代わりにはなりません。
更年期の女性で調べた試験はあるのか
更年期の症状(ほてり・気分の波など)を主な評価にした NMN の試験は、今回確かめた資料の中にはありませんでした。閉経後の女性を対象にした試験としては、上で紹介したワシントン大学の試験(2021年)があり、調べたのは筋肉のインスリンの効き方です。ほかに、12週間の試験(富山大学など)は参加者の多くが女性(各群15人のうち11人)で、量を3段階で比べた試験は参加者の59%が女性でした。ただし、今回の7本では、更年期の症状への影響は評価の対象になっていません。
まだ分かっていないこと
- 12週間より長く飲み続けたときの安全性。
- 数百人以上で調べたときに見つかる、まれな副作用。
- 持病のある人、薬を飲んでいる人、妊娠中・授乳中の人、子どもでの安全性(今回の試験ではいずれも対象外)。
- 薬との飲み合わせ。
- 人でのがんとの関係(細胞と動物の結果は分かれている)。
- 量を3段階で比べた試験で見られた LDL コレステロールや HOMA-IR の変化が、別の試験でも出るか。
- 8週間の試験で1人に起きた眼圧の上昇が、NMN と関係するか。
- 会社や特許の関わりのない研究者が、同じ安全性の結果を出せるか。
- 市販の NMN サプリの中身が表示どおりか(この記事では調べていません)。
- 血液の NAD+ が増えることが、病気や体の衰えの減り方につながるか。
出典
- 1. 抗老化候補物質NMN長期内服の健康成人における安全性が明らかに(慶應義塾大学・2024年)
- 2. Safety and efficacy of long-term nicotinamide mononucleotide supplementation on metabolism, sleep, and nicotinamide adenine dinucleotide biosynthesis in healthy, middle-aged Japanese men(Endocrine Journal・2024年)
- 3. Effect of oral administration of nicotinamide mononucleotide on clinical parameters and nicotinamide metabolite levels in healthy Japanese men(Endocrine Journal・2020年)
- 4. Oral Administration of Nicotinamide Mononucleotide Is Safe and Efficiently Increases Blood Nicotinamide Adenine Dinucleotide Levels in Healthy Subjects(Frontiers in Nutrition・2022年)
- 5. Safety evaluation of β-nicotinamide mononucleotide oral administration in healthy adult men and women(Scientific Reports・2022年)
- 6. ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)で高齢男性の運動機能が改善(東京大学医学部附属病院・2022年)
- 7. Anti-aging compound that improves metabolic health in mice improves muscle glucose metabolism in people(ワシントン大学・2021年)
- 7(論文). Nicotinamide mononucleotide increases muscle insulin sensitivity in prediabetic women(Science・2021年)
- 8. The efficacy and safety of β-nicotinamide mononucleotide (NMN) supplementation in healthy middle-aged adults: a randomized, multicenter, double-blind, placebo-controlled, parallel-group, dose-dependent clinical trial(GeroScience・2023年)
- 9. NAD+ metabolism governs the proinflammatory senescence-associated secretome(Nature Cell Biology・2019年)
- 10. Oral nicotinamide mononucleotide (NMN) increases tissue NAD+ content in mice but neither NMN nor Polypodium leucotomos protect against UVR-induced skin cancer(Photochemical & Photobiological Sciences・2025年)
- 11. Nicotinamide mononucleotide enhances anti-tumor effect by resetting macrophages toward the inflammatory M1-like phenotype(Molecular Therapy Oncology・2026年)
- 12. 食薬区分における成分本質(原材料)の取扱いの例示(厚生労働省 薬生監麻発0331第9号・2020年、秋田県が掲載した写し)
- 13. ニコチンアミドモノヌクレオチド (NMN)(医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報・2026年更新)
- 14. Safety of beta-nicotinamide mononucleotide (β-NMN) pursuant the regulation (EU) 2015/2283 and the bioavailability of nicotinamide from this source in the context of Directive 2002/46/EC(EFSA Journal・2026年、DOI 10.2903/j.efsa.2026.10007)
- 15. Docket FDA-2023-P-0872: Natural Products Association と Alliance for Natural Health USA の請願(regulations.gov・米国食品医薬品局の公開記録・2023年)
- 16. 文書 FDA-2023-P-0872-2754: 請願への FDA の返事(2025年9月29日・Partial Petition Approval and Denial)。請願の本体は同じ Docket の FDA-2023-P-0872-0001(2023年3月9日掲載)(regulations.gov・米国食品医薬品局の公開記録)
- 17. 文書 FDA-2022-S-0023-0069: NDI 1259 への Reinstatement Response Letter(2025年12月9日)。同じ日の NDI 1234 への手紙は FDA-2022-S-0023-0066、2022年11月8日の NDI 1259 への追加の返事 FDA-2022-S-0023-0052 は取り下げの印(regulations.gov・米国食品医薬品局の公開記録)
- 18. 文書 FDA-2023-S-0023-0100: NDI 1267 への Reinstatement Response Letter(2026年2月6日)。同じ日の NDI 1265 への手紙は FDA-2023-S-0023-0099(regulations.gov・米国食品医薬品局の公開記録)
- 19. Submitted 75-Day Premarket Notifications for New Dietary Ingredients(米国食品医薬品局・2026年)
よくある質問
NMNに副作用はありますか?
主に健康な成人(1本は前糖尿病の閉経後の女性)が1日100〜1250mgを1回〜12週間飲んだ人の試験7本では、重い有害事象は報告されていません。お腹の不調、軟便、にきび、肝臓の数値の上昇、眼圧の上昇などが報告されていますが、多くはプラセボ(有効成分を含まない粒)を飲んだ群や期間でも同じ種類の不調が出ています。試験は小さく短いため、まれな副作用や長く飲んだときの影響はまだ分かっていません。
NMNに発がん性はありますか?
人でNMNががんを増やすか減らすかを確かめた試験はありません。細胞と動物の研究では、NAD+の代謝ががんを育てる方向の炎症を強めるという報告がある一方、マウスで皮膚がんに影響がなかった報告や、がんの勢いを抑えた報告もあり、結果は分かれています。動物の結果は人で同じとは限りません。がんの治療中や治療したことのある人は主治医に相談してください。
NMNは肝臓に悪い影響がありますか?
健康な成人の試験では、AST・ALTなど肝臓の数値は基準の範囲内に収まったという報告が中心です。8週間の試験で肝臓の数値の上昇により1人が中止しましたが、同じような上昇はプラセボの期間にも起きていました。肝臓の病気で治療中の人は試験の対象から外されているため、その人たちでの影響は分かっていません。
薬を飲んでいる人や妊娠中の人も飲んでよいですか?
人の試験の多くは、妊娠中・授乳中の人、薬を飲んでいる人、持病の治療中の人を対象から外しているため、その人たちでの安全性は確かめられていません。欧州食品安全機関(EFSA)の評価も妊娠中・授乳中の人を除いています。薬との飲み合わせを調べた結果も見当たりませんでした。飲む前に医師か薬剤師に相談してください。
どのくらいの量まで試験で調べられていますか?
最も多く調べられているのは1日250mgで、期間は最長12週間です。ほかに1日300〜900mgを60日、1日1250mgを4週間飲んだ試験があります。欧州食品安全機関(EFSA)は成人で1日300mgまでという条件を評価しています。これは飲む量を勧めるものではなく、製品に書かれた量を守ることが基本です。